研究課題/領域番号 |
21K10311
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井澤 美苗 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 研究員 (10338006)
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研究分担者 |
青森 達 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (40620802)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ノセボ効果 / カフェイン / 主観的評価 / 5-HTT / COMT / コレシストキニン / 脳前頭前野背外側部活動 / 脳内神経伝達物質 / パーソナリティ / セトロニントランスポーター遺伝子多型 / COMT遺伝子多型 / NIRS |
研究開始時の研究の概要 |
プラセボを服用した際、被験者に起こる有害な事象をノセボ効果という。薬剤の効果を最大限に引き出す重要な要因の一つにプラセボ効果がある一方、服薬指導などで副作用情報を提示させることで薬物治療に対する不安感が募り、副作用を必要以上に引き出してしまうことがある。ノセボ効果は薬物治療を左右する重要な要素でもある。本研究ではノセボ効果のメカニズムを解明する。また、医薬品などを投与する際、副作用を説明することでノセボ効果がどのように現れるのかを検討し、更にノセボ効果の現れやすさをパーソナリティや遺伝子多型の違いから明らかにし、個別薬物療法を構築するのが最終的に到達する目標である。
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研究実績の概要 |
Noceboとは「有害な反応への怖れ」(I will harm.)を意味しており、治療効果に影響を及ぼす副作用に関連する。Nocebo効果は「予期・暗示」によって引き起こされ、副作用を実感した過去の経験などによる「条件付け」によって発現強度は増加する。これまで我々はplacebo効果について臨床研究を行ってきた。Placebo効果は治療効果に対する「期待」や治療効果を実感した過去の「経験」などによる「条件付け」で治療効果が高まる心理的な現象である。脳前頭前野背外側部の活動に関与しているといわれ、その活動を光トポグラフィー(NIRS)検査によって非侵襲的に測定した。また、dopamineをはじめとする脳内化学伝達物質の遺伝子多型により placebo responderとnon-responderを区別した。 Placebo効果とnocebo効果は、どちらも医薬品などの効果や副作用に対する心理的な要因によって引き起こされる現象である。Nocebo効果の起こりやすさは、placebo効果と同様に、脳内化学伝達物質の遺伝子多型と関連していることが十分考えられる。また、NIRS検査により脳前頭前野背外側部の活動を測定し、脳科学的なアプローチからnocebo効果のメカニズムの解明を追求できる。ノセボ効果の臨床研究は、倫理的配慮の側面から報告が少ない。しかし、ノセボ効果の発現を最小化することは、副作用の発現を抑えることに寄与し、薬物治療に役立つ可能性が高い。ノセボ効果の臨床研究を実施するニーズは大きいと考えた。倫理的側面から安全性にできるだけ考慮し、医薬品ではなく、食品であるコーヒーを使用することとした。コーヒーに含まれるカフェインについて、ネガティヴな説明を施すことで、副作用を引き起こす可能性について臨床研究を実施し、検証する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度、2021年度と Covid19の影響があり、臨床研究ができない状況であった。2021年度に薬剤師を対象に、ノセボ効果の認知度及び服薬指導時にノセボ効果をどの程度考慮しているのかを明らかにするためにアンケート調査を実施した。ノセボ効果という用語は薬剤師に広く認知されているとは言い難いが、ノセボ効果という現象を意識し服薬指導に活用している薬剤師は多かった。服薬指導時に行う副作用説明の仕方を気をつけているかの質問には、多くの薬剤師で患者の不安を軽減することとの回答を得た。アンケート調査から、不安はノセボ効果を引き起こす可能性があり、服薬説明の仕方によっては副作用の発現を抑えることができ、薬物治療に役立つ可能性が高いことがわかった。 2022年度の秋から、Covid19の流行が収束し始め、臨床研究を実施することができた。カフェインの副作用である動悸・胃部不快感について説明を受ける群(説明群)と受けない群(非説明群)に無作為に割り付け、全員にカフェインを含むコーヒーを摂取させた。主観的評価項目の動悸においては説明群の方にノセボ効果が大きい傾向にあった。不安度については、コーヒーのリラックス効果を受け両群とも不安度が下がる結果となったが、説明群の方が低下の割合は低く、副作用説明の影響を受けた可能性がある。客観的評価項目のNIRSや遺伝子多型などについては解析中である。被験者は説明群22例、非説明群21例と少ないため、今後は臨床研究を推し進め、被験者を増やしてさらに検討する。
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今後の研究の推進方策 |
被験者数をさらに増やし(予定数120例)、臨床研究を実施する。カフェインの副作用である動悸・胃部不快感の評価、副作用説明による不安度の評価に加え、被験者の不安に対するパーソナリティや脳内化学伝達物質の遺伝子多型からノセボ効果の発現のしやすさについて探索的に解析をする。
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