研究課題/領域番号 |
21K09960
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
半場 秀典 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (90634006)
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研究分担者 |
中村 圭喜 東京歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (80804111)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | バイオミネラリゼーション / エナメルクラック / 再石灰化 / クラック / ペプチド / ハイドロキシアパタイト |
研究開始時の研究の概要 |
歯は過大な咬合力による疲労を受け続けると、疲労破壊として咬耗や歯冠表面に微小クラックが発生する。以前の研究では、過大な咬合力による歯頸部欠損に着目し、周囲のクラックがミネラル低下に関与することをMicro-CT解析にて解明したが、クラックの修復機構および修復したクラックの耐久性は未だ解明されていない。 そこで本研究では、作製したエナメルクラックにペプチドアプタマーであるHAp結合性ペプチドを応用して、生体の修復能であるバイオミネラリゼーションによるHApの結晶構造の正しい回復を促し、修復クラックの解析を行う。本研究はバイオミネラリゼーションによるクラック修復の基盤を構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
歯は過大な咬合力による疲労を受け続けると、疲労破壊として咬耗や歯冠表面に微小クラックが発生する。以前の研究で、過大な咬合力による歯頸部欠損に着目し、周囲のクラックがミネラル低下に関与することをMicro-CT解析にて解明したが、クラックの修復機構および修復したクラックの耐久性は未だ解明されていない。生物はしばしばカルシウムなどの金属イオンを生体材料として用いるバイオミネラリゼーションを行っており、リン酸カルシウムで構成されるハイドロキシアパタイト(HAp)を含む歯や骨、炭酸カルシウムの貝殻などは代表例である。ペプチドの働きによって微小なミネラル結晶が形成され、複雑な微細構造が組み立てられる、バイオミネラリゼーションを模倣することで、生体組織でペプチドがどのようにバイオミネラルを形成するかについてはまだ不明な点が多い。 そこで本研究では、作製したエナメルクラックにファージディスプレイ法により特定されたペプチドアプタマーであるHAp結合性ペプチドを応用して、生体の修復能であるバイオミネラリゼーションによるHApの結晶構造の正しい回復を促し、修復クラックの解析を行う。今回使用したペプチドはHApおよびエナメル質との結合性を有することを確認し、Micro-CTによるミネラル回復およびナノインデンテーションによる機械的回復やSEM観察を行った結果、エナメル質表層下脱灰の再石灰化効果を有することが明らかになった。さらにクラックの修復の解析を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エナメル質特異的結合性蛍光標識ペプチド(FITC標識EBP)を使用した.ウシ下顎切歯歯冠を3×3×2mmに切出し、エナメル質平滑面が露出するようにエポキシ樹脂にて包埋した。次にエナメル質表面を耐水研磨紙で研削後、処理面を2×2mmに規定し試料とした。試料を脱灰液に浸漬しエナメル質試料の表層下脱灰試料を作製した。処理面にそれぞれFITC、FITC標識EBP 0.4 mM、4.0 mM、7.0 mMを30分作用させ、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)で観察した。実験群を(1)DW群、(2) EBP 0.4 mM群、(3) EBP 4.0 mM群、(4) EBP 7.0 mM群とし、それぞれ上記と同じ条件で作用させ、再石灰化液に7日間浸漬した。試料は脱灰後と再石灰化後にMicro-CTで撮影し、得られた3次元データを解析し、ミネラル増加率を求めた。また、健全エナメル質と脱灰エナメル質の基準試料の硬さをナノインデンテーションを用いて測定比較した。一部の試料は走査型電子顕微鏡(SEM)で表層及び縦断面の微細構造を観察した。CLSMの結果、EBPはDW群と比べて蛍光強度の増加が見られ、EBPはエナメル質表層に結合していた。さらに、縦断面画像で表層下の浸透を観察した。Micro-CT解析の結果、再石灰化率ではEBP 7.0 mMはDWと比較し、有意に高い再石灰化率が認められた。硬さ試験ではすべての濃度のEBP群はDW群と比較して有意に高い値を示し、EBPの再石灰化促進効果による硬度の増加を認めた。SEM観察では、EBP 7.0 mM群で表層の小柱構造が不明瞭になり、縦断面では一部表層下の結晶様構造物の蓄積が見られた。使用したEBPは濃度依存性に再石灰化効果を有することが明らかとなった。より詳細な修復メカニズムを調査するため、次年度に追加試験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から特異的な構造を持つEBPがエナメル質との蛍光強度が高かったことやエナメル質表層下脱灰の再石灰化効果が高いことが判明したことから、今回使用したEBPの他にファージディスプレイ法と呼ばれるペプチドや蛋白質を提示する技術を用いて、エナメル質に高い結合性を持つペプチドをスクリーニングする。選択したエナメル質結合性ペプチドによるミネラルの回復および硬さ試験による機械的な回復の評価を行っていく予定である。
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