研究課題/領域番号 |
21K10871
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58070:生涯発達看護学関連
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研究機関 | 四国大学 |
研究代表者 |
横関 恵美子 四国大学, 看護学部, 講師 (50746279)
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研究分担者 |
山本 耕司 四国大学, 経営情報学部, 教授 (70182623)
池本 有里 四国大学, 経営情報学部, 助教 (50612058)
木田 菊惠 四国大学, 学際融合研究所, 特別研究員 (90885352)
細川 康輝 四国大学, 経営情報学部, 准教授 (20341266)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 重症心身障害 / 快・不快 / 普段の状態 / 周波数解析 / 表情解析 / ニューラルネットワークによる分析 / 重回帰分析 / ロジスティック回帰分析 / ストレス / 観測データ / 機械学習 / ニューラルネットワーク分析 / 重症心身障害児者 / 微細な反応 / 意思疎通 / ICT機器 / 概念モデル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、重症心身障害児者(以下、重症児者)の微細な反応を理解するための概念モデルを作成することである。重症児者の表情、音声、心拍数などの複数の生体反応をICT機器の活用によって収集し、その観測データから数理構造を取り出しモデルを作成する。その概念モデルに人工知能(Artificial Intelligence)(以下、AI)の技術を活用することで、重症児者を養育する家族が理解したいと思っているが、心拍数など生理学的データにも現れず、変化がわかりにくい曖昧な状態変化の理解を支援し、なぜそう判断したのかという根拠を言語化して述べることが難しい状況についても共通した理解を見出せる可能性がある。
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研究実績の概要 |
2年目の計画は、1年目にストレス時の着目すべき表情筋の動きを明らかにした同様の方法で、重症児者のデータを分析し、B)心地良い時の予測モデルを作成し、重症児者の快・不快を理解するモデルの絞り込みを行い、概念モデルの予測を立てることであった。 そこで、家族と専門職者の判断を目的変数としたロジスティック回帰分析と心拍数を目的変数とした重回帰分析によって、喀痰貯留に関するストレス時の表情筋の動きを抽出した。1年目のその結果を用いて、快・不快について判断が難しい場合についても、心拍数を目的変数とすることで、他の重症児者からも共通した概念を抽出することができた。また、心拍数に有意差がみられない場合や経験値によるアセスメントが難しい場合は、気道内の粘稠な分泌物の振動について、電子聴診器で録音した呼吸音を高速フーリエ変換による周波数スペクトルを比較することで、データの分類を行った。そして、喀痰貯留に関するストレス時の表情筋の動きとして3項目を明らかにした。この3項目の表情筋の動きを入力層に置き,「いつもと違う」ストレスがあるか「いつもと同じ」かどうかを精度よく出力できるネットワーク情報について、ROC 曲線およびAUCの値、交差エントロピーの誤差の違いを比較して、明らかにした。 また、重症児者の心地良い時の予測モデルの作成には、母親が一緒にいる場合といない場合に着目した。この状況の違うデータを、ロジスティック回帰分析とニューラルネットワークによる分析によって確認したところ、母親の在・不在の2値分類ができ、重症児のポジティブな反応についても明らかにできる可能性を示すことができた。また、てんかん発作についても、出力層を3項目にすることで、てんかん発作に気づいた時点の妥当性、映像とAI技術を活用することで早期に発見の可能性があることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、重症児における心拍数や表情の変化が視覚的に捉えにくい状況においても、統計学的手法を用いて抽出した表情筋の動きについて、最も精度良く抽出できる重症児者の喀痰貯留による呼吸困難に関するストレスモデルを検討したところ、3層ニューラルネットワークにおいて、入力層は「眉の外側を上げる」、「顎を下げずに唇を開く」、「閉眼」の3項目、隠れ層1層目3項目、隠れ層2層目2項目、出力層2項目のニューロンで構成し、隠れ層の活性化関数はHyperbolic tangent function、出力層の活性化関数はSigmoid function のとき、最も良い精度で分類できることを明らかにした。他の症例においても、確認することができた。 また、1事例について、喀痰吸引時(A)と呼吸安定時の状況(B)、母親の不在時(C)と在室時(D)、という4つの状況を出力層に置き、ニューラルネットワークによる分析を行った。隠れ層と出力層の活性化関数、学習の手法、隠れ層のユニット数を共通にして、出力層の項目を変えながら正しく分類できるかどうかを検証した。その結果、出力層AB(100%)、CD(92%)、ACD(93%)、ABCD(78%)の精度で表情の違いを分類できた。これにより、重症児の微細な反応を理解できる可能性があることが示すことができた。 てんかん発作については、発作のなかった別日のデータと比較することで、てんかん発作に早く気づく可能性があることを確認した。具体的には、発作がみられなかった日のデータ(E)と発作がみられた日の発作に気づく前(F)と・後(G)のデータを用いて、方法1(E/F/G)、方法2(E/FG)でニューラルネットワークによる分析を実施した。この結果により、重症児者のてんかん発作に気づいた時点の妥当性、映像とAI技術を活用することで早期に発見の可能性があることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
重症児者の快・不快の状態を映像から数値化し、ストレス指標となる特徴量の抽出を実現した。この特徴量を活用し、ストレスの有無、てんかん発作が起こる可能性の予測が精度よくできる可能性を示すことができた。しかし、さらに多くのデータを安定・継続して収集し、分析の精度を高めることが求められる。そのため、重症児者の日常生活の中で、より簡便に、しかも正確に養育者の誰でもがデータを集積できるように一般化することが課題である。大量のデータを安定・継続して収集し、機械学習の精度を高められるようにすることが求められる。現在、被験者の動きによる再調整と時間合わせも自動で行えるようにシステムの調整を行っている。研究協力施設も2施設となったため、今後は、データ収集を精力的に行い、データの蓄積を急ぐとともに各状況における重症児者の微細な変化を分析し、出力層を増やしていく。また、言語でのフィードバックが可能な健康な成人のデータも収集し比較検討していく。
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