研究課題/領域番号 |
21K10258
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山口 泰平 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (80230358)
|
研究分担者 |
五月女 さき子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (20325799)
有馬 一成 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (70332898)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 口腔細菌 / 血流感染 / 化学療法 / 莢膜 / 日和見感染 / 表層線毛 / 付着因子 / 病原因子 |
研究開始時の研究の概要 |
口腔常在菌による日和見感染は時として発熱性好中球減少症や心内膜炎などを引き起こす。これらの細菌は宿主の抗菌作用に抵抗性を示すことから、本研究ではその機序を明らかにすることで高リスク菌株の保菌者のスクリーニング検査方法の開発を行い、効果的な医科歯科連携による管理方法の構築を目指す。 本研究の第1の目的:血流感染の口腔常在菌の宿主による殺菌攻撃に対する抵抗機序を解析する。第2の目的:患者から採取した口腔検体を用いて高リスク菌株の保有状況について診断を行うことで高リスク者を抽出する。第3の目的:骨髄抑制を伴う易感染性の患者さんを対象として高リスク者に適した、より効果的な管理方法を構築する。
|
研究実績の概要 |
昨年の報告書に記載したが、口腔常在菌による血流感染の実態調査は終了したため、その臨床現場での対策方法を含めて論文を作成して公表した(日本口腔ケア学会雑誌 Vol.17(2):34-39. 2023)。この中で、口腔常在菌による血流感染の発症には末梢血の白血球数が500個/μL以下でリスクが上がるため、殺菌性の含嗽剤を使用していたが、その効果を細菌カウンターを用いて細菌数の変化を経時的した。この研究は鹿児島大学倫理委員会の承認を得て実施した(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 疫学等倫理委員会)。昨年度に実施した一部のデータ-については学会で報告した。(第19回 日本口腔ケア学会学術大会、第2回 国際口腔ケア学会学術大会 東京 2022年4月23日、24日)。現在論文を作成中である。 一方で口腔細菌は口腔粘膜炎を介して血流に感染するとされているが、実際には粘膜炎を発症していない症例でも口腔細菌が血液から検出されることが多い。そこで感染経路を調べるために口腔の状態との関連を分析した。その結果、歯周ポケット深さと有意な関連を示した。逆に口腔の清掃状態、歯肉からの出血のしやすさ、動揺歯の有無、高度う蝕の有無や、口腔粘膜炎との関連はなかった。これは感染が咬合やブラッシング時の一時的な歯肉からの出血ではなく、歯周ポケット深部での日常的な出血を介していることを示唆した。このため、感染予防には、できれば加療前だが、加療中でも歯周状態の改善、維持が重要であると結論できた。この成果は学会で公表の準備中である。(第21回日本口腔ケア学会学術大会/第4回国際口腔ケア学会学術大会 東京 2024年4月27日、28日)また論文公表の準備も進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床現場で発症する血流感染の状況の把握、感染した血液サンプルから分離された細菌の同定、発症時の患者の状態といった臨床的な基礎的データ、情報の把握は終了し、論文にまとめることができた。一昨年度は殺菌性の含嗽剤による効果を実施、評価することができ、これまで病室で実施してきた、血流感染の予防的な対応について一定のエビデンスを得ることができた。しかし、それまでの過程で感染経路についての疑問が浮上してきた。これまでのコンセンサスでは口腔粘膜炎を介して口腔細菌が感染するという説明がなされたきたが、実際には粘膜炎を発症していない症例でも口腔レンサ球菌の感染が見られた。そこで昨年度は歯周状態、う蝕との関連を後方視的に検討した。本研究課題全体としての進捗はやや遅れているが、着実に歩を進めており、それぞれの段階で成果をまとめて学会発表、論文による公表を行っている。 上記のように臨床的な調査はほぼ終了したため、次年度は臨床分離株、標準株を用いて細菌学的なアプロ―チを進める予定である。現在は手持ちの標準株と臨床材料(口腔のスワブ)、および分離した細菌について血液中での生存率を評価して、白血球の貪食作用に対する抵抗性を調べたところであり、初期的なデータの蓄積はほぼ終了している。
|
今後の研究の推進方策 |
上述のように、これまでは、臨床的な側面でのアプローチを主に進めてきて、各段階での公表を行った。今後、最終年度を迎え、遅延が目立つ実験室での細菌学的な基礎研究を推進する予定である。計画書に沿って主にミテイスグループレンサ球菌について研究を進める。臨床現場での性情を確認するために標準菌株だけでなく、患者材料から分離した菌株も使用する。 1)口腔分離株と血流感染株の白血球による貪食作用への抵抗性と莢膜の評価 健常なヒトや患者の口腔から採取した菌株と、感染血液から分離した菌株についてヒト血液を混合して一定時間作用させてから培養することで、殺菌の程度が判断できる。これについては口腔のサンプルを使った予備的な実験を行った。結果は予想の通り各個人の間で白血球に対する抵抗性が異なっていた。今後は抵抗性を示した菌株を分離培養して、各株について白血球に対する抵抗性因子を莢膜の有無を主として形態学的、成分分析により調べる。次に莢膜合成遺伝子の変異を調べることで、血流感染に、より関与する高リスクな遺伝子配列を持った菌株、莢膜の血清型を判定する。 2)高リスク菌株と低リスク菌株の病原性に対する莢膜の関与の検証 ミティスグループレンサ球菌の遺伝子操作の技術手法は報告がある。そこで、高低リスクの代表菌株について莢膜欠損株、高低リスク株相互の莢膜の入れ違い株、キメラ等を作成して病原性を比較する。病原性は上記の白血球による貪食作用に対する抵抗性に加えて、培養細胞への致死毒性、白血球遊走因子の分泌量、ヒトディフェンシンに対する抵抗性を評価する。いずれも確立された実験手法である。
|