研究課題/領域番号 |
21K10458
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58030:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
野原 正一郎 久留米大学, 医学部, 助教 (20647812)
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研究分担者 |
石井 一夫 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 教授 (60449238)
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研究期間 (年度) |
2022-11-15 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 心毒性 / 抗がん剤 / ビッグデータ / 心不全 / 医療用ビッグデータ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は医療用ビッグデータを用いて、本邦における抗がん剤治療後の心血管疾患の実態について明らかにする。メディカル・データ・ビジョン(MDV)が保有するデータベースを用いて解析を行う。登録病院は国内291施設、患者数は1785万人で、うち2008年4月~2017年1月に抗がん剤が投与されたがん患者190645名を対象とした。 まず、全患者のデータ抽出とデータベースの構築を行い、病名や背景因子、併存疾患の抽出を行う。 心血管疾患(心不全、静脈血栓症、虚血性心疾患、不整脈、心膜炎、高血圧症)の発症率と生存率、リスク因子の同定を行う。また、機械学習による決定木解析を行い、リスク構造を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は医療用ビッグデータを用いて、本邦における抗がん剤治療後の心血管疾患の実態について明らかにすることである。メディカル・データ・ビジョ ン(MDV)社が保有するデータベースを用いて、2008年4月~2017年1月までに抗がん剤が投与された190,645名を抽出し、1)がんの疑い病名、2)2008年4月以前に抗がん剤投与歴のあるもの、3)観察期間内に抗がん剤投与が確認されなかったもの、4)18歳未満を除外した結果、最終的に140,327名が解析対象患者となった。 本研究では初回抗がん剤投与日をエントリー日と定義し、ベースラインの背景因子の抽出を行った。平均年齢は69歳、男性59%、併存疾患は高血圧症40%、虚血性心疾患14%、心房細動6%、糖尿病30%であった。 次に観察期間内の抗がん剤投与後の心不全発症率を評価したところ4%(5,093名)であった。多変量解析では、高齢、虚血性心疾患や心房細動、高血圧症といった心血管疾患、及び糖尿病、脂質異常症が心不全発症と有意に関連していた。機械学習による決定木分析では、これらのリスク因子は年齢別に異なる複雑なリスク構造を構築していた。 次に心不全以外の心血管疾患について検討を行ったところ、観察期間内の発症率は高血圧症3.6%、肺血栓塞栓症/静脈血栓症2.4%、心房細動/心房粗動1.6%、急性心筋梗塞0.5%、安定狭心症2.9%、心室性不整脈0.5%、心膜炎0.2%であった。カプランマイヤー生存曲線では、肺血栓塞栓症/静脈血栓症、心房細動/心房粗動、急性心筋梗塞、心室性不整脈、心膜炎では発症群は非発症群と比較し有意に生存率が低く、安定狭心症では2群間では有意差は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ビッグデータの抽出作業には膨大な時間を要する。更に得られた情報を確認後、追加のデータ抽出が必要となる場合もある。研究分担者の異動に伴い、この行程に時間を要するようになったため、Web会議を頻回に行い、研究をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は心不全発症群における予後の解析を行う。また、抗がん剤投与前に心不全の既往を有した群と、抗がん剤投与後に心不全を発症した群についての比較検討を行う。 次に心不全以外の心血管疾患(肺血栓塞栓症/静脈血栓症・心房細動/心房粗動・急性心筋梗塞・安定狭心症)における発症リスク因子の解析を行う。 肺血栓塞栓症/静脈血栓症について抗凝固薬の投与状況と投与の有無での予後について比較検討を行う。また、虚血性心疾患(急性心筋梗塞・安定狭心症)に関して、抗血小板薬の投与状況、カテーテル検査・治療状況について検討を行う。それぞれの疾患群において、出血性併存症(脳出血、消化管出血)について検討を行う。
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