研究課題/領域番号 |
21K10351
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
赤池 雅史 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (90271080)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 診療参加型臨床実習 / 汎用的能力 / クリニカルクラークシップ |
研究開始時の研究の概要 |
診療参加型臨床実習(クリニカル・クラークシップ)において学生が診療チームの一員として活動するために、医療面接、身体診察、基本的臨床手技、症例プレゼンテーション、診療録記載等の具体的な技能・手技の臨床実習前教育が行われているが、その基盤として先に修得すべきである汎用的能力とそのための教育プログラムについては十分検討されていない。本研究では医学生、指導教員、多職種の診療チームメンバーを対象として、臨床実習学生の診療参加における問題事例を収集して、診療参加型臨床実習を行うために必要な汎用的能力を明らかとし、教養教育ならびに基礎医学教育と臨床実習準備教育が一体となった教育プログラムの開発につなげる。
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研究実績の概要 |
本研究では、臨床実習学生が診療参加型臨床実習を行うための基盤となる汎用的能力について何が不十分であるか、さらにその状況を踏まえて医学教育をどのように進めるべきかということを学術的「問い」として設定している。令和4年度は、前年度に引き続き、必要とされる汎用的能力を明らかにするために、学内必修の診療参加型臨床実習の履修を修了した5年次を対象として、担当患者の診察、診療録記載、指導医へのコンサルテーション、診療チームへの参加、カンファレンスでの症例提示等の診療参加において、無記名の自己評価アンケート調査を実施した。さらに、すべての診療参加型臨床実習の履修を修了した6年次を対象として、卒業時コンピテンス・コンピテンシーの達成レベルにつき自己評価を実施した。診療参加型臨床実習における学生の自己評価(1~5点)では、病歴聴取3.13点、身体診察3.08点、診療録記載2.95点、症例提示3.19点、診療手技3.16点、診療チームへの参加3.31点であり、前年度と同様に診療録記載の評価が最も低かった。また、自由記載では、記載例の76.2%が専門的知識・技能に関するもので、汎用的能力に関連するものは12.5%しかなかったが、診療力記載、コミュニケーション、プレゼンテーション、ディスカッションがあげられていた。卒業時コンピテンス・コンピテンシーの達成レベルについては、前年度と同様に、医療経済・政策・保険診療の理解と保健・医療・福祉・介護および行政等との連携協力、適切な統計手法の選択と解析、国際的コミュニケーションや英語を用いた情報の入手・理解・発信が他の項目よりも低かった。これらの結果から、現在の臨床実習学生においては、コミュニケーション力・協働力、文章力、プレゼンテーション力、ディスカッション力、国際力等の向上が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では研究期間内に、1)診療参加型臨床実習を行う上での臨床実習学生の問題事例の収集・分析、2)臨床実習学生に求められる汎用的能力の解明、3)教養教育、基礎医学教育における新たな教育プログラムの導入とその検証を行う計画である。令和4年度は、研究計画通り、診療参加型臨床実習の履修経験のある医学生を対象として、担当患者の診察、臨床推論、診療録記載、指導医へのコンサルテーション、メディカルスタッフとのコミュニケ―ション、カンファレンスでの症例提示等の診療参加において、自記式質問用紙を用いた無記名のアンケート調査を行うことができ、これらの調査では、現在の臨床実習学生が修得しているコミュニケーションスキル、協働力、文章力、プレゼンテーション力、数量的スキル、情報リテラシー、論理的思考力、問題解決力、メタ学習能力等の汎用的能力のレベルについてデータを収集することができた。得られたデータの解析により、現在の臨床実習学生においては、コミュニケーション力・協働力、文章力、プレゼンテーション力、ディスカッション力、国際力等の向上が必要であることを示すことができた。これらの結果をもとに、今後の計画である、指導医やメディカルスタッフを対象とした調査・情報収集について、準備を整えることができた。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、診療参加型臨床実習を履修した学生を対象として、引き続きデータ収集を行うとともに、指導医・看護師等のメディカルスタッフを対象とした情報収集も行い、そのデータ分析を進めることで、臨床実習学生に求められる汎用的能力をさらに明らかとする。また、アンケートから得られたデータをもとにカテゴリー分類を行い、臨床実習学生の到達度が低いコンピテンシーを明確化して、それと関連性が強い汎用的能力を抽出する。さらに、指導医・看護師等からも情報収集を行う。自由記載やテキスト情報については、質的分析の手法を用いて、臨床実習学生が臨床実習で必要としている汎用的能力を抽出する。ただし、現在はCOVID-19感染症流行の影響により、臨床実習における学生の診療参加が大幅に制限されているため、その状況を考慮しながら研究を進める。これらによって、令和5年度以降には、医学科学生のみが履修し医学科教員が担当している教養教育科目、基礎医学系実験科目および研究室配属において、各アウトカムと汎用的能力との関係を明確化したカリキュラムチェックリストを作成し、臨床実習学生に必要な汎用的能力との関連性が強い科目については、汎用的能力の修得と評価に適した双方向型教育、グループワーク、体験型学修、ポートフォリオ評価等の導入を推進する。この新たな教育プログラムを履修した学年が、学内での診療参加型臨床実習を修了する時点で同様の調査を行い、診療参加型臨床実習の改善に繋がっているか否かを検証する。
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