研究課題/領域番号 |
21K09924
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
|
研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
二階堂 徹 朝日大学, 歯学部, 教授 (00251538)
|
研究分担者 |
平石 典子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (20567747)
高垣 智博 朝日大学, 歯学部, 准教授 (60516300)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | SDF法 / 根面う蝕 / 接着試験法 / 唾液検査 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者の根面う蝕は増加する傾向にあり、口腔崩壊を避けるためには根面う蝕の進行抑制とその処置法の確立は喫緊の課題である。38%SDFの根面う蝕の抑制効果が世界的に注目されており、我が国においては福島(2017)がSDFを用いた根面う蝕のマネジメントをSDF法として提案している。 本研究の目的は、38%SDFを根面う蝕に塗布した際の黒変部をう蝕の範囲として除去し、さらに接着してCR修復する際の被着体の性状と接着強さ、接着界面に及ぼす影響についての基礎データを集積する。これによってエビデンスに基づく効果的な根面う蝕の修復処置法(SDF法)を確立する。
|
研究実績の概要 |
高齢者の歯の保存は健康長寿とQOLの維持増進に重要である。8020運動の国民への浸透の結果、80歳で20本以上の歯を有する高齢者の割合は5割以上となった。その一方、残存歯の増加とともに根面う蝕が増加しており、高齢者の根面う蝕に対する予防と処置法の確立は喫緊の課題である。本研究で用いた38%フッ化ジアンミン銀(製品名:サホライド、ビーブランド・メディコ-デンタル社、以下SDF)は、高濃度のフッ化物と銀イオンの組成が相まって、根面う蝕の進行抑制に対する高い効果が報告されている。またSDFを塗布することによって根面う蝕歯黒変するが、黒変部はう蝕であることから黒変部をマーカーとして活用し、う蝕を除去して修復するSDF法が注目されている。2022年度においては、根面う蝕を有するヒト抜去歯を収集し、これに対してSDFを塗布した試料に対して、SDF塗布による黒変部をマーカーとしてう蝕を除去後、コンポジットレジン修復を行い、その接着性について評価することである。接着試験は、マイクロテンサイル接着試験法を用い、従来法であるう蝕検知液を用いたう蝕除去法との接着への影響を比較検討した。さらに朝日大学医科歯科医療センター保存科を受診し、根面う蝕を有する高齢者に対してSDF塗布前後の唾液検査を行い、SDF塗布による計測結果への影響を検討し、さらにSDF法を用いて処置したCR修復の臨床成績について前向き調査を行った。これによってSDF法の術式の確立を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接着試験は、マイクロテンサイル接着試験法を用い、従来法であるう蝕検知液を用いたう蝕除去法との接着への影響を比較検討した。根面う蝕を有し、かつ接着試験法に適する抜去歯を確保することに時間を要しており、結果をまとめるには至っておらず、今後も検討を行っていく。また本研究課題においては、SDFの根面う蝕への塗布の有効性について、根面う蝕が必要なる高齢者に対してSDF法を行い、根面う蝕治療の有効性について検討した。その際、SDF塗布前後の口腔内の状況変化についてSMTによる唾液検査を行い、各検査項目からSDF塗布の影響について比較検討した。その結果、SMTのいずれの検査項目においてもSDF塗布前後の検査値の違いは認められなかったが、各項目の検査値の変動係数をそれぞれ算出して比較したところ、う蝕原生細菌数の変動係数とその他の項目の変動係数は大きく異なることがわかった。このことからSDF塗布はう蝕原生細菌数の検査値の増減に明らかに何らかの影響を及ぼすことを示唆し、SDF塗布により根面への細菌付着が抑制されることによる検査値のばらつきが大きくなったものと推察した。さらに高齢者に対する唾液検査は患者からの唾液採取の困難さや口腔清掃状態のコントロールが難しいことなどの点でリスク検査として使用することが難しいと判断した。 SDF塗布によって根面う蝕は黒変し、周囲との識別が容易であった。根面う蝕は慢性化し、歯根面への細菌付着が抑制され、根面う蝕周囲の歯肉炎が消退するのが観察された。う蝕除去の際には黒変部分を除去し、さらにカリエスチェックによる染め出しを来ない赤染部があれば除去して窩洞形成を終了した。その後にコンポジットレジン修復を行ったが修復物の臨床成績はいずれも良好である。SDF法を活用した修復物については今後も経過観察を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究からSDFの根面塗布により歯根面の耐酸性が向上することや細菌付着が抑制されることが明らかとなった。さらに根面う蝕に対してSDFを塗布することによりう蝕部位は黒変するが、変色をマーカーとした根面う蝕の除去とその後のCR修復が可能であることが明らかとなった。一方、Sayedらの研究によれば、SDF塗布の歯面塗布は、脱灰象牙質のみならず、健全象牙質の歯根面についても程度の差はあるが変色することを報告している。この変色についてはSDF塗布後に暗室保管する場合と蛍光灯下で保管した場合によって変色の程度に違いがみられ、蛍光灯下での保管によりより強く変色し、表面には多くの銀が沈着していることを報告している。臨床においては、SDF塗布後に直ちに光照射器を行ってSDFを塗布した部位を黒変させて抗菌性を向上させる方法も行われているが、光線照射と黒変との関係性についてのエビデンスはないのが現状である。そのため今年度の研究は、光線照射がSDF塗布後の象牙質の変色に及ぼす影響について検討する。具体的な方法としては、38%SDFに加えて異なる濃度のSDFを試作し、これを根面象牙質に塗布後、光照射を行い、SDF濃度の違いによる変色の程度を測色計によって計測する。さらに光照射後の試料表面をSEM観察して銀の付着状態を観察し、EDSを用いて元素分析を行う予定である。
|