研究課題/領域番号 |
21K10460
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58030:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない
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研究機関 | 九州看護福祉大学 |
研究代表者 |
篠原 昭二 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 教授 (50141510)
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研究分担者 |
和辻 直 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 教授 (60220969)
斉藤 宗則 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (90399080)
内田 匠治 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 講師 (90714585)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 経穴の使用頻度 / 経脈病証 / 臓腑病証 / 経筋病証 / 主治症 / 黄帝明堂経輯校 / デルファイ法 / 経穴の主治病症 / 臓腑病・経脈病・経筋病・精神症状 / ICD-11 / 鍼灸 / 経穴 / 経絡現象 |
研究開始時の研究の概要 |
2019年5月にWHOのICD-11に伝統医学の章が新たに加わり、日本の鍼灸が重視する経脈病証も収録された。しかし、その内容は古く、実地臨床とも乖離する部分が少なくない。そこで、①日本の鍼灸臨床に即した形で経脈病証を確立する。さらに、②古典文献に記述された経穴の主治病症を基にして経脈病証を再構築する。また、現在経穴は361穴あるが、どんな経穴がどの程度臨床に用いられているのかは不明である。そこで、③日本の鍼灸臨床における経穴の使用頻度についてアンケート調査を行い、その実態を明らかにする、さらに、④経絡を介した治効メカニズムが関与したと考えられる経絡現象に関する臨床知見を集約する。
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研究実績の概要 |
令和3年度に行った二つの研究は、361穴の経穴の使用頻度に関する分析作業であり、その成果は(公社)全日本鍼灸学会および(一社)日本統合医療学会において報告するとともに、九州看護福祉大学の内田匠治講師により現在論文を作成して投稿準備中である。また、経脈病証に関する調査研究では、一次研究は経絡治療学会および日本伝統鍼灸学会会員を対象としたアンケート調査を行い、二次調査として日本伝統鍼灸学会会員のうち伝統的な鍼灸臨床を実践する専門家集団とされる役員及び関連研究団体のメンバー(賛助会員)を対象として調査を行い、令和4年度においてその成果について分析作業を行った。その結果については現在、明治国際医療大学の和辻直教授が中心となって取り纏め中であり、令和5年全日本鍼灸学会で発表したのち、論文化する準備を進めている。本研究は、ICD-11において新たに収載された経脈病証が、字数制限のために『霊枢』経脈篇のダイジェスト版であるのに対して、現代の日本の鍼灸臨床家が日々実践して活用している経脈病証を明らかにする研究であり、臨床的な価値が高いと考えている。 令和4年度において並行して進めてきた研究は、『黄帝明堂経輯校』に記述された経穴のうち、手足の要穴とされる五行穴、原穴、ゲキ穴、絡穴に注目して、これらの主治症を臓腑病、経脈病、経筋病等に関する病症に区分して整理する作業を行った。用字は古代漢語であることから、現代文での解釈は困難を極めたが、十二経脈について整理作業を終了し、現在はまとめ作業の段階である。本研究は、経穴が治療可能とされる症状が羅列されていたものを臓腑病、経脈病、経筋病に関する症状に新たに区分して網羅するものであり、臨床家が経験則として実践する内容と、古来から文献的に伝承されてきたものを比較検討する貴重な材料としての意義がある。現在、研究協力者の斉藤宗則先生が主たる作業を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ対策の影響で対面式での検討作業がほとんど出来なかったことから、大半の作業がZOOM会議形式での作業となった。したがって、十分なディスカッションは行い得なかったが、当初の目的は十分達成しているものと考えられる。 また、日本の伝統鍼灸臨床家を対象とした経穴を用いて治療可能な経脈病証に関する一次調査については、症状が500項目以上という膨大なボリュームに昇る調査研究であったことから、回収率が極めて低かったことが残念ではあるが、集約された結果は当初の意図を十分に満足させる内容であった。そこで、それらの内容を踏まえた上で、日本の伝統鍼灸臨床を実践する専門家集団とされる経験豊富な臨床家を対象としたデルファイ法における二次調査を実施して回答を得たことから、本邦における実践的な経脈病証を示し、ICD-11の経脈病証と異なる意義を持つことになり一定の成果を得たと考えている。 また、経穴には期待しうる臨床効果を主治症として古来より伝承されてきた。しかし、それらの記述は煩雑であること、古代漢語で記述されており現代語での解釈が難しいこと、膨大な量に昇ることなどから、ごく一部が用いられるのみで、ほとんどが埋没した状態であった。本研究では、この点に注目して、経穴の主治症から治療可能な経脈病証を構築することが出来ないかどうか注目して、臓腑病、経脈病、経筋病という新しい観点からの整理作業を通して、代表的な要穴について基礎作業を完了した段階である。その成果は早急にまとめて斯界に広く普及する予定であるが、現代の臨床家が経験則に基づいて実践的に運用してる経脈病証と同類の分類原則に基づいて整理した点が、特徴と言える。現在では、これら2種類の全く比較・検討されてこなかった経脈病証を考察する手がかりについて、両者を比較検討する端緒を提供し得た段階にある。令和5年度の研究内容は、この問題について取り上げる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題名「ICD-11収載の経脈病証の再構築および経穴の使用頻度、経絡現象に関する研究」に記述した如く、計画段階においては、①経脈に所属する経穴361穴がどの程度臨床で用いられているのかという、いまだかつて明らかにされてこなかった課題について、その実態について分析を進めてきた。そして、②ICD-11に収載された経脈病証が現状の日本の鍼灸臨床では不十分な内容しか示していないことから、本邦における伝統鍼灸臨床家が経験的に有している臨床知から見た経脈病証を明らかにすることを目的として、アンケート形式による調査研究を実施した。さらに、③『黄帝明堂経輯校』に記述された経穴の主治症(こういう病症が治療可能である)を、臓腑病、経脈病、経筋病という3つのカテゴリーに分別して整理するという新しい分析方法を用いて整理することによって、理解を深めやすくする配慮を行った。 一方、研究課題において掲げた内容には、「経絡現象に関する研究」が含まれている。これは、ある経穴を用いた際に特異的効果を得られたベストケースを集約することによって、経脈病証に迫ることが出来るのではないかと考えた次第である。しかし、ここでは大きな問題点が明らかとなった。それは、(1)1穴の治療効果を明らかにしうるような臨床が実践されていないこと、(2)症状と関連する疾患や愁訴に関する病態把握が難いこと、(3)鍼灸臨床では刺激の方法が補瀉や電気刺激、灸治療などの温熱刺激など多彩に渡ること、(4)効果判定の方法が定量的に行うことが困難であり、定性的な評価に堕しやすい事などが問題と考えられた。 そこで、②これまでに行ってきた臨床家を対象とした臨床知に基づく経脈病証と、③医古文である『黄帝明堂経輯校』から導き出された経脈病証とを比較分析することによって、本邦における経脈病証を確立することを、令和5年度の研究内容としたいと考えている。
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