研究課題/領域番号 |
21K10326
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 みさお 京都大学, iPS細胞研究所, 特定教授 (50396701)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | iPS細胞 / 再生医療 / ヒト胚 / 生命倫理学 / 質問紙調査 |
研究開始時の研究の概要 |
日本では再生医療の経済産業化を目指した規制の確立が進み、ヒト細胞を用いた臨床試験は急速な発展を遂げた。一方、治療(自由診療)と基礎研究(ヒト胚研究)ついても規制の策定及び改正は議論されているが、その問題について社会で十分共有されているとは言えず、建設的な議論に資する事実ベースの調査も数少ない。そこで、(A)自由診療で提供されている細胞治療の説明文書分析、(B)一般市民を対象にした細胞治療に関するKAP(Knowledge, Attitudes and Practices)調査、(C)ヒト胚を用いた基礎研究に関する一般市民の意識調査、を実施する。
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研究実績の概要 |
(A)自由診療で提供されている細胞治療の分析:再生医療等安全性確保法は再生医療の安全性を本当に確保しているのか、という問いを検証するために、ウェブ上で公開されている文書を元に調査を行った。具体的には、再生医療法下で提供される再生医療(治療)と薬機法下で承認された再生医療等製品の2019年度と2020年度における有害事象の報告件数を推計して分析した。その結果、前者ではおよそ10万回の細胞投与に対して10件未満、後者ではおよそ3、4回の投与に対して1件の有害事象が報告されていることが分かった。再生医療法に基づく再生医療(治療)の有害事象が著しく少なく、報告が適切になされていない可能性を指摘、同法の改正では有害事象報告の体制を見直し、改善する必要があると提言し、国立がん研究センター及び静岡社会健康医学大学院大学との共同研究として、Stem Cell Reportsに論文を掲載した。 (B)細胞治療に関するKAP調査:ヒト細胞を用いた治療に関する一般市民の認知度、関心、受療行動を明らかにすることを目的に、R5年度は質問紙の作成に着手した。 (C)ヒト胚を用いた基礎研究に関する意識調査:一般市民4,424名と日本ゲノム編集学会に所属する研究者98名を対象にインターネット調査を実施したところ、一般市民の45.8%が生まれてくる子の遺伝子を改変するゲノム編集を「いかなる目的でも認められない」と回答し、半数以上が疾患治療目的のゲノム編集であっても抵抗を示した。科学者は一般市民より寛容な傾向があった。今後、この技術の利用について社会で議論していくにあたり、専門家にとって自明的な価値観を議論の前提とするのではなく、多様なステイクホルダーの価値観に配慮した丁寧な議論の進め方を模索する必要があるとFronteir in Genomics で論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)自由診療で提供されている細胞治療の分析:当初計画した調査はすべて終了し、有害事象報告の体制に関する新たなテーマに取り組み、国際誌に論文を出版するに至った。 (B)細胞治療に関するKAP調査:質問紙調査の実施には至らなかったものの、質問紙の作成に着手することができた。 (C)ヒト胚を用いた基礎研究に関する意識調査:当初の予定通り、R5年度末までに論文執筆と投稿を済ませ、国際誌に2本の論文として掲載されるに至った。
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今後の研究の推進方策 |
(A)自由診療で提供されている細胞治療の分析:当初の計画はすでに達成した。 (B)細胞治療に関するKAP調査:R6年度末までに質問紙の作成と実施を目指す。質問項目としては、細胞を用いた臨床試験の進捗やエビデンスのない細胞治療に関する認知度、研究と治療の区別に関する理解度、細胞治療への関心、受療行動の有無、動機等を想定している。 (C)ヒト胚を用いた基礎研究に関する意識調査:当初の計画はすでに達成した。
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