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筋損傷マーカーおよび体液調節因子の解析による致死的低体温症の新たな評価基準の確立

研究課題

研究課題/領域番号 21K10535
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分58040:法医学関連
研究機関金沢医科大学

研究代表者

竹下 裕史  金沢医科大学, 医学部, 助教 (70387075)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
キーワード低体温症(凍死) / 死後診断 / 筋損傷マーカー / 体液調節因子 / 低体温症
研究開始時の研究の概要

低体温症による死亡(凍死)では, 低体温を主因と決定づける剖検所見は確認されていない. 研究代表者は剖検例を対象に抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色の陽性率を比較検討し, 低体温症例の腎組織において有意に高い結果を得た. このことから, 低体温症とミオグロビンの逸脱との関連性を明らかにするために, 低体温状態における筋損傷マーカーの変動を解析する. また, 低体温では寒冷利尿や組織間質の狭小化など所見が出現することから, これらの原因である抗利尿ホルモンなどの体液調節因子の変動を解析する. 本研究ではこれらの解析による低体温状態の重症度推定法を確立し, 低体温症の死後診断の精度向上を目指す.

研究実績の概要

低体温症例の腎組織では抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色で陽性像が認められる傾向にあるとの報告が散見される.この現象は筋組織からのミオグロビンの逸脱によるものと考えられることから,寒冷曝露によって筋損傷に類似する病態が生じていると予想される.本研究ではマウスを低温環境に曝露し、ミオグロビンを含む筋組織由来成分や筋損傷マーカー等について腎組織における分布や血中濃度の変動を検証する。6段階の温度条件を設定し、無処置の実験群とともに、体幹部を剃毛した群や麻酔薬を投与した群など体温維持機能が低下した実験群を追加し、低温曝露実験を施行した。実験終了後に全臓器、血液,尿を採取し,腎組織は常法に則って組織切片を作製後、抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色を施行した。血液から血清を分離後、ELISA法にてミオグロビン、H-FABP、トロポニンCの血中濃度測定を施行した。その結果、腎組織における抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色では曝露温度による差を認めなかったものの、ミオグロビンおよびH-FABPの血中濃度は環境温度の低下に加えて、剃毛群、麻酔群で高値を示す傾向がみられた。
また前年度から、低体温症の死後診断への有用性の検証として、法医剖検例を低体温症群、心疾患群、外傷群等の10種類以上の疾患群に分類し、筋損傷マーカーや体液調節因子の免疫組織化学染色陽性率を比較検討している。低体温症例では抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色にて、主として低体温症群で尿細管に特徴的な陽性所見が認められることは以前から確認しており、現時点では設定条件を満たす全症例について同所見の有無、および複数の視野で尿細管数あたりの同所見陽性率を算出し、疾患群間で比較している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

動物実験では低温負荷を延長するために剃毛処理をしない無処置群と、一方で体温維持機能であるシバリングの影響を避けるため麻酔下にて低温曝露を施す麻酔群を追加設定し、各々25℃、20℃、15℃、10℃、5℃、0℃の温度条件にて低温曝露実験を施行した。曝露実験後に各種試料を採取し、筋損傷マーカーであるミオグロビン、心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)の血中濃度を測定した。その結果、ミオグロビンおよびH-FABPはいずれも、15℃以下では麻酔群が他の群よりも高値を示す傾向を認めた。また、10℃以下では剃毛群が無処置群より高値を示し、0℃ではいずれの群も他の温度条件よりも高値を示した。一方、検討を予定していたトロポニンCやミオシン軽鎖など他の筋損傷マーカーやバソプレシンやアルドステロンなどの体液調節因子の変動解析、ならびにミオグロビン以外の筋損傷マーカーに対する免疫組織化学染色による評価の実施に至らなかったため、進捗状況はやや遅れている。
法医剖検例の腎組織について抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色を施し、主として低体温症に尿細管の特徴的な陽性所見が出現する。同所見の評価法として検討を重ね、一視野あたりの尿細管陽性率を算出し、複数の視野の平均陽性率を症例ごとに算出し、疾患群別に比較することとした。本年度はこの評価法の作成と症例数の処理に時間を費やしたため、実験計画の進捗はやや遅れている。

今後の研究の推進方策

実験動物を用いた低温曝露実験にてミオグロビンとH-FABPに変動が認められており、骨格筋トロポニンCやミオシン軽鎖、タイチンなどの他の筋損傷マーカーについても継続して測定・解析を実施し、低体温状態の指標としての有用性を模索する。また低体温状態にみられる寒冷利尿や組織間質の狭小化は体液量調節機能の異常によって生じると推測されることから、バソプレシンやナトリウム利尿ペプチド、レニンなどの測定・解析も同時に実施する予定である。
法医剖検例における検証では、腎組織における抗ミオグロビン抗体免疫組織化学染色の陽性率評価を継続しつつ、同染色陽性率の高い症例を対象とした上記動物実験の解析対象成分に対する免疫組織化学染色を行い、ミオグロビン以外の成分による低体温症の評価方法を探る予定である。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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