研究課題/領域番号 |
21K09942
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
米山 隆之 日本大学, 歯学部, 教授 (00220773)
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研究分担者 |
塙 隆夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (90142736)
小泉 寛恭 日本大学, 歯学部, 准教授 (20339229)
陳 鵬 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (70708388)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | チタン合金 / 表面改質 / 歯科補綴装置 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者らは歯科用チタン合金に関する研究を進めてきており、Ni-Ti合金に生体安全性の高い表面改質層を創製することに成功した。そこで本研究では、チタン合金および接着表面処理技術に関する成果を基盤とし、新しい表面改質技術をTi-6Al-7Nb合金、Ti-15Mo-5Zr-3Al合金等に適用することにより、チタン合金-コンポジットレジン複合体の耐食性、接着特性および力学的信頼性について評価し、新しい審美性歯科補綴装置の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
①試料:Ti-6Al-7Nb合金、Ti-6Al-4V合金およびJIS 4種純チタンの試料形状は直径10 mm、厚さ3 mmの円板状とし、試験面性状を#1,500仕上げとして試料を作製した。電解処理方法は、計画通りの方法で30分間処理を行った。 ②耐食性評価:各試料をアセトン、イソプロパノール、超純水の順に各5分間超音波洗浄した後、0.9%生理食塩水中でアノード分極試験を実施した。試料の浸漬から5分後に自然電極電位測定を開始し、5分間経過時点での電位を腐食電位とした。続いて、アノード側へ1 mV/sの速度で2.5 Vまでアノード分極を行った。その結果、腐食電位は、Ti-6Al-7Nb合金では未処理:-0.15 V、電解処理:0.06 Vで、Ti-6Al-4V合金も未処理:-0.04 V、電解処理:0.37 Vと電解処理によって上昇していた。対照の純チタンでは、未処理:-0.16 V、電解処理:0.04 Vであった。次に、不動態保持電流密度(電流-電位曲線の電位1.0 Vにおける電流密度と規定)は、Ti-6Al-7Nb合金では未処理:6.5 μA/cm2、電解処理:0.36 μA/cm2で、Ti-6Al-4V合金も未処理:5.1 μA/cm2、電解処理:0.39 μA/cm2と電解処理によって低下した。純チタンでは、未処理:8.0 μA/cm2、電解処理:1.2 μA/cm2であった。したがって、本研究における電解処理によってチタン合金の耐食性の向上が認められた。 ③表面分析結果: 各試料の表面組成についてXPSで分析した結果、Ti-6Al-7Nb合金のTi 2p3/2におけるTi4+の割合は、未処理:51%、電解処理:82%、Ti-6Al-4V合金についてはそれぞれ57%、82%であり、本研究における電解処理によってチタン合金表面における酸化の促進が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初に予定していたTi-15Mo-5Zr-3Al合金は入手不能であったが、その代替としてTi-6Al-4V合金を設定し、Ti-6Al-7Nb合金、Ti-6Al-4V合金および対照のJIS 4種純チタンについて各種試験による評価が進行中である。試料形状は直径10 mm、厚さ3 mmの円板状とし、試験面性状を#1,500仕上げに決定して試料を作製した。電解処理方法は、計画通りの方法で30分間処理を行った。0.9%生理食塩水中でアノード分極試験を実施し、腐食電位と不動態保持電流密度を測定したところ、腐食電位は電解処理により上昇し、不動態保持電流密度は電解処理により低下しており、本研究で設定した電解処理によってチタン合金の耐食性が向上する結果が得られた。そこで、耐食性向上の原因となる表面構造の変化を検討するため、当初の計画には無かった項目ではあるが、各試料についてXPSによる表面分析を実施したところ、電解処理によってチタン合金表面における酸化が進行している結果が得られた。したがって、耐食性試験結果によるフィードバックとしての電解処理条件変更は実施する必要が無くなった。次のステップとしては、表面改質チタン合金のレジンとの接着に関連する項目について、まず、計画通りのプライマー処理条件で剪断接着強さを評価するとともに、水中熱サイクル試験による接着耐久性についても検討する計画である。さらに、接着に影響する因子である表面粗さやぬれ性についても新たに検討項目に加えることとした。
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今後の研究の推進方策 |
①チタン合金とレジンの接着性に及ぼす電解処理の影響:Ti-6Al-7Nb合金、Ti-6Al-4V合金およびJIS 4種純チタンの試料について、電解処理の有無によってグループを分け、MDPとVBATDTを含有するプライマーで被着面処理を行い、MMA-TBB系アクリルレジンとの剪断接着強さを評価する。さらに、試験後の破断面を光学顕微鏡で観察し、破壊形式の分類を行う。なお、接着耐久性試験については、水中熱サイクル(5-55℃,係留時間各1分間)を20,000回負荷する条件で検討する。 ②「新規追加項目」チタン合金の表面性状に及ぼす電解処理の影響:Ti-6Al-7Nb合金、Ti-6Al-4V合金およびJIS 4種純チタンの試料について、電解処理の有無によってグループを分け、表面粗さおよびぬれ性を評価する。 ③チタン合金-コンポジットレジン複合体の力学的信頼性評価:Ti-6Al-7Nb合金、Ti-6Al-4V合金およびJIS 4種純チタンの試料について、電解処理の有無によってグループを分け、チタン合金-コンポジットレジン複合体試料を作製し、ISO 6872に準拠した力学的試験によって力学的信頼性を評価する。 ④総括評価:Ti-6Al-7Nb合金、Ti-6Al-4V合金およびJIS 4種純チタンの試料について、電解処理の有無によってグループを分け、全項目で総合的に良好な性質を示した系の複合体の特性および作製技術に関し、臨床応用の観点から総括的な検討を行い、実用化に向けた評価を実施する。
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