研究課題/領域番号 |
21K09881
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
鈴木 麻美 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (60318540)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 妊娠関連歯肉炎 / 口腔内細菌 / 歯間乳頭 / 歯周ポケット / シークエンス / データーシェアリング / 遺伝子発現 / 自然言語処理 / 細菌 / 歯周病 / 妊娠 / リスクファクター |
研究開始時の研究の概要 |
日本歯科大学附属病院マタニティ歯科外来に来院した患者の妊娠中と出産後における歯周組織検査、細菌検査、歯肉溝滲出液、歯肉組織の臨床所見、歯周組織における遺伝子発現と機能解析を行う。さらに、産科での生化学検査データ、出産週齢、胎児の体重などのデータを加え、妊娠関連歯肉炎と出産への影響について検討を行う。それにより、妊娠による歯周病の悪化の原因因子、その逆に歯周病による妊娠・胎児への影響を双方向で検討する。
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研究実績の概要 |
妊娠中の約8割の患者さんでブラッシング時に歯肉から出血するとの回答があった。主に出血する部位は、歯の叢生が見られる歯間乳頭からであり、妊娠中期から後期にかけて、その頻度は増加していた。また、プロービング時の出血量は、通常と比較して多く、歯肉の炎症を伴う仮性ポケット形成が認められた。このように、ブラッシングし難い部位において歯肉炎発症の頻度が高くなることから、ポケット内の細菌叢の変化が妊娠関連歯肉炎の重要な因子の1つになると考えられる。また、それらの変化は、妊娠によって起こる宿主側の身体の変化も大きな影響を受けていると考えられる。 妊娠関連歯肉炎と一般的な歯肉炎との違いについては、まだ、不明な部分が多く、歯肉炎の悪化による母体や胎児への悪影響を考えると、妊娠関連歯肉炎の発症メカニズムの解明が必要である。 本研究では、歯肉に炎症が認められた妊娠中の患者において、炎症が無い部位と歯肉炎の部位それぞれから、ペーパーポイントを用い、歯周ポケット内から細菌の抽出を行った。DNA抽出後、16SrRNA V2,3,4,6,7,8,9領域の配列をシークエンサーにより読み取り、それぞれのポケット内に存在する細菌の種類、数および構成比の比較を行い、妊娠関連歯肉炎の原因菌の特定につなげる。さらに、妊婦の遺伝子発現解析から、妊娠中に口腔内に影響を及ぼす変化を明らかにする。 まずは、既存のデータを公共データベースより収集し、遺伝子発現解析を行い、さらに、PubMedなどを用いた文献の自然言語処理による情報をバイオインフォマティクスの手法を用いて集約し、妊娠関連歯肉炎に関連する遺伝子発現やホルモン変化について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染の流行により、歯科受診数はかなり減少してきていた。日本歯科大学附属病院マタニティ歯科外来も例外ではない。新型コロナが流行する前と比較すると10分の1程度まで受診数は減少した。令和5年5月8日から、新型コロナが感染症分類2類から5類になることが公表されてから、来院数は少しずつ増加してきているが、流行前と比較すると5分の1程度までの回復となっている。そのため、歯周ポケットからの細菌の収集の数は予定をかなり下回っている。さらに、遺伝子発現解析のための検体の採取は、共同研究施設での制限からほとんど行えていない状態である。遺伝子発現については、既存のデータベースからデータを抽出して解析する方法を用い進めている。さらに、過去の研究論文など文献から、妊娠関連歯肉炎の関連情報を自然言語処理の方法を用い解析を進めている。 今後、新型コロナが感染症分類で5類に位置づけされることにより、妊婦の受診の増加が予測される。それによって、研究協力を求め研究を進めることが出来ると考えている。 妊婦における歯肉炎の部位では、炎症の無い部位と比較して、Fusobacterium nucleatum、Lautropia mirabilisやNeisseria cinereaの増加が認められ、Neisseria sicca、Streptococcus oralisやRothia dentocariosaで減少が認められた。 データシェアリングによる遺伝子解析からは、妊娠によりbeta-estradiol、estrogen、ERBB2、PPARAやTGFB1などの変化が細菌叢の変化に影響を及ぼしていることが推測された。
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今後の研究の推進方策 |
妊娠関連歯肉炎と妊婦・胎児への双方向の影響については、疫学研究が行われてきたが、細菌学、および、分子生物学レベルでの研究は、十分な科学的根拠に至るものではない。本研究では、妊娠関連歯肉炎と妊娠への影響について、疫学的な関連解析を行うだけでなく、妊娠中と出産後での口腔内環境および歯周組織の状態を比較し、妊娠関連歯肉炎の発症・進行と妊婦や胎児への影響、妊娠中の母体の変化による歯周組織への影響の双方向での関連を疫学、口腔内細菌の変化、および、分子生物学レベルで解析を進める。 まず、日本歯科大学附属病院マタニティ歯科外来に来院した患者の協力を得て、サンプル数を増やし、個体差を考慮した上で、妊娠関連歯肉炎に関連する細菌 の種類・比率について引き続き解析を進める。来年度は、昨年度出産し、出産後1年経過した患者から歯肉溝もしくは歯周ポケットからサンプリングを行い、妊娠中と出産後の変化についても調査を開始する。それに加えて、既存の歯周病に関する生命科学データのシェアリングより、妊娠による血中に認められるタンパク質や遺伝子発現情報を再解析し、妊娠による分子レベルでの変化をバイオロジカルプロセスとパスウェイ情報を収集することにより、炎症部位で、どのような分子レベルでの反応が起こっているかについての解明につなげる。
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