研究課題/領域番号 |
21K10053
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
工藤 朝雄 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (60709781)
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研究分担者 |
辺見 卓男 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (20814883)
島津 徳人 麻布大学, 生命・環境科学部, 准教授 (10297947)
添野 雄一 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (70350139)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 舌扁平上皮癌 / WPOI-5 / 口腔癌スフェロイド / オルガノイド培養 / ハイブリッドEMT / 組織立体構築 |
研究開始時の研究の概要 |
舌扁平上皮癌(舌癌)では、予後不良となる特異な病型として「癌本体から大きく逸脱した癌細胞集団 (胞巣)の出現」を指標とする“WPOI-5”が注目されているが、このような病理組織学的な特徴がどのようにして癌の病態や舌癌患者の予後不良と関係するかは不明である。本研究では、ⅰ)舌癌患者検体の組織立体構築による癌胞巣の空間配置や連続性の検証、ⅱ)ヒト口腔癌細胞スフェロイドの移植マウスモデルを用いた癌細胞の浸潤経路の追跡、間質組織要素(舌筋組織、脂肪組織、脈管・神経線維)との相互作用による癌胞巣の形質・形状変化のパターン分析を行うことで、WPOI-5病態の成立プロセスを明らかにする。
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研究実績の概要 |
近年、癌細胞の様式分類の1つであるWorst Pattern of Invasion(WPOI)が、舌癌患者の予後予測に有用であることが分かってきており、特に「浸潤先端部の胞巣集団から1mm以上離れた遊離胞巣が存在している状態」を示す病型“WPOI-5”では、患者生存率低下との関連が認められる。本研究では、口腔癌スフェロイドをマウス舌組織に移植した担癌マウスを作製することで、WPOI-5病態解析モデルの解析を目指している。口腔癌スフェロイドをマウス舌組織に移植した際の挙動を知るため、低接着性培養プレートにより作製した口腔癌スフェロイドをハイドロゲルに埋入・培養して、癌細胞の動態観察を試みた。ハイドロゲル埋入後の口腔癌スフェロイドの変化は、埋入方法や基質ゲルの種類によって異なっており、マトリゲル-Type 1コラーゲンの混合ハイドロゲル中に口腔癌スフェロイドを混ぜ込んで培養する方法が、培養期間中のスフェロイド構造の維持、構成細胞の生存に最適であった。また、口腔癌スフェロイド単独でハイドロゲル内に埋入した場合、口腔癌オルガノイド辺縁の癌細胞には核の偏在など極性変化が観察されたものの、ハイドロゲル内への侵入は仮足形成に留まっていたことから、口腔癌スフェロイドと線維芽細胞との共培養(口腔癌オルガノイド培養)に実験方法を変更した。口腔癌オルガノイド培養では、ハイドロゲル内に埋入する口腔癌スフェロイド/線維芽細胞の数、ゲル中の基質濃度が、癌細胞の挙動に差を生じさせていることを明らかにした。一部の口腔癌細胞株では、癌細胞がハイドロゲル内に索状浸潤する様子も捉えられていることから、in vitroにおけるWPOI-5病態モデルとして応用可能と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、昨年度COVID-19流行の影響で保留していた実験として、低接着性スフェロイド培養プレートにて形成した単一の口腔癌スフェロイドを吸引して、マウス舌組織に移植する計画を進めることとした。移植実験に使用する口腔癌スフェロイドの培養期間を検討するため、24時間培養時点の口腔癌スフェロイドからホルマリン固定パラフィン標本を作製した。組織解析では移植実験に使用予定のヒト口腔癌細胞スフェロイド(HSC-2、KOSC-2、OSC-19、OSC-20)において、様々な程度で細胞死が生じていることが分かった。また、事前検討でスフェロイド吸引を試行した際、吸引するスフェロイド数の制御が困難であったことから実験計画を見直し、in vitroのWPOI-5病態解析モデルの確立を目指した口腔癌オルガノイド培養を中心に行った。口腔癌オルガノイド培養の検討に際して、大型の癌胞巣から癌細胞が浸潤・増殖する過程を再現出来ることを目標として、初年度において確立したHanging drop法・浮遊回転培養法を組み合わせた培養法で大型の口腔癌スフェロイドを形成し、ハイドロゲル内に埋入する培養を行った。埋入した口腔癌スフェロイドでは、癌細胞が周囲のハイドロゲルに浸潤する様子が確認され、ホルマリン固定・パラフィン包埋組織標本ではハイドロゲルに接触する癌細胞の核偏在化など極性変化が生じていた。一部では癌細胞がハイドロゲルに仮足を伸ばしていたが、スフェロイド内の細胞死が抑制できず、培養48時間にてスフェロイド構造が崩壊するものも認められた。当初計画では癌細胞挙動の追跡期間として2週間程度を想定していたが、大型の口腔癌スフェロイドを用いた培養実験ではダイナミックな挙動観察が困難であったことから、打開策として低接着性培養プレートにより形成した小型口腔癌スフェロイドを利用した口腔癌オルガノイド培養の検討を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
口腔癌スフェロイドを用いた担癌マウスモデル解析は計画していた手順を見直し、一定数のスフェロイドが移植可能な培養法・移植法を再検討する。今後の実験計画は、口腔癌オルガノイド培養モデルの解析を中心とした実験に変更する。口腔癌オルガノイドサンプルにおける癌胞巣の立体形状と免疫表現型との関連性を明らかにするため、ホルマリン固定パラフィン包埋標本から連続薄切標本を作製して、癌細胞形質を解析する多重免疫染色(サイトケラチン、ビメンチン、Eカドヘリン、CD44)を実施、申請者らの研究グループが確立した画像演算処理システム(RATOC社;TRI-SRF、NIH;ImageJ/FIJIを使用)により組織立体構築を行う(辺見・島津担当)。また、WPOI-5病態成立におけるリンパ管内浸潤の役割を明らかにするため、不死化リンパ管内皮、不死化線維芽細胞、不死化脂肪組織由来幹細胞を用いたリンパ管オルガノイドを作製して、口腔癌スフェロイドとの共培養モデルを確立する(工藤担当)。また、口腔癌細胞やリンパ管内皮の動態解析のため、Lentivirusベクターを用いて蛍光タンパク質発現細胞を作製して、タイムラプス観察を実施する(工藤・添野担当)。これらの実験と併せて、マウス舌組織へのスフェロイド移植法の予備検討も行う。口腔癌細胞をマトリゲルで培養することで口腔癌スフェロイドを形成、液状化させたマトリゲルを吸引する。一定数のスフェロイドが移植可能な培養条件を明らかにするとともに、ハイドロゲルとともに再培養することで、移植後の定着率を推察する(工藤担当)。手技が確立した後に、ヌードマウス舌組織への移植を再度検討する。
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