研究課題
基盤研究(C)
歯周病が糖尿病のリスク因子になり得ると報告されているが、歯周病が糖代謝に影響を及ぼす具体的な機序は十分明らかにされていない。これまでに歯周病菌の嚥下により腸内ディスバイオシスと、肝臓での糖新生の更なる亢進に至るマウスモデルを解析し、同モデルにおいて、肝臓での胆汁酸の産生亢進の可能性を認めている。肝臓で産生される胆汁酸は、胆汁として腸内に分泌され、腸内細菌が代謝し、その後門脈から肝臓へ再吸収される(腸肝循環)が、その量と質が全身の代謝に影響を及ぼすとされている。本研究計画は、糖尿病病態下での歯周病菌群の嚥下による糖新生亢進のメカニズムとして、腸肝循環に焦点をあて検討することを目的とする。
歯周病が糖尿病に影響を及ぼすメカニズムについて、特にその糖代謝異常に対する具体的な修飾メカニズムに関していくつかの仮説が存在するも、まだその詳細は十分明らかにされていない。一方、ヒトの口腔内には、700種類以上の細菌がバイオフィルムを形成して棲息している。特に歯周ポケットに付着するバイオフィルムは、口腔衛生状態不良が続くと嫌気性菌の比率が増し、ディスバイオシスの状態となる。歯周病は、このディスバイオシスが原因となって生じる慢性炎症性疾患と捉えることが出来る。歯周病と全身をつなぐ経路としては、①局所の感染による菌血症、②慢性的に過剰産生された炎症性サイトカインの血流への流入、加えて、近年になって、③飲食時等に相当量の口腔内細菌が食道から消化管へと移行し、腸内細菌叢に変調をきたすことで、全身状態に影響する(eLife. 2019 ID: 30747106)と報告されてきた。我々これまでに、糖尿病マウス(db/db)に対して、代表的な歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)を投与するモデルを実施した。その結果、体重に変化はなかったが、腸内細菌叢の変動と血糖の有意な上昇を見出ている。本研究計画は、歯周病菌が他の食物栄養素と共に消化管へ到達する事により腸管部で細菌叢の平衡状態に変調をきたし、腸管内で特異的な代謝産物が産生されることで、肝臓での胆汁酸の産生と胆汁の十二指腸への分泌および腸内細菌により代謝された胆汁が再吸収されて門脈を経て肝臓に戻る腸肝循環のサイクルに異常をきたすことが、歯周病が腸管を介して肝臓での糖代謝異常に関与するメカニズムであるとの仮説をたて、これに対する検証を行った。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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