研究課題/領域番号 |
21K09902
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
新海 航一 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (90147843)
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研究分担者 |
鈴木 雅也 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (10409237)
吉井 大貴 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 助教 (50880291)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 抗菌的光線力学療法 / 齲蝕象牙質 / 殺菌 / 歯髄反応 / ラット |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ラットの歯を用いて抗菌的光線力学療法(aPDT)の歯髄(歯の中にあって栄養を与える組織)への刺激性を検討し、歯髄安全性を担保した新しい齲蝕(むし歯)治療法を確立することを目的としている。aPDTとは、光感受性色素液にレーザーを照射すると発生する活性酸素(細菌の細胞壁を破壊する作用をもつ)を利用して齲蝕中の細菌を殺菌する治療法である。しかし、レーザー光は齲蝕に近接する歯髄にも何らかの障害を与える危惧があるため、本研究では歯髄に安全なレーザー光の照射条件(出力と照射時間)を模索する。この治療法の確立によって大きな齲蝕を治療する際に歯髄が保護され、歯髄を除去することなく歯の延命が図られる。
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研究実績の概要 |
本研究は、ラット歯を用いてaPDTの歯髄反応を評価し、歯髄安全性を有するaPDTを応用した深在性齲蝕に対する新規治療法を確立することを目的に行っている。今年度は、光感受性色素の違いによる歯髄への影響を検討した。 ラットに腹腔内麻酔を施した上で、ダイヤモンドポイントを用いて、ラットの両側上顎第一臼歯近心咬頭部に窩洞形成(深さ約0.6mm、直径1.0mm)を行った。650nmレーザーとメチレンブルーとの組合せ(650-MB)、あるいは650nmレーザーとブリリアントブルーの組合せ(650-BB)によるaPDTを左右どちらかの窩洞に応用した。なお、レーザー照射は半導体レーザーを用いて100mWの出力で60秒間行った。その後、アスコルビン酸を窩洞に応用し残留酸素を除去した後、セルフエッチシステムとフロアブルレジンを用いて修復した。なお、aPDTを応用しないものをコントロールとし、同様の材料で修復した(コントロール:n=8、MBとBB:n=4~5)。術後1日後と14日後にラットを屠殺し、通法に従って作製した薄切切片をH-E染色し光学顕微鏡下で観察した。評価項目は歯髄組織の形態変化(PTD)、炎症性細胞浸潤(ICI)、および第三象牙質(TDF)の形成とした。評価基準はPTDとICIでは、変化なし、軽度、中等度および重度、TDFでは、変化なし、軽度、中等度および高度の4段階に設定し、各試料の歯髄刺激性を評価した。 結果を総括すると650-MBと650-BBは、術後1日後ではすべての試料で象牙芽細胞層の変化を認めたが、術後14日後では象牙芽細胞層の変化は認められず第三象牙質の形成を顕著に認めた。この結果は、aPDTによって一時的に歯髄組織の障害が生じるが、時間経過で治癒する可能性を示唆していると思われる。aPDTの歯髄刺激性に関して光感受性色素の違いによる影響は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、実験②としてレーザーの照射条件がaPDTの歯髄刺激性に与える影響についても検討している。実験①で、光感受性色素の種類がaPDTの歯髄刺激性に与える影響について検討した結果、光感受性色素の違いによる歯髄刺激性への有意な影響は認められなかった。しかし、実験②では、臨床で齲蝕検知液にも用いられるブリリアントブルーと650nmレーザーとの組合せ(650-MB)によるaPDTのみを選択し、照射条件の違いがラット歯の歯髄反応に与える影響を病理組織学的に検討している。 レーザーの照射条件は、200mW-30秒間あるいは50mW-120秒間を設定してaPDTを行い、その後の修復処置も実験①と同様に行い、薄切切片を作製しH-E染色まで行っている。しかしながら、Hucker-Conn組織細菌染色、鍍銀染色および免疫染色は行っていない状況であり、歯髄の病理組織学的評価には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
すでに動物実験はすべて終了した。今後はHucker-Conn組織細菌染色、鍍銀染色および免疫染色を鋭意進め、歯髄の病理組織学的評価を行っていく。研究成果は保存学会等で発表し、国際誌で公表する予定である。
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