研究課題/領域番号 |
21K10294
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
黒田 佑次郎 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 認知症先進医療開発センター, 主任研究員 (50538783)
|
研究分担者 |
渡部 麻衣子 自治医科大学, 医学部, 講師 (60736908)
坪野 圭介 和洋女子大学, 国際学部, 助教 (80884246)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 共同体感覚 / 社会的距離 / 行動・心理症状 / ナラティブの検証 / シチズン・サイエンス / 新型コロナウイルス感染症 / 関心の共同体 / 感染症 / 環境人文学 / ナラティブ |
研究開始時の研究の概要 |
新しい社会に求められている「他者との距離を保つ」状況下で、人々がどのように共同体感覚を構築・再構築しているのかを臨床的・人文社会学的視点から共時的分析と経時的分析(ナラティブの検証と言語態分析)を行う。COVID-19の世界的なパンデミックは、グローバル化した諸国が同時におなじ大規模災害に向き合うという、新しい局面を生み出した。現在の状況を包括的に捉えるには異なる国での人々の認識・社会活動、そして書かれたテクストがいかに類似し、いかに異なっているかを分析する必要がある。得られた成果をもとに、提言をまとめて行政機関にフィードバックするとともに、心理的支援のあり方の冊子を作成し、普及に取り組む。
|
研究実績の概要 |
本研究は、「他者との距離を保つ」状況下で、人々がどのように共同体感覚を構築・再構築している・してきたかを、臨床的・人文社会学的観点から共時的・通時的分析を行うものである。 臨床の研究では、認知症の当事者とその家族を対象に調査分析を行った。その結果、認知症の人にしばしば生じる行動・心理症状がパンデミック後に増悪し中期的にも維持していた。認知症の人はサービス利用(フォーマルケア)、家族は家族会などのインフォーマルケアを受け、その中で共同体感覚を維持している。2022年度から次第にサービス利用や家族会等も再開されているため、長期的な傾向を調べる。 社会学の研究では、シチズン・サイエンスに関する研究の対象を「郵便趣味(郵趣)」に限定した。古典的シチズン・サイエンスである「郵趣」という「関心の共同体」が、どのように展開されてきたのか、また現在展開されているのかを定性的調査によって明らかにした。今年度は国内の郵趣家4名へのインタビュー調査、及び郵趣家の集まる研究会に参加してフィールドワークを行った。郵趣の中心である切手の流通状況はデジタル・デバイスの影響を強く受けているものの、郵趣活動自体は、野外観測等を必要としないことから、遠隔会議による活動が可能であり、コロナ禍においても「関心の共同体」を大きな変化なく維持できている様子を伺うことができた。 文学の研究では、昨年度から整理を行なってきた国内外の文献をもとに、具体的なテクスト分析を行なった。一見すると現実から遠い距離にあると思われがちな、疫病を主題としたSF作品を分析することで、パンデミックがどのような想像力を喚起し、人と人の物理的・精神的な距離にどのような変化を迫っているのかを考察した。とりわけ、コロナ禍における他者との距離の変化を象徴する「食」のあり方に着目し、欧米を中心としたヴィーガニズムの隆盛など新しい現象の意味を考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、初年度に臨床・社会・文学の研究それぞれが研究計画をたて、それに基いた、臨床・社会学の調査研究、文学のテクスト分析を推進している。予定通りの臨床データを集積し、解析を進め、学会発表および論文化を行うことができた。また、初年度に行えなかった、対面でのフィールドワークとインタビュー調査等の社会調査も再開することができた。文学の研究においても、学会発表と論文発表を行うことができたため、概ね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
共時的文脈の解明(臨床)では、COVID-19に関する社会調査を、共同体感覚の観点から行っている。三年目には、継続して認知症の人とその家族を対象とした調査研究を行い、中長期的な影響を評価する。得られた成果を学会派票・論文化するとともに、国内外の共同研究者・保健医療従事者にセミナー等を通じて、フィードバックを行う。
通時的文脈の解明(社会学)では、インタビュー調査とフィールドワークを重ね、コロナ禍における「シチズン・サイエンスとしての郵趣」の実態を明らかにすることで、「関心の共有」によって共同体感覚を維持する一事例を提示する。得られた結果を、学術論文にまとめて発表する他、「地縁血縁に基づく共同体が失われる経験における科学活動の意義」として提言にまとめ、各国の市民科学活動および行政機関にフィードバックする。
通時的文脈の解明(文学)では、世界各国で紡がれてきた災害・疫病に関する文学作品を、現在的な視点から分析する。三年目には、これまでに世界文学論やエコクリティシズムの観点から疫病流行時・災害時のテクストを分析してきた成果を踏まえ、国内外の研究者と連携し、また臨床研究と社会学の分野で得られた知見と統合をはかりながら、環境と人間の関わりについて文学的想像力を活かした提言のかたちにまとめる。
|