研究課題/領域番号 |
21K10245
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
円山 由郷 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (90610296)
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研究分担者 |
大島 拓 富山県立大学, 工学部, 教授 (50346318)
粂田 昌宏 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00582181)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 口腔細菌叢 / ナノポアシーケンサー / 口腔微生物叢 / マイクロバイオーム / 音波 |
研究開始時の研究の概要 |
外部刺激に対する応答に個人差がある口腔菌叢を、「いかに良い状態に維持するか」「いかに悪い状態を改善するか」が大きな課題である。一方、化学物質による菌叢改善が試みられているが、医療応用にはより安全な方法が求められる。本研究では、「個別の微生物叢ごとに、外部刺激に対する応答が異なるのはなぜか?」「化学物質を使わずに、菌叢をコントロールすることは可能か?」という問いをたて、「口腔微生物叢の機能解析法の構築」「個別の微生物叢ごとに外部刺激に対する応答が異なる要因の解明」「物理的作用による、安全・簡便な微生物叢コントロール法の開発」を目指す。
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研究実績の概要 |
・次世代シーケンサーを用いたDNA配列解析技術の発展により、口腔細菌叢がう蝕や歯周病だけでなく、糖尿病などの全身疾患とも関連することが分かってきた。本研究では、「良い菌叢」を維持したり「悪い菌叢」を改善する方法の開発を目指している。しかし口腔菌叢は個人ごとに異なるため、口腔菌叢のパターンによって、様々な操作に対してどのような反応を示すかを知る必要がある。2023年度は、基本歯周病前後における複数の被験者の口腔細菌叢変化を解析した。本研究では、従来のショートリードシーケンサーに加えて、将来的な活用を目指してより簡便なナノポアシーケンサーを用いた細菌叢解析の可能性を追求している。ナノポアシーケンサーは長いDNAの配列解読を特徴としており、細菌叢解析に用いる16S rRNA遺伝子の全長の解読が可能である。一塩基ごとの解読精度にはまだ課題があるものの、16S rRNAの全長を解読することで従来のショートリードシーケンサでは判別できなかった細菌種を検出できる可能性がある。2023年度にはナノポアシーケンサーを用いて健常者の口腔細菌叢を解析し、既に確立されているショートリードシーケンサーによる菌叢解析法と比較することで、ナノポアシーケンサーの有効性を検証した。 ・また本研究では、口腔細菌叢の中で個々の細菌種の働きを知るために、トランスポゾンを用いた変異株の作成を行っているが、これまで大量に作製した変異株個々のトランスポゾン挿入位置の決定に時間がかかる難点があった。そこでナノポアシーケンサーの簡便さを活用して、特定の口腔細菌種に挿入されたトランスポゾンのゲノム上での挿入位置を決定する方法の開発を目指している。2023年度は、複数の変異株をプールして全ゲノム配列を解読し、コンピュータによる計算でトランスポゾン挿入位置を決定することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・個人ごとに異なる口腔細菌叢に操作を加えたときの影響を検証するため、歯周病を有する被験者の口腔細菌叢が歯周基本治療前後でどのように変化するかをショートリードシーケンサを用いた方法で検証した。既知の歯周病原細菌が減少することを確認した。 ・本研究では、従来の次世代シーケンサーによる細菌叢解析に加えて、ナノポア型と呼ばれるより簡便なシーケンサーを用いて、様々なパターンの口腔細菌叢が刺激に対してどのように変化するかを解析する予定である。2023年度は、健常者の口腔細菌叢について、ナノポアシーケンサーによる細菌叢解析(16SリボソームRNAの配列解析)行った。従来用いられてきたショートリード型シーケンサーによる菌叢結果との相違の検証を行い、共通して検出される細菌種や、それぞれのシーケンサーで特徴的に検出される細菌種が存在することが判明した。研究の目的・検出したい細菌種に応じて、シーケンサーを使い分ける必要があることが分かった。 ・細菌叢解析から同定された個々の細菌の機能を解析する手法としてトランスポゾンを用いた突然変異体作成を進めている中で、効率よくトランスポゾン挿入位置を決定する方法の開発が課題となっていた。そこで、突然変異株をプールしゲノム配列をナノポアシーケンサーで解読することにより、複数株のトランスポゾン挿入位置を同時に特定できる系を作成した。ただし効率にまだ課題が残っており、改良する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
・引き続き、ショートリード型シーケンサーとの比較によりナノポア型シーケンサーの有効性の検証を行う。シーケンサーの種類によって検出に差が見られた細菌種について、PCR増幅に用いるプライマーの最適化によりナノポアシーケンサーで効率よく検出できるかどうかを検証する。 ・菌叢解析の手法として16SリボソームRNA配列解析は簡便であるが、PCR増幅によるバイアスが存在したり、プライマー配列とのミスマッチにより同定できない菌種が存在するなどの問題点がある。そこで、ナノポアシーケンサーを用いた口腔試料(唾液や歯間プラーク)の全メタゲノム解析系を確立する。菌叢の全ゲノム配列を解読することで、その系に存在する遺伝子パスウェイ解析も可能となる。 ・作成した口腔細菌変異株のトランスポゾン挿入位置を効率よく同定できるよう手法を改良する。具体的には、全ゲノムを解読するのではなく、トランスポゾン挿入位置付近の配列を物理的に濃縮してナノポアシーケンサーで解読する方法を確立する。これにより、口腔細菌叢における個々の細菌種の役割を検証することが容易になる。
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