研究課題/領域番号 |
21K09835
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮本 洋一 昭和大学, 教養部, 教授 (20295132)
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研究分担者 |
赤池 孝章 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20231798)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 超硫黄分子 / 破骨細胞 / 分化 / 骨吸収 / 骨代謝 / カルシウム / 歯周病 / 骨形成 / 骨芽細胞 / 活性硫黄 / オステオプロテゲリン / プロテアーゼ / 活性イオウ分子種 / ジンジパイン |
研究開始時の研究の概要 |
骨破壊など歯周病病態における活性イオウ分子種(RSS)の役割を解明する。そのために、RSSが歯周病原菌(P. gingivalis)のタンパク分解酵素(Kgp)の活性中心のパースルフィド化がKgp活性に及ぼす影響を解析する。さらに、野生型・RSS産生酵素遺伝子変異マウスで歯周病モデルを作製し、野生型あるいはKgp欠損P. gingivalisを接種し、骨破壊や感染・炎症等の病態を解析する。
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研究実績の概要 |
硫黄原子どうしが連結した、種々の有機・無機分子が生体内に存在し、多彩な生理活性を発揮することから、それらは活性硫黄分子(超硫黄分子)と総称される。骨は、破骨細胞による吸収と骨芽細胞による形成を繰り返す。骨粗鬆症や歯周病などでの骨量減少は、これらのバランスが崩れた結果である。昨年度までの研究で、超硫黄分子生成を抑制することで骨芽細胞による石灰化物の生成が抑制されることを見出している。本年度は、破骨細胞分化における超硫黄分子の機能を解析した。 超硫黄分子産生の主要な酵素Cys-tRNA合成酵素2(CARS2)の遺伝子をヘテロ欠損させた(CARS2KO)マウスと野生型マウスから得た骨髄マクロファージの培養系に破骨細胞分化因子RANKLを添加し、破骨細胞分化を誘導した。CARS2KOマクロファージの破骨細胞分化は、野生型マクロファージに比較して遅延したが、超硫黄ドナー(Na2S4)の添加で野生型マウスのレベルに回復した。そこで、Na2S4が破骨細胞分化の細胞内シグナル伝達に与える影響を野生型マウス由来のマクロファージで解析した。Na2S4は、RANKL刺激後のMAPキナーゼ系やNF-kB系の活性化に顕著な影響を及ぼさなかったが、カルシウムーカルシニューリン系を活性化することが分かった。さらに解析の結果、Na2S4によるマクロファージの細胞内カルシウム濃度上昇が、小胞体膜のカルシウムセンサーで細胞質膜のカルシウムチャネルORAI1を活性化するSTIM2の酸化ストレス感受性CysをSerに置換することで、失われることが分かった。このことから、STIM2の酸化ストレス感受性Cysが超硫黄化することが破骨細胞分化を促進する可能性が考えられた。 以上より、超硫黄分子は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収の両者を支えることで、正常な骨代謝を維持する重要な因子と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常な骨では、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収のバランスが保たれ、形態や強度が保たれている。歯周病や骨粗鬆症あるいは関節リウマチにおける骨量減少は、そのバランスが崩れ、骨形成に対して骨吸収が優位になることで起こる。我々が得た結果から、超硫黄分子は、骨形成と骨吸収の両者の恒常性維持に必要な因子であることが示唆された。超硫黄分子の骨・軟骨など骨格系組織における役割は、これまでのところ十分解析されておらず、重要な研究課題として残されている。我々の研究は、この研究分野における先駆けとなる重要なものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、超硫黄分子は骨形成と骨吸収の双方に重要な役割を担っていることが示唆された。今後は、骨・軟骨における超硫黄分子の役割をより詳細に解析したい。特に生体レベルでの役割を解析する必要があると考えている。超硫黄分子産生酵素の遺伝子改変マウスで骨・軟骨の病態モデルを作成し、病態形成にどのような影響があるかを検討し、さらに、超硫黄分子ドナーを投与することで病態がどのように変化するかを解析すべきだと考えている。
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