研究課題/領域番号 |
21K09847
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
河田 亮 神奈川歯科大学, 歯学部, 准教授 (30329198)
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研究分担者 |
猿田 樹理 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (30454151)
杉本 昌弘 東京医科大学, 医学部, 教授 (30458963)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | COVID-19 / 味覚障害 / 味蕾 / ACE2 / BDNF |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の90%近い人に味覚障害がみられる。申請者の研究で、味細胞に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が直接感染を引き起こす可能性が明らかになったが、その感染メカニズムには不明な点が多い。本申請では、味細胞培養細胞株やSARS-CoV-2受容体であるACE2遺伝子改変動物を用いてそのメカニズムを明らかにすることを目的とした。本研究において、味覚障害がSARS-CoV-2の感染に基づく味細胞の代謝障害であることが明らかになれば、COVID-19の診断基準に含まれるための基礎的背景を提供することとなり極めて高い波及効果が期待できる。
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研究実績の概要 |
COVID-19の症状の1つとして味覚障害が認められ、現在までの研究では、嗅覚に関連する支持細胞にSARS-CoV-2の感染が生じ細胞障害による影響が示唆されている。しかし、申請者の研究では、味細胞にもSARS-CoV-2の直接的な感染を引き起こす可能性が明らかなことから、味覚障害の原因がSARS-CoV-2の味細胞への感染による細胞代謝の異常が示唆される。すなわち、「COVID-19の味覚障害には、SARS-CoV-2の味細胞への感染に伴うACE2の発現低下による代謝障害が影響するか」という極めて重要な学術的な問いを見出すに至った。本研究では、この学術的な問いに応えるために、味細胞培養細胞株および遺伝子改変動物を用いて分子生物学にそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。
昨年度まで行っていた味細胞培養細胞株を用いた実験系は、増殖効率が悪かったために、味細胞の遺伝子発現やタンパク質発現の解析を予定通りに進めることができなかったので、今年度は培養条件を変えるなどして解決を試みた。昨年度から開始した遺伝子改変動物を用いた実験系は、ACE2ノックアウトマウスにおける味覚異常メカニズムを解明するために、ノックアウトマウスの繁殖を継続し、各週齢・月齢のH-E染色による味蕾の組織学的検索を行い、味蕾の数や大きさなどの状態確認を行った。また免疫染色を行うための組織切片を作製した。その結果、次のような知見が得られた。先ず培養味細胞を用いた実験系では、細胞の増殖効率を改善するために培養液の成分調整などを繰り返し行ってみたが、明らかな改善を示すような結果は得られなかった。次にACE2ノックアウトマウスを用いた実験系では、各週齢の舌のH-E染色像を観察したところ、どの週齢でも茸状乳頭や有郭乳頭に存在する味蕾が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
購入した不死化味細胞株の増殖効率が悪かったために、味細胞の遺伝子発現やタンパク質発現の解析を予定通りに進めることができなかったので、今年度は培養条件を変えるなどして対応を試みたが、残念ながら増殖効率に改善が認められなかった。同じ細胞株の再購入や代替商品の購入などを検討する必要がある。 一方、遺伝子改変動物を用いた研究については、共同研究者から提供していただいたACE2ノックアウトマウスを繁殖し、各週齢のH-E染色による味蕾の形態観察も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
先ず味細胞の培養実験系は、購入した不死化味細胞株の培養条件などを再度検討すると同時に、同じ細胞株の再購入、あるいは代替商品を購入するなどして味蕾細胞の増殖を図る予定である。そして増槽させた味細胞におけるACE2遺伝子発現が想定よりも少ない場合には、ACE2以外のTMPRSS2やFurinなどの発現低下が、COVID-19の味覚障害の発現に影響している可能性についても考察を進めていく予定である。 次に遺伝子改変動物を用いた研究については、引き続き現在飼育中のACE2ノックアウトマウスを繁殖させ系統維持を図る。そして各週齢・月齢のH-E染色による味蕾の組織学的検索を続け、味蕾の数や大きさなどを確認し、統計分析を行う。そして味蕾におけるBDNFの発現状況の確認を、免疫組織化学およびin situ hybridizationで行い野生型コントロール群と比較する。さらに、味蕾に侵入する神経線維をS100などで同定し、BDNFレセプターであるTrkBの発現を確認する。次に、舌に甘味・苦味刺激を行い、脳におけるc-Fosの発現から、神経伝達性を明らかにする。この検討においてACE2の発現低下が味細胞の機能低下を引き起し神経伝達への影響を引き起しているかを確認する予定である。
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