研究課題/領域番号 |
21K09828
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉田 誠 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50235884)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 味覚 / ニューロン / 発生工学的トレーシング |
研究開始時の研究の概要 |
口腔内の異なる味細胞で感知される苦味と甘味の情報は脳内へ伝達され、苦味感覚は忌避性行動と不快情動を惹起し、甘味感覚は嗜好性行動と快的情動を惹起します。本研究では苦味情報と甘味情報を伝える脳内の神経回路を可視化しながら、各脳領域に局在する苦味ニューロン同士、及び甘味ニューロン同士が選択的に連結し、異なる苦味経路と甘味経路を構築する機構や、苦味情報・甘味情報を選択的に伝達し処理する機構、および各脳領域の苦味・甘味経路ニューロンが苦味・甘味刺激による対照的な行動・情動応答の惹起に果たす役割を明らかにします。
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研究実績の概要 |
苦味受容味細胞に選択的にトレーサー(WGA-DsRed)を発現するトランスジェニックマウスにおいて、味細胞から移行したWGA-DsRedを受け取る苦味経路ニューロン細胞体の橋結合腕傍核における局在をDsRedの蛍光検出により明らかにし、それらの局在と細胞機能との対応を探究した。橋結合腕傍核において、苦味経路ニューロンは後方medial側と前方external lateral側に局在する。後方medial側と前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンに関して、発現分子を免疫組織化学的に検出し、ニューロン種を同定し比較した。前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンの一部はCGRPを発現するニューロンであり、後方medial側の苦味経路ニューロンからはCGRP陽性細胞はほぼ観察されなかった。後方medial側と前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンの一部はVGLUT2を発現し、その割合は前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンのほうが大きかった。前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンの一部にはGAD65/67の発現もしくはsomatostatinの発現が観察された。神経伝達物質受容体もしくはneuromodulator受容体として、後方medial側と前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンの一部はMC4Rを発現し、その割合は前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンのほうが大きかった。後方medial側と前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンの一部において、mGluR7の発現が観察された。後方medial側と前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンでは、ニューロン種や活性制御機構に差異があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
橋結合腕傍核において、苦味受容味細胞から移行したWGA-DsRedを受け取る苦味経路ニューロンの発現分子を単一細胞レベルで解析し、橋結合腕傍核の苦味経路ニューロンの三次元的空間配置とニューロン種・活性制御機構との連関について、および後方medial側と前方external lateral側に局在する苦味経路ニューロンにおけるニューロン種・活性制御機構の差異について、知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
苦味もしくは甘味受容味細胞に選択的に経ニューロン性トレーサー(WGA-DsRed)を発現するトランスジェニックマウスにおいて、①味細胞から移行したWGA-DsRedを受け取る苦味・甘味経路ニューロンの細胞体が、橋・扁桃体・網様体等の脳領域内でどのような三次元的空間配置を示すかをDsRedの蛍光検出により明らかにする。②苦味・甘味経路ニューロンの活性制御機構をc-fos(Zif268)発現誘導検出・パッチクランプ法・カルシウムイメージングにより解析し、応答特性・シナプス伝達分子機構・neuromodulatorやホルモンによるシナプス伝達修飾機構を比較解析する。③苦味・甘味経路ニューロンの発現分子を免疫組織化学的に検出しニューロン種を同定する。④延髄孤束核・橋・扁桃体・網様体等の各脳領域で、苦味・甘味受容味細胞から移行したWGA-DsRedを受け取る苦味・甘味経路ニューロンを、DsRed蛍光を指標として単離・回収し、回収されたシナプス前後の2種のニューロン間で、そして苦味と甘味経路ニューロン間で、多次元的に、発現分子(回路構築やシナプス伝達に関与する分子)を比較解析する。そして橋・扁桃体・網様体等の各脳領域で、苦味・甘味経路ニューロンの①局在、②微細形態、③保有する細胞機能、④ニューロン種との連関を解明し、苦味経路ニューロンと甘味経路ニューロンの間で比較するとともに、苦味・甘味経路のそれぞれを選択的に構築する機構を解明する。さらに扁桃体でWGA-DsRedにより標識され可視化限定される苦味経路ニューロンについて、味覚嫌悪学習の獲得前後で味覚条件刺激への応答性に変化が生じるかを最初期遺伝子Zif268の発現を免疫組織化学的に検出することにより探究し、応答性に変化を生じさせる機構を明らかにする。
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