研究課題/領域番号 |
21K11082
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
五島 聖子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (80745216)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 1,8-シネオール / アロマペンダント / 介護施設 / 高齢者 / 2-ノネナール / 微香 / 気分 / 1.8-シネオール / 非薬物療法 / 非薬物療法プログラム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では1,8-シネオールという多くの植物に含まれる有機化合物単体に焦点を当て、その効果について基礎研究と介入研究の2段階で研究を進める。さらに、両段階において加齢臭とも言われる芳香を持つ有機化合物である2-ノネナールを偽薬として使用して対照実験を行い、より信憑性の高い結果を得る。香りの認知による効果を追求するこれまでのアロマセラピーとは異なり、認知できない程度の微香の効果を追求する。従来の香りの認知に基づいたアロマセラピーは、ユーザーの香りの好みによって効果が左右されるが、微香は個人の好みに関わらず使用できるので、ここでは介護施設全域で適用できるCAMプログラムを構築することができる。
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研究実績の概要 |
本年は、コロナ禍の規制が徐々に緩和される状況下で、健常者を対象とした実験を中心に研究を進めた。まず、コントロールの香りとして予定した2-ノネナールの香りの実験を行ったところ、健常者の被験者の多くが強い不快感(嘔吐感)が見られたので、高齢者施設での使用は不適切と判断した。そこで2-ノネナールの代替となるコントロールの香りとして、人体に無害であり、日本人に馴染みのあるいぐさウオーターの香りを検討し、新しい畳の香りに近いものを実験に選んだ。いぐさの香りを選んだ理由は、1,8-シネオールを含む様々な成分が複合的に含まれていることである。 被験者に不快感を与えないいぐさウオーターの製品を選び、健常な被験者に、ディフューザーを用いて5分間暴露させ、暴露前後にPOMS心理テストと、25個の単語を暗記する記述式記憶テストを行い、感知できる濃度での効果を1,8-シネオールと比較した。その結果、いぐさウオーターにリラックス効果が確認された。次に、2つの香りについて「微香」とする空気中濃度を決定し、決定した濃度の香りに暴露した状態で、健常者に1時間の単純作業をさせ、気分の変化、作業効率、記憶力の変化を調査した。その結果、いぐさの香りには効果が認められず、1,8-シネオールには顕著な効果が確認された。 そこで1,8-シネオールに対しては、さらに微香と決定した濃度に近い香りが被験者の鼻腔に到達するよう、アロマペンダントに挿入する試薬の量を定めた。このアロマペンダントを用いて、介護施設に入居している高齢者50名に対して、1,8-シネオールの微香の長期暴露による効果を確かめるため、起床時から就寝時までアロマペンダントを装着してもらい、長期暴露による効果を比較検証した。その結果、アロマペンダントの装着による周辺症状の改善を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目には、コロナ禍で被験者を対象とした実験ができなかったため、計画通りの研究を進めることができなかった。2年目には、年度初めにコロナ禍の規制が緩和されて健常者の実験が可能になったが、密になる空間で実験をすることができなかったので、一度の実験で集めることのできる被験者の数に制約があり、当初計画した被験者数を集めることが困難であった。また、この実験により、当初計画したコントロールの試薬は高齢の被験者に不適切であることが判明し、代替のコントロールの香りとして、いぐさウオーターを検討する必要が生じた。いぐさウオーターにも複数の異なる香りの製品があったため、健常な被験者を対象とした実験を重ねて、最も新しい畳の香りに近いものを選んだ。本研究では、コロナ禍の規制とコントロール試薬の問題により、研究の手順と内容を一部変更する必要が生じたため、研究の進捗状況は、当初計画したものより、やや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
当年度行った実験では、コントロールの香りとして用いたいぐさウオーターは、健常な被験者に知覚できる濃度で暴露した際にはリラックス効果が認められたが、微香の濃度では認められないという結果を得た。この結果にから、複合的な植物由来の香りより、単一有機化合物の香りの方が微香による効果が高いと考え、今後は1,8-シネオールのコントロールの香りとして、ボルニル・アセテートを検討する。ボルニル・アセテートは、ラベンダーなどの香り主成分であり、リラックス効果をもたらすことが多くの論文で報告されている。そこで、今後の研究の推進方策として、まずボルニル・アセテートの微香の効果を健常な被験者を対象にして確認した上で、ボルニル・アセテートと1,8-シネオールの微香の効果を、アロマペンダントを用いて高齢者を対象としてと比較する。さらに、高齢者に対する最も効果的な香りの暴露方法と暴露時間、暴露による認知症高齢者の周辺症状の改善効果、そして介護者の介護負担の変化について調査を進めることとする。
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