研究課題/領域番号 |
21K10433
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 神戸市健康科学研究所 |
研究代表者 |
岩本 朋忠 神戸市健康科学研究所, その他部局等, 所長 (70416402)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 結核菌ゲノム / ゲノム系統樹 / クラスター形成 / 遺伝系統 / 結核菌 / 全ゲノム解析 / 比較ゲノム / 分子疫学 / 遺伝系統解析 / VNTR遺伝型別 / ゲノム / ゲノムワイド関連解析 / 結核分子疫学 / 遺伝マーカ |
研究開始時の研究の概要 |
結核には、集団発生にみられるように感染後速やかに発症するものと、高齢者結核において顕著である長期間潜伏感染したのちに発症するものがある。我々は、この発病様式の違いには、感染した結核菌の個性(感染性・毒力・免疫回避性)が影響していると推定した。 本研究は、結核感染後の発病様式(長期休眠/感染伝播)と強く関連する塩基配列(遺伝子または遺伝子変異)の存在を検証し、結核対策に活用できる遺伝マーカーを見出そうとするものである。
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研究実績の概要 |
世界的な結核菌ゲノム情報の蓄積により、結核菌亜系統分類は、より詳細かつ高精度になった。本研究では、結核菌のゲノム情報に基づく亜系統分類、ゲノムクラスターを指標とした感染伝播、および患者背景(年齢、性別、出生国)を包括的に解析し、「菌側の因子は結核菌感染後の発病様式に影響を及ぼすのか?すなわち、長期休眠指向型の菌株と感染伝播指向型の菌株が存在するか」という学問的「問い」への解を求めるものである。 長期休眠指向型の菌株と感染伝播指向型の菌株が存在するのであれば、前者はクラスター形成しない高齢者(75歳以上)に、後者は、クラスター形成群に顕著に出現するという仮説のもと、地域内のほぼすべての結核患者分離株をカバーするサンプルセットを用いて、菌側因子の影響を亜系統分類と感染伝播頻度で検証している。現在までの解析により、北京型株祖先型の亜系統群の一つであるL2.2.Aが75歳以上の高齢者で有意に多く、クラスター形成率は低く、なおかつ、ゲノム系統樹上での末端枝長が長いという「長期休眠指向型」の特徴を持つことが分かった。一方で、後期高齢者(75歳以上)と非高齢者(65歳未満)に広く分布し、かつ、クラスター形成率が有意に高い亜系統群の存在が見いだされている。世代を超えた感染伝播を反映していることから、感染後速やかに発病する傾向が高い、すなわち「感染伝播指向型」の遺伝系統を示唆しているものと思われる。今後、さらに、クラスター形成菌株群を精査することにより、感染伝播指向型の亜系統群の存在を追求したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症対応業務の負荷が大きく、分離菌株のゲノム解析が遅延したため。
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今後の研究の推進方策 |
地域内で分離された結核菌のゲノム情報の集積を進め、より大規模なサンプルセットでの比較ゲノム解析を行う。これにより、精密な亜系統分類が可能になり、遺伝的背景の違いがもたらす発病様式の違いを解明できるものと期待している。
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