研究課題/領域番号 |
21K09822
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
田谷 雄二 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30197587)
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研究分担者 |
豊田 健介 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (40585874)
添野 雄一 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (70350139)
佐藤 かおり 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (90287772)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 歯学 / 病理学 / マウス胎仔 / 舌形態形成 / 外側舌隆起 / 上皮間葉相互作用 / 舌筋発生 / 分子ネットワーク / 筋分化 / 神経堤細胞 / 分子制御 |
研究開始時の研究の概要 |
舌初期発生において最初に現れる外側舌隆起から舌体までの形態形成については不明な点が多く残されている。今までの知見から、舌原基を被覆する鰓弓上皮、その直下の神経堤由来の間葉細胞、ならびに後頭体節から移住してきた筋系譜の細胞集団はそれぞれ舌の形態形成に重要な役割を持っていることが推察されている。本研究では、マウス舌の形態形成に寄与する鰓弓上皮と筋系譜・神経堤由来の間葉間の相互作用を担う分子ネットワークとその制御機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
舌発生において最初に現れる外側舌隆起から舌形状までの形態形成については不明な点が多く残されている。今までの知見から、舌の形態形成では、舌原基を被覆する鰓弓上皮、その直下の神経堤由来の間葉細胞、ならびに舌筋系譜の細胞集団はそれぞれ舌の形態形成に重要な役割を持っていることが推察される。ただし、舌の形態形成に寄与するこれら3者が相互に作用する実態は明らかにされていない。本研究では、マウス舌発生での上皮―間葉(筋系譜と神経堤由来)間相互作用を担う分子ネットワークとその制御機構を明らかにすることによって、舌形態形成の機序の解明を目指す。 本年度では、昨年度に確認した背側正中部での二峰性を成す外側舌隆起の形成に関して、さらに詳細な観察を行った。その結果、後頭体節から移住してきた舌筋系譜の筋前駆細胞は下顎突起背側正中部に集団を成して集積し、透過電顕での観察から筋前駆細胞は正中溝上皮と基底膜を介して接しているのが観察された。この時期では舌筋系譜の細胞集団の中央部では筋芽細胞に分化し始めており、辺縁部の筋前駆細胞と分布を異にすることが分かった。外側舌隆起は高度な増殖活性を有する非筋系譜の細胞によって膨隆していることが注目された。その後、外側舌隆起から舌の形状へ移行する段階では、筋系譜の細胞集団は正中溝上皮から切り離され、舌筋系譜の細胞集団が高度な増殖活性を有して競り上がり舌膨隆部内に侵入することによって舌の形状に変化していくことが分かった。 昨年度に実施したDNAマイクロアレイ解析結果を検証するためにリアルタイムPCRによる遺伝子発現の解析を行い、シグナルパスウエイや細胞接着関連因子の遺伝子発現について舌形態形成と関係している候補分子が列挙できた。これらの検証結果から、正中溝上皮・筋系譜細胞集団・非筋系譜である神経堤由来の間葉細胞が相互に影響し合っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(2022年度)では、光顕レベルで観察していた二峰性を成す外側舌隆起の間に位置する正中溝上皮と筋前駆細胞との接着が電顕レベルでも確認できたのは大きな成果である。また最も早い舌形態形成である外側舌隆起の形成が非筋系譜の神経堤細胞由来の間葉細胞の増殖活性によって引き起こされること、その後の舌形状への変化は筋系譜の細胞集団の競り上がりとその増殖活性に依存していることを明らかにできた。将来の各種舌筋の分化についても、この時期に舌筋系譜の細胞自体も多角形から紡錘形へと形態変化するとともに、細胞の配置が規則性を示すようになり、将来の上縦舌筋や横舌筋などへと分化していくことになることもわかった。これらのことは舌の形態形成のメカニズムの一端を明らかにしたことになると確信できた。 遺伝子発現解析では、DNAマイクロアレイの結果をリアルタイムPCRで検証することができた。予想通り、Shh・Fgf・Bmp・Igf・Endothelin-1などのシグナル分子や特異な接着因子が発現していることを確かめることができた。注目された遺伝子については、マイクロダイセクションを活用して、発現する細胞の同定も試みた。また、適合する抗体が得られた分子については免疫組織化学によるタンパク局在の同定を行った。このなかで、目的としている舌の形態形成を担う上皮筋系譜間・上皮間葉間・筋/非筋系譜の細胞間相互作用に働く遺伝子候補が列挙できた。これらの解析結果からも、申請課題での仮説を実証できる可能性がますます高まったと確信できた。これらの知見を踏まえて、次年度の研究計画を遂行していくことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究計画として、昨年度から継続して、リアルタイムPCRによる発現変動の検索、免疫組織化学によるタンパク局在の同定を行い、DNAマイクロアレイ解析データを検証する。微小領域での遺伝子発現についてさらに詳細なデータが必要になった場合には、顕微切断による局所での遺伝子発現の解析を行う。この解析から得られた確実性の高い候補遺伝子を対象として、舌の形態形成を担う上皮筋系譜間・上皮間葉間・筋/非筋系譜の細胞間相互作用に働く分子ネットワークの構築を行う。外側舌隆起の形成機序を明らかにするために、筋系譜と非筋系譜の細胞の挙動(細胞増殖・細胞死・細胞移動等)について解析する。 さらに、舌の形態形成を担う上皮筋系譜間・上皮間葉間・筋/非筋系譜の細胞間相互作用に働く分子ネットワークの検証と機能解析を目的として、舌の形態形成を再現できる鰓弓器官培養系を用いて、候補分子の阻害や過剰発現等の実験を計画する。加えて、これまでに列挙された候補遺伝子の発現やその機能を制御するmicroRNAについて、マイクロアレイを使った網羅的な解析を行うとともに、候補となったmicroRNAについての検証を行う。得られた研究結果については学術学会で発表していくとともに、データがまとまり次第、論文化し投稿していく予定である。
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