研究課題/領域番号 |
21K10354
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 東北公益文科大学 |
研究代表者 |
鎌田 剛 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50438595)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 社会連携 / 地域包括ケアシステム / 嚥下食 / 食支援 / 医療連携 / 多職種連携 / 市民啓発 / 創造的摩擦 / 共通価値 / 知識経営 |
研究開始時の研究の概要 |
少子高齢化・人口減時代におけるヘルスケアシステムは、地域包括ケアシステムや保健医療2035が示すように、当該分野のアクターだけでなく、複数異分野の参画により形成される。そこで本研究では、医療連携・多職種連携に続く“第三の連携”としての「社会連携」のメカニズムを明らかにする。
具体的には、医療・介護の分野に加え、企業・NPO・ボランティア、地域住民等の多様な主体が参画し、それぞれ単独では成し遂げることが困難な解決策を生み出していく過程、アクターの思考・行動様式、促進要件・環境条件等を整理し、次代のヘルスケアシステム構築に向け、理論的・実務的示唆を実証的に導出し、提案するものである。
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研究実績の概要 |
研究3年目にあたる当年度においては、これまでに重ねた事例調査の分析から、医療と異分野による「社会連携」の鍵を、以下の含意として整理することができた。すなわち、(1)医療側の異分野へのアウトリーチ、(2)解決よりも対話の重視、(3)リーダーのコミットメント、(4)共通価値の抽出、(5)中長期的なゴール設定、(6)アクターを支える所属組織の理念、(7)摩擦・葛藤の乗り越え、(8)越境する学習、そして、これらの成果としての(9)両分野における新たな価値創出である。そこで上記について、全5回の学会ならびに科研費研究集会において発表を行った。これにより第三者からの批判的吟味を受けることができ、論文作成に向け意義深い機会となった。
【学会】(1)第14回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(企画シンポジウム)、(2)第25回日本医療マネジメント学会学術総会、(3)第4回日本緩和医療学会東北支部学術集会(招待講演) 【研究集会】(1)第2回 NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク全国の集いin名古屋2023,鶴岡プレ大会(団体との共済)、(2)NPO法人全国連携室ネットワーク第7回社会連携フォーラム(団体との共済)
また事例の調査についても継続的に実施したすることができた。定期調査を行っている宮崎県立日南病院における市民との連携事例、行政と市民が医療福祉分野と連携する「いきてゆくフェス2023」(豊中市)をはじめとし、アジェンダ山形、ケアホームカナン、いっぷくオレンジカフェ(左記3事例は所属校近接の山形県内)などの社会連携事例を調査した。さらに上記の研究集会(2)においては、オンライン事例報告者(熊本の谷田病院、香川の造田歯科診療所)から、医療が地域社会にアウトリーチしていく際の要件について、示唆深いデータを得ることができた。今後の論文作成に活かしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの調査から得られた発見事項と含意について、精力的に発表機会を設けた一方で、事例の現地調査については、当初計画の回数・期間を完遂することができなかった。業務多忙と所属機関の異動が重なり、日程確保に困難を極めたことがその理由である。また、当年度に限らず、申請時点で予定していた調査対象事例で、まだ未訪問の現場もあることから、総合的に判断し、遅れているものと自己評価した。
なお、事例調査の遅れについては、研究初年度と2年目のコロナ禍が、現在までの進捗に大きく影響していることを添えておく。当時オンライン調査として代替手段は講じたものの、ケーススタディの強みである現地調査での「観察」ができず、今後補完的な調査を要する状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
全体的な進捗は遅れているものの、多数の事例調査と、その成果発表により批判的吟味の過程を経たことで、論文執筆に向け、実施すべき内容はきわめて明確になっている。第一に、追加的な現地調査による含意の理論的追試である。これまでに得られた含意を別の事例で検証することで、信頼性・妥当性を一層高めていきたい。第二に「社会連携」の理論背景の精緻化である。これまでの発表機会において、社会連携は「社会的な知の共創過程ではないか」との指摘があった。本研究には、単に異分野のアクターをどう巻き込むかの議論を超える、学術的提案が求められていることを再認識できた機会であった。そこで、さらなる文献レビューと他研究者等とのディスカッションを今後も進めていきたい。
本研究の集大成としての論文は、医療と異分野による連携を題材とし、「知の社会的共創モデル」を理論的含意とする。次に、実務的含意として、(1)社会連携の過程を説明するプロセスモデル、(2)関係者の思考・行動パターンを説明するアクターモデル、(3)それらの促進要件を説明するファクターモデルを提案する。補助期間の最終年度として、学術・社会の両側面に貢献する研究成果として仕上げていく計画である。
なお、今年度実施した他研究者との研究打ち合わせから、上記論文の内容も含めて、医療現場の連携を学術的に吟味する共著執筆のプロジェクトが立ち上がった。令和6年度後半には着手する予定であり、次期科研費の申請も視野に入れ、今後計画的に進めていくものである。
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