研究課題/領域番号 |
21K09830
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
松原 琢磨 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (00423137)
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研究分担者 |
角田 佳充 九州大学, 農学研究院, 教授 (00314360)
永野 健一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (60834348)
中富 千尋 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80878273)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 軟骨 / キネシン / 骨 / 骨形成 / 骨代謝 / 軟骨代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
Kidは細胞骨格関連因子のキネシンスーパーファミリーの1つで,そのモータードメインの一塩基変異は,脊椎骨端骨幹端異形成-関節弛緩2 (SEMDJL2)の原因である.SEMEJL2患者では関節の弛緩,顔面中央部の低形成,骨粗しょう症,骨成長の遅延などが認められるにもかかわらず,骨・軟骨領域でKidの研究は全く行われていない.我々はKidがマウス骨組織では増殖軟骨と骨芽細胞に発現が強いことを見出した。そこで、本研究ではin vivoモデルマウスの作成と解析、in vitroによる詳細な分子メカニズムの解析によりKidの骨・軟骨代謝における役割を検討し、SEMDJL2の病因解明をめざす。
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研究実績の概要 |
脊椎骨端骨幹端異形成-関節弛緩症(SEMDJL2) は低身長、脱臼を伴う関節弛緩症、四肢の不整合、脊椎変位をおこす骨格異形成を特徴とする常染色体優性遺伝疾患である。SEMDJL2患者の遺伝子解析によりキネシンモータータンパク質Kif22遺伝子の変異が報告されており、Kif22が責任遺伝子であると考えられている。Kif22は受精卵の卵割をはじめとして個体発生時から細胞分裂に必須である。しかしながら、SEMDJL2においては全身的にKif22の変異遺伝子が発現しているにもかかわらず、骨・軟骨に重篤な症状を呈している。そこでKif22の組織発現を検討したところ成長板軟骨に多く発現していることを見出した。次に、shRNAを用いて軟骨細胞前駆細胞株ATDC5におけるKif22の発現を抑制した結果、細胞増殖と軟骨分化が抑制された。以上のことから、Kif22は軟骨細胞の細胞増殖に必須であることが明らかとなった。さらに、今年度ではSEMDJL2において認められるKif22の1アミノ酸変異Kif22 P143LとKif22 R144QをATDC5に過剰発現し、Kif22とSEMDJL2の病態との関連を検討した。その結果、Kif22 P143LおよびR144Qの過剰発現はKif22ノックダウン同様ATDC5の細胞増殖を抑制した。この結果より、SEMDJL2はKif22の遺伝子変異により軟骨細胞の増殖が抑制されている可能性が示唆された。さらに、Kif22遺伝子変異マウスについても解析を行っている。Kif22 K144Q変異マウスを作成しようと試みたが、残念ながら仔が生まれなかった。しかし、Kif22の432番目の塩基に挿入が入り、フレームシフトが起きたマウスが生まれたので、現在そのマウスを解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SEMDJL2でのKif22の1アミノ酸変異Kif22 P143LとKif22 R144QをATDC5に過剰発現し、Kif22とSEMDJL2の病態との関連を検討した。その結果、Kif22 P143LおよびR144Qの過剰発現はKif22ノックダウン同様ATDC5の細胞増殖を抑制した。その一方で、アポトーシスなどには野生型過剰発現と変異体の過剰発現では有意差はなかった。さらに詳細にKif22による細胞増殖を検討した結果、Kif22変異体の過剰発現により細胞周期の分裂期における紡錘体形成に異常を認めた。また、ATDC5細胞にインシュリン・トランスフェリン・セレニウム(ITS)を添加すると細胞増殖が起こり、軟骨細胞分化する。Kif22の変異体を過剰発現したATDC5にITSを添加すると、軟骨細胞分化が遅延した。 また、Kif22遺伝子変異マウスについても解析を行っている。Kif22 K144Q変異マウスを作成しようと試みたが、残念ながら仔が生まれなかった。しかし、Kif22の432番目の塩基に挿入が入り、フレームシフトが起きたマウスが生まれたので、現在そのマウスを解析している。Kif22変異マウスはヘテロマウスを掛け合わせてもホモ遺伝子変異マウスは生まれてこない。体外受精してもホモマウスは16細胞期までいかないことから、Kif22は個体発生時の卵割に必須であると考えられる。ヘテロマウスは生まれてくるので、解析を行っている。生後3日齢マウスの骨格標本を作製した結果、野生型に比べ長管骨が短く、関節腔が広がっていた。この表現型はSEMDJL2に類似しているので、疾患モデルマウスとして現在、詳細な骨・軟骨の解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子変異マウスが得られてきたので、マウスの骨・軟骨の解析を行う。 具体的には、組織切片を作成し、軟骨や骨の形態計測や細胞外基質の解析を行う。また、軟骨細胞・骨芽細胞の数や形態に異常がないかを検討する。さらに、マイクロCT解析を行い、骨密度などに異常がないかを検討する。 次に、Kif22の分子メカニズムを検討するために、マウスより初代軟骨細胞あるいは初代骨芽細胞を採取し、細胞分裂や細胞分化について検討をおこなう。
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