研究課題/領域番号 |
21K10236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
楠瀬 隆生 (桑田隆生) 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (10398852)
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研究分担者 |
布施 恵 (長井恵) 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (30343578)
岩井 啓寿 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10453888)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | レーザーアブレーション / 銀溶液 / フッ化ジアミン銀 / う蝕除去 / 自由電子レーザー |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者にとって安全性の高いう蝕治療法の1つとして期待されるのが、レーザー照射による物質の蒸散現象(レーザーアブレーション:LA)の活用である。LAによるう蝕除去は既に試みられているがう蝕の選択性が不十分であり、LAによるう蝕除去の実用化は、う蝕の選択性をいかに上げるか、が鍵となっている。本研究ではう蝕治療に用いられている銀溶液を併用することでう蝕の選択性を挙げ、確実かつ簡便なう蝕除去法の実現に向けた実証的基盤を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究計画では(1)銀溶液塗布に伴う歯質の性状変化の確認、(2)銀溶液塗布う蝕部におけるfsレーザー照射効果の検証、が2022年度の主要な課題である。これらについて以下にまとめる。 (1)銀溶液塗布に伴う歯質の性状変化の確認 銀溶液塗布に伴う歯質の組成変化の検証は、銀溶液塗布によるう蝕検出の機序やその安全性を理解する上で、またレーザー照射条件を検討するための基礎情報として重要と考えられる。そこで臨床試薬として市販されているフッ化ジアミン銀溶液(商品名サホライド)を健常象牙質に塗布後、時間変化に伴う歯質の性状変化を、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)を用いて分析した。その結果、フッ化ジアミン銀溶液塗布直後から赤外スペクトルに変化が起こるが、その後、塗布による変色は進むがスペクトル自体には大きな変化は生じないことが明らかになった。フッ化ジアミン銀溶液塗布ではリン酸基由来と推定されるピーク幅が狭くなっている様子が見られ、塗布に伴い結晶性が向上した可能性が示された。この結果はサホライドの安全性を改めて示唆するとともに、レーザー照射実験用試料を作成~照射条件の参考となる。 (2) 銀溶液塗布う蝕部におけるfsレーザー照射効果の検証 【現在までの進捗状況】で述べる様に、fsレーザー照射実験が行なえず、照射効果の検証に遅れが出ている。そのため、上(1)の結果に基づき照射用試料の作製を行うとともに、日本大学理工学部内電子線利用研究施設(日本大学LEBRA)のスタッフの協力の基に光学系の構築を含めた照射実験の環境整備を進め、照射実験を開始のための準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
銀溶液を用いたう蝕部検出の汎用性の検証については、先の「研究実績の概要」に述べた通り、2022年度に実施した硝酸銀溶液塗布の影響に加え、フッ化ジアミン銀溶液塗布による象牙質歯質の性状変化をFTIR測定により分析することで一定の成果を上げている(成果は2回の学会発表で公表)。 一方、銀溶液塗布う蝕部に対するfsレーザー照射効果の検証で遅れが出ている。レーザー照射実験は、日本大学LEBRAにおいて電子線形加速器由来の超短パルスレーザーである自由電子レーザー(FEL)を用いて実施予定である。しかし、2020年度末に生じた加速器主要部(クライストロン電源:RF源)の故障などの影響により、電子線利用研究施設の利用者実験の受け入れが中止され、当初予定した2022年度前半の施設利用実験を断念せざるを得なかった。さらに2023年度も加速器RF源の不調に対して応急処置が続くなど、照射実験を実施する機会を得るに至らなかった。そのため先の研究実績の概要で述べた通り、照射用試料の作製や光学系の再整備など照射実験再開に向けた準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、遅れが生じている銀溶液塗布う蝕部におけるfsレーザー照射効果の検証が急務となる。現在、照射実験を予定している日本大学LEBRAスタッフと共に実験実施に向けた準備を進めている。同施設は照射実験の実績もあり、照射効果の検証に必要な照射強度の測定、照射位置の制御システムなどが整備されており、本研究の推進に不可欠である。しかし近年の加速器の状態などを鑑みると、十分な実験時間を得られない可能性も考えられる。そこで有償貸出が行われている紫外線~可視光領域のfsレーザーを用いた照射実験も検討する。その場合、光学系の整備などが新たに必要になるため、機器は日本大学LEBRAに搬入し施設スタッフの協力下で実験を実施する予定である。 一方、銀溶液塗布前後の歯質の組成変化の検証では、FTIR測定により結晶系の変化など、新たなデータを習得可能であることが明らかになった。そこでfsレーザー照射に伴う歯質の性状変化の分析では、FTIR測定による結晶性の変化についても分析を行うことを検討している。これに加え当初の予定通り、X線回折法(XRD)やエネルギー分散型X線分析装置付走査顕微鏡などを用いて、銀溶液塗布~レーザー照射後の歯質構造に生じる変化を総合的に検証する。
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