研究課題/領域番号 |
21K09940
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐藤 秀一 日本大学, 歯学部, 教授 (50225942)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 骨再生 / 垂直方向 / 骨膜 / 人工骨膜 / 膜透過性 / 幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで申請者は,重症化した歯周病や外傷などで回復が困難な垂直方向の骨再生について検討してきた。その結果,垂直方向では周囲組織からの再生誘導が期待できないため,組織再生が困難であることが明らかとなった。そこで,この問題を解決するため,骨膜および幹細胞(脱分化脂肪細胞)シートを応用し,垂直方向からの再生が可能となるよう設定した実験動物モデルを用いて,再生された骨の動態を放射線学的,組織学的ならびに遺伝学的に解析する。この研究の結果によって,歯周組織の再生だけでなく,外傷や腫瘍などで再建困難な末梢組織への再生治療にも応用することが期待される.
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研究実績の概要 |
本研究は,骨膜および人工骨膜(脱分化脂肪細胞(DFAT)シート)を動物モデルの円筒天井部に設置し垂直方向から再生誘導させることにより,円筒内の垂直方向の骨再生について検討する。 はじめに,自家骨膜による垂直方向の骨再生に対する再生誘導能について検討する。具体的には,ラット頭頂部に直径5.0 ㎜,高さ4.0 ㎜の円筒を設置し,垂直方向の骨再生を検討するための動物モデルを作製する。そして,垂直方向からの骨膜の再生誘導能を検討するために,円筒天井部にチタンメッシュならびに遅延型吸収性膜(PLACL膜)を用いて円筒天井を被覆する。 さらに,円筒内に成長因子(VEGF,b-FGF,HGF,PDGFおよびAndiopoetine-1)や骨補填材などの足場の添加と生体接着剤による足場の固着などの効果について検討する。円筒内の骨再生の動態はマイクロCTを用いて術後1~12週間,経日的に観察する。また,同様の動物モデルを用いて総頸動脈から造影剤を注入し,円筒内の新生血管の動態をマイクロCTで同様の期間,観察する。これらの実験で再生された,再生骨組織を試料として,再生骨中に発現するRANKLなどの遺伝子を免疫組織学的に観察する。RT-PCR法によって再生組織内の遺伝子発現を解析し,垂直方向での骨再生のメカニズムを解明する。 次に,人工骨膜を用いての垂直方向から再生誘導させ骨再生を検討する。人工骨膜(DFFATシート)の作製は,ラット腹部脂肪組織からコラゲナーゼ処理後,低遠心分離を行い,浮遊した成熟脂肪細胞分画の天井培養を1週間行い,DFAT細胞を播種し,DFATシートを作製する。そして,自家伸展骨膜の実験方法と同様に,動物モデルの円筒天井部にDFATシートを設置し,成長因子や骨補填材などの添加を行い,同様に再生骨の動態観察や再生骨組織中の遺伝子発現について解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
人工骨膜の代替となる可能性がある,新規遅延型吸収性膜(P(LA/CL)膜)が開発販売されたため,初めにその膜を用いて垂直方向の骨再生に対する効果について検討した。具体的には,円筒天井にP(LA/CL)膜と天然コラーゲン膜を設置し,膜の種類の違いによる円筒内の垂直方向の骨再生を検討した。この実験では円筒内に炭酸アパタイトおよび牛骨ミネラル(DBBM)を填入し,骨再生を検討した。その結果,マイクロCT観察では新生骨様組織と思われる不透過像が経日的増加を認めたが,両群間に統計学的有意差は認められなかった。組織学的評価は両群ともに残留骨補填材を認め,周囲に新生骨像を認めた。ブタ1型及び3型コラーゲン膜群ではメンブレンの残留は確認されず,P(LA/CL)膜群ではメンブレンの残留を認めた。また,組織切片の高さの評価ではブタ1型及び3型コラーゲン膜群よりP(LA/CL)膜群が有意に高かった。これらの結果より,GBR法においてP(LA/CL)膜は,スペースの獲得が維持され,垂直方向への骨再生に対し有効な一助となる可能性が示唆された。以前の学会発表に続き,昨年はこれまでの結果を総括し,Int J Implant Dentに投稿し論文がアクセプトされた。 今後は研究の進行が遅れている,人工骨膜の開発を急務として研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は自家骨膜や人工骨膜が垂直方向の骨再生に与える影響を検討することである。その中で人工骨膜を開発することが重要な要件である。しかし,開発中のDFAT細胞シートの作製ならびに動物モデルへの定着が困難で検討が遅れている。 そこで,初めに新規の遅延型吸収性膜を用いて垂直方向の骨再生を検討した結果,PLACL膜併用が垂直方向の骨再生に有効であることがわかった。そのため,今後は成長因子(VEGF,b-FGF,HGF,PDGFおよびAndiopoetine-1)や骨補填材などの足場を添加し,その相乗効果について検討する。また,新たな展開として骨補填材に新規の生体接着剤を添加することも計画している。とくに,垂直方向の骨再生の動態を造影剤を用いて新生血管をマイクロのCTを用いて観察する。また,再生した骨組織の詳細についてRANKLなどの遺伝子を免疫組織学的そして,RT-PCR法で遺伝子発現を解析することによって,より詳細な垂直方向での骨再生メカニズムを解明していく予定である。 また,これと同時に人工骨膜よる垂直方向の骨再生については引き続き研究を進める。とくに,人工骨膜の作製に対するこれまでの方法との具体的な改良点としては分離したDFAT細胞を生着させるシートなどの変更を試みる予定である。さらに,DFAT細胞を用いた人工骨膜の作製が困難な場合,新たな展開として自家骨膜を培養することによる自家骨膜シートの作製についても研究を進めていく予定である。
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