研究課題/領域番号 |
21K10422
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
人見 敏明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (90405275)
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研究分担者 |
高田 礼子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (30321897)
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90081661)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 小児 / 無機ヒ素 / マンガン / BBBバリアー障害 / 認知発達期脳障害 / 認知発達機能障害 |
研究開始時の研究の概要 |
WHOは無機ヒ素(iAs)暴露による小児の認知発達障害に警鐘を鳴らしている。さらに、マンガン(Mn)暴露が加わる実態も確認され、iAsとMnによる毒性の相互作用の検証が必要であるが、有効かつ迅速な実験的検証方法が確立されていない。本研究では、動物実験に替わる血液脳関門(Blood Brain Barrier: BBB)構造をモデル化したin vitro実験法での脳神経細胞障害短期評価システムを用いて、iAsとMnとの複合暴露によるBBB構造や脳神経細胞の障害における相互作用を解明する。さらに、小児の認知発達障害のみならず成人の認知機能障害における予防医療にも寄与する研究成果の獲得を目指す。
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研究実績の概要 |
自然界に存在する無機ヒ素(iAs)による飲料水汚染からアジアや中南米諸国では大規模な慢性ヒ素中毒が発生し、小児の認知能力の障害や成人における認知機能障害も顕在化している。そして、非ヒ素汚染地域においても米からのiAs摂取による小児の認知能力の障害が問題となっている。一方、慢性ヒ素中毒の発生地域では飲料水のiAs汚染にマンガン(Mn)が共存する複合暴露が存在する。従来より、Mnの過剰暴露からの小児の認知機能や運動障害、また、成人でも運動機能障害、パーキンソン病が知られている。しかし、疫学調査から示唆されるiAs、MnおよびiAsとMnの複合暴露からの脳機能障害について実験的な証明はなされていない。 我々は、iAs暴露による認知能力への影響や認知機能障害は、最初に血液脳関門(Blood Brain Barrier: BBB)のタイトジャンクション(TJ)傷害が発生し、BBBを透過したiAsやその代謝物によりグリア細胞そして神経細胞が段階的に傷害される作用機序を考えている。一方、MnはiAsより脳組織に移行する可能性が高いが、BBBのTJに対する詳細な機序は不明であり、さらに、iAsとMnの複合暴露条件下における情報は得られていない。 本研究の目的は、ヒトの BBBの構造を模範したrat in vitro BBBシステムを用い、iAs、MnおよびiAsとMnの複合暴露条件下におけるBBBのTJ障害についてtransepithelial electrical resistance(TEER)値を主体として検証を行った。本研究から、iAs暴露後のBBBのTJ傷害はTEER値の測定から明確に評価でき、濃度依存的にTJ傷害が発現した。これに対して、MnはBBBのTJ傷害を発現しないことを確認した。しかし、iAsとMnの複合暴露条件下ではiAs単独暴露より強いTJ傷害の発現を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度の研究計画においては、iAs、MnおよびiAsとMnの複合暴露からBBBのTJ傷害を酸化ストレス応答との関連性をNrf2やHO-1から評価する試みを予定した。しかし、Nrf2のWB法での測定において抗体反応に問題が山積し、その原因の一つとしてrat in vitro BBBシステムを構築しているラットの脳初代培養細胞との感受性が影響したと考えられ、種々の検討から、おおくの時間を要したが問題の解決に至った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにiAs、MnおよびiAsとMnの複合暴露からBBBのTJ傷害について、iAsやiAsとMnの複合暴露ではTJ傷害が明確に発現することから、小児の認知能力の障害や成人での認知機能障害の発生は実験的検証として初期段階を達成した。今後の研究では、rat in vitro BBBシステムでの検討で得られた実験結果を基に、ラットおよびヒトの神経細胞モデルを用いて、炎症性サイトカインと神経細胞との障害の関係を解明する。これらの研究成果は、現代社会で問題化している小児の認知能力の障害や成人での認知機能障害に対して学術的貢献をなすと考えている。
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