研究課題
基盤研究(C)
原発事故の汚染の成人への影響を調べるために, 本研究に賛同が得られた全国歯科診療所施設に資料(研究計画説明書,同意書)と収集ビンの配布を実施し,ヒト第三大臼歯を収集継続中である(約300本,令和2年7月31日現在).今回,新たに原発事故作業所等(経験者含む)も収集場所に加えた.これらの方法により,日本人永久歯(特に第三大臼歯)を収集し, 生年別,地域別(特に被災地及び原発事故作業従事者及び経験者)の成人永久歯への放射性核種(90Sr,238Pu,239+240Pu,134Cs,137Cs)の蓄積を明らかにし,乳歯や既存のデータ等,被災地域土壌,被災牛の汚染された歯のデータと比較検討する.
福島第一原発事故(FNPPA)では様々な放射性核種が放出され,福島原発周辺は汚染され続けている.日本全国よりヒト乳歯を集め,乳歯中での放射性核種(90Sr,238Pu, 239+240Pu)の蓄積を調査し,一部地域からSr-90が検出されている結果を得ている.被災動物環境研究会は,2012年9月から研究活動を行っており,血液サンプルを採取して遺伝子変化などの牛への放射線影響を分析し,土壌や牧草などの環境モニタリングを実施して放射線量を比較している. 電子スピン共鳴 (ESR) 歯の線量測定は,歯の放射線被ばくによって生成される安定した不対電子を測定することによって放射線量を評価する確立された方法である.2011年3月の震災時と較べ,放射能は減少しているが,汚染は継続している.この研究プロジェクトでは,福島県浪江町や大熊町など10の畜産農家から提供された約160頭の牛からデータを収集した.FNPP 事故の避難区域にある浪江町の大丸牧場,大熊町の大熊牧場で 6 年以上残っていた牛から歯を採取した. 抜歯された各歯の線量は,ESR歯線量計を使用して測定された.さらに,化学分析によるこの牛の歯の放射性核種 (Cs-137,134,Sr-90,Pu-238,239 + 240) 測定を実施した.さらに,対照として北海道,群馬,鹿児島の牛を使用した.被災牛のESR結果は近似的に表現できた.対照群では ESR 信号を示す歯はなかった.小丸農場の被災牛の歯や骨に蓄積されたSr-90,Cs-137,134 の量は,大熊農場より高かった.対照群の15倍以上のが被災牛の歯から検出された.生年が1981年と1989年のヒト第三大臼歯(各17本)のSr-90量を測定し,1981年はSr-90は8.8㎜Bq/Ca,1989年は11㎜Bq/Caで,チェルノブイリ原発事故の影響が示唆される.
3: やや遅れている
今年度も,コロナ禍の影響で 永久歯収集が滞り定量値が基準に達するように収集できなかったので,次年度に収集状況を改善し(特に被災地)今までのデータとの比較検討を実施する.前年度報告で,これらの試料群から微量のCs-137,Cs-134が蓄積していたことが示唆されているので,同時進行で被災牛の歯と骨のS-90,Cs-137,Cs-134の定量を実施していく.これらは,原発事故の影響が認められているので、ヒト乳歯との比較を実施して事故との関連をさらに詳細に調査している.また,被災牛のESR定量を実施し歯から信号が検出されているので,事故の影響を簡便に調査できる方法についても検討を行っている.そして,ヒト乳歯や永久歯での被ばくの影響をESR定量で調査していく.
前年度報告で,これらの試料群から微量のCs-137,Cs-134が蓄積していたことが示唆されているので,同時進行で被災牛の歯と骨のS-90,Cs-137,Cs-134の定量を実施した.これらは原発事故の影響が認められているので、ヒト乳歯との比較を実施して事故との関連をさらに詳細に調査している.また,被災牛のESR定量を実施し歯から信号が検出されているので,事故の影響を簡便に調査できる方法についても検討を行っている.さらにヒト乳歯や永久歯での被ばくの影響をESR定量で調査している.生年が1981年と1989年のヒト第三大臼歯(各17本)のストロンチウム90量を測定し,1981年はSr-90は8.8㎜Bq/Ca,1989年は11㎜Bq/Caの量が検出された.本来生年年齢が上であると減少するはずが増加に転じていたことは、チェルノブイリ原発事故の影響が示唆される.今後、さらに試料を追加してFNPP事故との関連も詳細に調査していく予定である.
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Applied Sciences
巻: 11 号: 3 ページ: 1187-1187
10.3390/app11031187