研究課題/領域番号 |
21K10261
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
|
研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
今井 元 奥羽大学, 歯学部, 准教授 (90291343)
|
研究分担者 |
鈴木 礼子 奥羽大学, 歯学部, 准教授 (90333723)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | バルプロ酸 / 頭部神経堤 / 上皮間葉転換 / 頭部神経堤細胞 / Hoxa2 / Sox9 / 軸索伸長 / 顎顔面骨格 / 頭部神経堤細胞(NCC) / 第1第2鰓弓症候群(HFM) / バルプロ酸(VPA) / 原因不明の先天性奇形 / 第1第2鰓弓症候群 / 神経堤の脱上皮化 |
研究開始時の研究の概要 |
HFMは、第1第2鰓弓の発生異常により生じる先天性奇形(小下顎症や耳小骨欠損等)であり、歯科領域では唇顎口蓋裂に次いで多く、摂食障碍や伝音障碍を伴う症例も多い。しかし、その病因については、胎生期の鰓弓の血管形成の障害が有力視されているが、未だに不明である。本研究は、VPAにはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC1)が関与する遺伝子の転写抑制に対する非特異的な阻害作用があり、VPAがin vitroの研究において、神経堤の脱上皮化EMTを阻害することに着目し、『妊娠初期の遺伝子転写に作用するVPA等の薬物の服用による頭部NCCの形成と移動の攪乱が、HFMの一因である』ことを証明する研究である。
|
研究実績の概要 |
本研究は、頭部神経堤(NC)形成直前のSDラット胚にバルプロ酸(VPA)を単回投与することによって、『① 頭部神経堤の上皮間葉転換(EMT)が、どのように阻害されるのか。② 頭部神経堤細胞(NCC)の移動経路が、どのように攪乱されるのか。③脳神経の軸索ガイダンス因子(Sema3)が、どのように攪乱されるのか。④脳神経ニューロンの軸索伸長が、どのように攪乱されるのか。⑤ 顎顔面骨格に、どのような奇形を生じるのか。』などの解明を作業目標としている。①-④に関しては、①VPA投与により中脳-ロンボメア(R)1/2 NCにおいてHoxa2 mRNAの異所性発現とSox9 mRNAの発現の減少が検出され、EMTが阻害されていた。 さらに、②SNAI2陽性NCCの形成と移動が減少し、全胚培養系を用いたDiI標識細胞の追跡実験においても、中脳-R1/2 NCCは前頭鼻隆起(FNM)や第1鰓弓(Ba1)への移動が減少し、代償性にR4 NCCがFNMやBa1に移動していた。さらに、③Sema3の発現異常 と④三叉神経の軸索伸長の抑制が観察された。これらの結果は、頭部NC形成直前のVPAの単回投与は、中脳-R1/2のNCにおけるHoxa2、Sox9の発現異常を介して、中脳-R1/2のNCCの減少とR4のNCCの移動異常が起されることを示しており、これらの異常によって、三叉神経の軸索伸長の抑制が引き起されることを示唆していた。現在、上記の⑤の『上顎・下顎・舌骨・耳小骨などに、どのような奇形を生じるのか。』を解明するために、排卵時刻に個体差が殆ど生じないWistar-Imamichi (WI)ラットに系統を変え、頭部神経堤(NC)形成直前のWIラット胚にVPAを単回投与し、頭部NCCの形成と移動の撹乱した胚を胎齢12.5日、及び、20日で摘出し、顎顔面の原基と骨格の形態計測と解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
移動中の頭部神経堤細胞(CNCC)の有用なマーカーとして用いることができ、さらに、神経細胞やグリア細胞への分化運命の定まったCNCCのマーカーとしても有用であるSox10のホールマウント in situ ハイブリダイゼーション用mRNAプローブの作製に手間取ったため。
|
今後の研究の推進方策 |
作業目標①-④に関しては、既に、頭部神経堤(NC)形成直前のWistar-Imamichi (WI)ラット胚にVPA/salineを投与し、E9.5-E11.5の胎仔を摘出し、Hoxa2(後方化因子),Sox9(NCCのEMT因子),Sox10(EMT直後のNCCマーカー)のin situ ハイブリダイゼーション(WISH)を行っている。さらに、同様に薬物投与したE12.5の胎仔を摘出し、Sox10 WISHの結果に基づいて、成熟ニューロンマーカーの抗neurofilament抗体、あるいは、未熟ニューロンマーカーの抗β tubulin III 抗体を用いたE12ラット胚のホールマウント免疫染色 (WIHC)標本の詳細な観察を実施する予定である。 作業目標⑤の『上顎・下顎・舌骨・耳小骨の形成が、どのように攪乱されるのか。』に関しては、同様にVPAを投与したE12.5(軟骨形成の初期マーカー)のWIラット胎仔を摘出し、形態計測を行っており、顔面原基の形態計測と統計解析を行う。頭部NCCの形成と移動の撹乱を行った胚を妊娠20日目に摘出し、また、アルシアンブルー-アリザリンレッド染色をした透明化骨格標本を作成し、これらのサンプルの解析を進めている最中である。
|