研究課題/領域番号 |
21K09900
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
宮崎 真至 日本大学, 歯学部, 教授 (70239391)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 再石灰化 / Znイオン / 機能性修復材料 / 生物活性 / ガラスフィラー / 機能性修復材 / 高齢者 / tooth wear / 種微量金属作 用 |
研究開始時の研究の概要 |
コンポジットレジン修復は,その歯質接着性と機械的性質から,修復処置が必要となったマイクロクラックあるいはtooth wearに対しては第一選択となる。しかし,接着システムの長期耐久性を低下させる因子として,象牙質基質あるいは口腔内から放出されるmatrixmetalloproteinase(MMP)が接着界面に及ぼす影響を考慮する必要がある。また,レジン自体も加水分解によってレジンとフィラーとの結合が破綻する可能性がある。そこで,これらの疾患を予防するための“高機能歯質プロテクト修復材”として,接着技術とともに歯質の強化法として微量金属作用に着目し,その臨床的効果を究明する。
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研究実績の概要 |
本申請においては,マイクロクラックあるいはtooth wearの進行を積極的に予防するために,優れた耐久性を有する歯質接着技術とともに,歯質の再石灰化に有効となる各種微量金属作用に着目し,歯質強化を主眼とした新たな“高機能歯質プロテクト修復材”の開発を目指すものである。 そのために,バイオアクティブなガラスフィラーを用いて,その再石灰化に及ぼす効果について検討を加えた。すなわち,ウシの下顎前歯歯冠部唇側歯質を耐水性SiCペーパーの#600研磨し,これを被着歯面とする。この被着歯面に対して,Znを含有させたガラスフィラーを含有した修復材を塗布し,これらの試片をpH 4.75の乳酸緩衝溶液に浸漬した。その後,光干渉断層画像診断法(Optical Coherence Tomography; OCT)による内部変化を観察した。OCTを用いた観察時期としては,実験開始前および実験開始1, 7, 14, 21および28日経過後とし, Aモードスキャンからピーク強度および1/e2幅を算定してこれを評価した。また,レーザー顕微鏡ならびに走査電子顕微鏡観察を行った。 その結果,Zn含有ガラスを含有した修復材を用いることによって,ピーク強度とともに1/e2幅が上昇した。また,レーザー顕微鏡観察ならびに走査電子顕微鏡観察からも,歯質表面に石灰化物と考えられる析出物が観察された。 現在,歯質の再石灰化に有効なイオンとしてSi Ca P Zn Mg Sr Cu Bなどが挙げられ,それぞれ検討が加えられている。これらのイオンの中で,とくにZn イオンに着目したガラスフィラーを用いた。本実験の結果から,狙いのように再石灰効果を得ることができたことは,今後の研究の方向性を示すものであると考えられる。すなわち,Znイオンは,歯質の再石灰化促進効果があり,これを応用することによって次世代の修復システム開発が可能となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に使用している装置ならびにその運用においては,申請者が長年の経験を積んできたものであるところから,実験の進捗状況についてもおおむね順調に進展していると考えている。とくに,研究協力者の援助とともに,専門家とのディスカッションを重ねることによって,研究の方向性についても適宜修正を行っていることは重要なものと考えている。さらに,現在の歯科保存領域においては,再石灰化による修復材の高機能化がその研究方向として着目されており,多くの研究者から注目されている。現在,得られた研究成果を積極的に論文発表しているところである。もちろん,研究計画自体に無理がなかったことも,研究がおおむね順調に進展している背景であることは確かである。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた結果について,さらに異なる視点からの検討を進めるために,再石灰化の状況について,超音波透過法を用いて検証を行う。すなわち,歯質,接着システムおよび修復材から構成されている接着界面において,その質的な評価として超音波透過法を用いてこれを検討する。さらに,走査電子顕微鏡に付属するEDXなどの分析装置とともに,NMRなどを用いることによって析出物の成分分析を進める。 今後の研究の推進に関しては,日本のみならず海外においても,本研究の成果を理解してもらうことを目的として,海外学会を含めて多くの研究者を交えたディスカッションを行う場を持つことができればと考えている。基礎研究の発展は,国の力になるものであるとともに,その成果を共有することは歯学という学問領域を世界的に発展させるものであるところから,多くの研究者を巻き込むことによって新たな方向性を求めることに役立てたいと考える。
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