研究課題/領域番号 |
21K10632
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58050:基礎看護学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
新居 学 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (80336833)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 看護過程の質改善 / 多層ニューラルネットワーク / 言語モデル / Transformer / 説明能力 / 因果探索 / 看護過程評価 |
研究開始時の研究の概要 |
人工知能技術を用いて看護・介護分野の自由記述文書の評価支援システムを構築することを目指す.これまで研究開発を行ってきた看護ケアテキストの自動分類システムのさらなる分類性能向上を目的として,多層ニューラルネット技術に基づく自動分類システムの開発を行う.また,多層ニューラルネット技術にはブラックボックスであるという問題があり,分類結果を説明できないため,因果探索手法等を用いて分類結果を説明できるシステム構築を行う.
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研究実績の概要 |
本研究では,多層ニューラルネットワークによる看護過程の質評価支援を目指している.看護過程を記述した看護ケアテキストは専門家により4つのクラスに分類される.この4つのクラスは,看護過程を「大変良い」から「要改善」の各段階へ分類するものである. まず,看護ケアテキストを(1)かかり受け解析によるグラフ表現,(2)LiNGAMによる因果関係解析によるグラフ表現,の2種類で表すことを検討した.それぞれのグラフ表現を教師データとしてグラフアテンションネットワークを学習し看護過程の質評価性能を比較した.同時に,医療表現抽出を行い,例えば病名には病名・症状のタグを付与し,看護ケアテキストの内容を学習する際に種々の具体的な表現をタグという抽象化した表現でも取り扱えるようにした.グラフアテンションネットワークによる質評価の性能は,医療表現抽出によるタグ付けを利用し,かかり受け解析によるグラフ表現を採用した場合に約68%となった.これはTransformerベースのこれまで研究開発してきた分類器の約74%よりも低いものとなった.この学習結果をグラフで表現した場合,個々の看護ケアテキストの単語同士の関係性は可視化することができた.しかしながら,例えば「要改善」に分類される看護ケアテキストに共通する構造を抽出するには至らなかった.これは,分類性能が思いの外向上しなかったことも原因の一つと考えられる. 次に,Transformer系列の言語モデルであるBERTベースのモデルのいくつかを分類器として利用し,AttentionおよびSHAPを用いて分類根拠の説明を行う仕組みの検討をした.これまでAttentionによる分類根拠抽出を行ってきたが,SHAPにより抽出される分類根拠はAttentionによるものより判断基準に忠実である可能性が高いことが数値実験により判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
看護ケアテキストを(1)かかり受け解析によるグラフ表現,(2)LiNGAMによる因果関係解析によるグラフ表現,の2種類で表し,それぞれのグラフ表現を教師データとしてグラフアテンションネットワークを学習して看護過程の質評価性能を比較した.医療表現抽出を行い,看護ケアテキストの内容を学習する際に種々の具体的な表現をタグという抽象化した表現でも取り扱えるようにした.グラフアテンションネットワークによる質評価の性能は,医療表現抽出によるタグ付けを利用し,かつ,かかり受け解析によるグラフ表現を採用した場合に約68%となった.これはTransformerベースのこれまで研究開発してきた分類器の約74%よりも低いものとなった.この学習結果をグラフで表現した場合,個々の看護ケアテキストの単語同士の関係性は可視化することができた.しかしながら,例えば「要改善」に分類される看護ケアテキストに共通する構造を抽出するには至らなかった.このようにグラフアテンションネットワークの結果は良好ではなかったが,学習の困難さがあるため,引き続き検討を行っている. また,Transformerベースの言語モデルについては分類性能が比較的良好で,SHAPのようなAttention以外の評価指標を採用することでモデルの評価根拠説明の精度が向上しているため,この方向性は有望であると考えている.さらに,Transformerベースの大規模言語モデルは日々刻々と新しいモデルが提案され利用可能となっているため,これらと本研究で開発した手法を組み合わせることが可能である.評価根拠の抽出結果を利用するリコメンデーション作成支援のためのニューラルネットワークも研究開発しており,看護過程の質評価支援の仕組みは着実に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
Transformerベースの大規模言語モデルは日々刻々と新しいモデルが提案され利用可能となっている.これらの中には日本語の取り扱いに長けた言語モデルも存在している.したがって,分類器としてこれらの利用を検討する必要がある.これらの言語モデルと本研究で開発した手法を組み合わせることは可能である. これまでの研究から,看護ケアテキストの評価根拠の抽出は根拠抽出の対象となる識別器の評価クラスへ分類精度に依存することは明らかであるため,引き続き評価分類性能向上に努める必要がある.看護ケアテキストを学習用データとして利用する際のデータ量から,比較的パラメータ数の少ない言語モデルを学習することになる.可能な限り多数の言語モデルを比較検討し,適当な言語モデルをベースモデルとして採用する.これを看護ケアテキストの評価分類システムおよびリコメンデーション作成支援システム両方の基礎とする.そして,看護ケアテキストの評価システムとリコメンデーション作成支援システムを連携させることも今後の課題である.
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