研究課題/領域番号 |
21K10279
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
牧石 徹也 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (60898708)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 地域資源 / 地域リソース / 社会的処方 / 健康の社会的決定要因 / SDH / 健康格差 / 社会格差 |
研究開始時の研究の概要 |
社会格差(所得、地域、雇用形態、家族構成等)が健康格差につながることが明らかとなっている。その対策の一つとして、医療者が患者の生活背景に着目して必要な公的支援・地域資源等へのアクセスを積極的に促す「社会的処方」がある。しかし、本邦においては個別に取り組まれている事例はあるものの、地域において系統だった取り組みは少ないのが現状である。本研究では、「社会的処方を達成するための地域モデル」を開発する。 具体的には、患者の社会的背景について系統的に聴取する方法を開発し、利用可能な社会制度や地域資源についての情報を医療に携わる多職種間で共有し、効果的に社会的処方を実践する仕組みを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は効果的な社会的処方を実践するためのモデルシステムを構築しその普及を図るものである。具体的には、『A.患者の社会的背景について系統的に聴取する方法』を開発し、『B.医師・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカー等の多職種で利用可能な社会制度や地域資源について の情報をデータベース化』して、必要な人に必要な社会的処方を実践する効果的な仕組みを開発することを目的としている。 2021年度は、大田市の医療および福祉関係者との意見交換により、医療者が把握すべき患者の社会的背景、また円滑な社会的処方を阻む因子について、それぞれ 具体的因子の掘り起こしを行った。 2022年度は、上記Bに関して、関係者や地域住民とのミーティングを実施することにより、島根県大田医療圏における 利用可能な“地域資源”情報のリストアップを行いデータベース化した。具体的には、地域資源を①福祉、②高齢者介護、③健康増進、④医療、⑤子育て、⑥地域の繋がり、に関するものに大別し、それぞれの領域において公的なもの(行政制度等)と非公的なもの(ボランティア団体等)に分けてリストアップを行った。例えば⑤『子育て-公的なもの』では「ひとり親家庭の支援窓口(大田市役所子ども家庭支援課)や「子どもの居場所づくり事業」(まちづくりセンター)など13の'資源'が、⑤『子育て-非公的なもの』では「子ども食堂」や「放課後児童クラブ」など5つの'資源'が挙がった。このような大田医療圏でアクセス可能な'資源'をリストアップ結果、全6領域で62もの'資源'をリストアップし可視化することが出来た。 資源は利用されてこそ価値が生まれるものであるが、往々にしてどのような資源があるのかが分からない、分かりにくい、という障壁が存在する。その点で、大田医療圏における社会資源をリストアップしデータベース化できた意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度に『A. 患者の社会的背景について系統的に聴取する方法を開発』を着手したが、大田市の医療・福祉関係者と繰り返し行った議論を通じ、患者の抱える「社会的背景」は非常に多岐に渡ること、そしてそのような「社会的背景」を聴取するには当然ながら患者や患者家族の心理的障壁が存在すること、また聴取する側(医師や看護師、MSW等)にも心理的負荷がかかることが浮き彫りとなった。現場において妥当かつ有用な「系統的な聴取法」とはどんなものか、方向性を見出すことに難渋している。また、島根県下での新型コロナウイルス流行により県下の他の医療機関との打ち合わせやその他の関係者との対面でのミーディングが困難であったこともあり、研究の進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、『A. 患者の社会的背景について系統的に聴取する方法を開発』に関連して、現場において妥当かつ有用な「系統的な聴取法」とはどんなものか、関係者と対面でのミーティングを重ねて具体的方向性を見出していく。現状では、社会的処方の対象となる方の中でも、特に金銭面や生活面での中等度から重度困難事例は、担当医や看護師を通じて各医療機関の地域連携室などに所属するソーシャルワーカーや、病院外では地域包括支援センターや社会福祉協議会の担当者が、見出し、対応されている。一律に「社会的背景」といった機微な情報を聴取することの困難さを考慮すれば、そのような方々にとって使い勝手の良い形で地域の社会的処方のリソースをデータベース化したものを提供する方が良いかもしれない。ソーシャルワーカーや、病院外では地域包括支援センターや社会福祉協議会の担当者と具体的議論を進めていく。
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