研究課題/領域番号 |
21K09988
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57050:補綴系歯学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
李 淳 日本大学, 歯学部, 講師 (10386055)
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研究分担者 |
大原 絹代 日本大学, 歯学部, 助教 (10731606)
岡田 真治 日本大学, 歯学部, 専修医 (60844008)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 口腔乾燥 / 疼痛 / 感覚異常 / 口腔粘膜 / 唾液 / 三叉神経 |
研究開始時の研究の概要 |
唾液分泌機能の低下を原因とした口腔乾燥症が認められる患者の中には、口腔粘膜の疼痛閾値の低下や慢性的な感覚異常を訴える者が少なくない。このような患者に対して義歯補綴治療を行う場合、単純に疼痛部位の避圧処置だけで良好な疼痛管理を行うことは難しく、治療に苦慮するケースが多い。 神経損傷に起因する口腔粘膜の疼痛異常は、口腔粘膜を支配する三叉神経節細胞に変化が生じることが原因であると明らかにされていることなどから、本研究では、三叉神経節と口腔粘膜損傷度に注目して、唾液腺摘出ラットを作製し、口腔乾燥症発症時の口腔粘膜損傷に起因する疼痛発症機構を行動学的および免疫組織学的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、口腔乾燥症発症時の口腔粘膜における感覚異常発症機構を解明する目的で、ラットの大唾液腺を摘出したSGEモデルラットを作製し、行動学的、免疫組織学的手法を用いて研究を行った。 ①口腔乾燥による飲水量の増加が示されていることから、飲水量の測定を行った結果、14日間の飲水量は、SGE群ではSham群と比較して有意に飲水量の増加が認められた。体重の測定では、体重の20%の飲水量供給を行なっても、SGE群、Sham群ともに体重増加率に有意な差は認められなかった。次に、口腔内湿潤度をフェノールレッド糸によって測定したところ、SGE群ではSham群と比較して湿潤度の有意な低下が認められた。 口腔粘膜の感覚異常および疼痛の発現状態を観察するために、下顎左側門歯歯頸部から約3mm下方の粘膜部にデジタルフォンフレイによって機械的刺激を、熱刺激プローブによって熱刺激をそれぞれ与え逃避閾値反射を測定したところ、機械的刺激、熱刺激ともにSGE群はSham群と比較して有意な逃避閾値の低下を示した。唾液腺切除による口腔乾燥発現によって、飲水量の増加が認められ、口腔粘膜部の感覚異常や疼痛閾値の低下が発生する可能性が、行動学的観点から示された。 ②機械的刺激および熱刺激による疼痛閾値の低下が認められたことから、三叉神経節に焦点を当て、三叉神経節細胞のTRPA1およびTRPV1の発現状態を免疫組織学的解析によって観察した。その結果、SGE群ではSham群と比較して、TRPA1、TRPV1ともに有意な陽性細胞数の増加を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画立案当初は、回転器具によって口腔粘膜潰瘍を形成し潰瘍周囲の疼痛閾値を測定する予定であった。しかし、疼痛が複数の 条件によって発現する可能性を考慮して、唾液腺切除による口腔乾燥発症そのものが口腔粘膜に対して疼痛を惹起するか否かを検証することとした。行動学的検討の段階から変更が必要となり、時間を割いているため、当初の計画よりも若干遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
老化や加齢性疾患の原因として活性酸素種(ROS)が知られており、末梢神経にも傷害を与え一次感覚神経の変性や機能障害をもたらすとされている。SGEラットの口腔粘膜にN-Acetylcysteine(ROSインヒビター)を連続的に局所投与し、口腔粘膜の疼痛や異常感覚発症にROSが関与する可能性についても検討していく予定である。
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