研究課題/領域番号 |
21K10090
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤尾 正人 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (90612804)
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研究分担者 |
日比 英晴 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90345885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 骨再生 / 幹細胞 / 骨延長 / メカニカルストレス / 骨格前駆細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
失われた組織を再生させるため、幹細胞移植や、細胞からの液性因子を投与する研究や治療がされている。どちらも体外での細胞培養が必要であり、多くの問題がある。私達はこれまで、骨や軟組織までもが再生される、骨延長術の治癒過程を大型組織再生のモデルとして解析し、1) 骨延長部での血管内皮前駆細胞、間葉系幹細胞の集積因子を明らかにし、その動態について報告してきた。さらに、2) 骨延長に特有なメカニカルストレス(伸展刺激)が間葉系幹細胞に与える影響について報告してきた。本研究では骨格前駆細胞の動態をとらえ、組織再生に関わる幹/前駆細胞のシーケンシャルな体内移動を基軸とした新しい骨再生治療の開発につなげたい。
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研究実績の概要 |
組織再生を活性化させる初期因子として注目されているHigh Mobility Group Box Protein 1(HMGB1)に重点を置き、組織再生の中心的な役割を担う各種幹細胞、前駆細胞との関連性について解析を進めた。骨折、区域欠損のみならず、骨延長治癒過程においても、骨切りの4時間後に血清中HMGB1タンパクは発現のピークをむかえ、すみやかにベースラインに戻っていくことが明らかになった。 さらに、骨治癒過程中にHMGB1を局所投与することにより、骨形成が促進されることが放射線学的解析(μCT)や組織学的解析(HE染色)で明らかになった。免疫組織化学染色ではVEGFレセプター2/CD34陽性の血管内皮前駆細胞(EPC)、Sca-1/PDGFレセプターα陽性の間葉系幹細胞(MSC)が集積してくることが分かった。集積したEPCは時間の経過とともに成熟した血管網を構築していくことが示された。以上の結果から、早期の血管再生がされることで骨治癒が促進されると推察された。 これらin vivoでの実験結果を踏まえin vitroの実験系においてもその仮説について検証をした。HMGB1は幹/前駆細胞の可動性を上昇させ、濃度依存的な移動も促進することが示された。さらに、in vitroの系では血管再生能も向上させることが明らかとなった。細胞増殖については影響がなかった。HMGB1の局所投与は生体内での本来の役割を越えて、組織再生に効果を示す結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SPCがマウスの成長とともに観察されなくなる問題が解決困難であった。この問題は、骨折モデル、区域欠損モデル、骨延長モデルに共通しており、SPCが分化する段階で幹細胞マーカーであるNestinの発現が低下することに起因すると推察している。実験に使用するマウスの週齢を変更し、幼齢マウスを使用することも検討したが、個体が小さく、各骨損傷モデル作製の際の技術的な問題があらたに生じた。そのため、解析対象をEPC、MSCとHMGB1を中心に進めることに変更を余儀なくされた。ターゲットを絞った結果、HMGB1の発現パターンに加え、組織再生についての効果も示すことができた。in vitro、in vivoとの実験結果から、HMGB1は組織破壊が起きた部位から分泌され、周囲の組織再生の初期段階で、幹細胞動員のためのシグナルとして働き、その後も硬組織、軟組織の再生に欠かすことのできない血管構築に促進的に働くことが明らかとなってきた。また、移植の際の担体からの徐放性についても検討し、十分な濃度、期間が局所で維持されることも明らかとすることができた。当初の計画に変更が生じたが、大型組織再生にかかわる組織幹細胞、前駆細胞の働きを解析するという点では実験が進んでおり、順調に結果も出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
HMGB1はこれまでダメージ関連分子パターン(damage associated molecular patterns;DAMPs)と呼ばれ、主に免疫応答、炎症にかかわる役割について着目されてきた。本研究では、大型組織再生の場でのHMGB1の役割についてさらに解析を進めていく。 早期の骨形成が観察されたメカニズムを解明するために、in vitro, in vivoの実験を相補的に行う予定である。また、SPCについて、in vivoでの観察は上記の問題により、困難であるため、幼齢マウスから細胞を抽出し、in vitroの系でHMGB-1やMSC、EPCとの関連性を解析していくこととする。これまで、免疫や炎症にかかわる役割が注目されてきたHMGB1であるが、本研究では、大型組織再生の場への局所投与により、その生体内での本来の役割を越えた、組織再生効果を検証していく。
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