研究課題/領域番号 |
21K11177
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 北里大学 (2022) 新潟医療福祉大学 (2021) |
研究代表者 |
堀田 一樹 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (30791248)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | ECMO / 骨格筋 / 微小血管 / 酸素動態 / リン光クエンチング |
研究開始時の研究の概要 |
体外式膜型人工肺(ECMO)は,新型コロナウィルス感染症による肺炎を始めとする,重度の循環・呼吸不全を有する患者の救命措置として行われている.ECMO 管理中から早期離床や電気刺激治療により骨格筋機能を維持することが,要介護状態の回避やQOL の改善につながると思われる.骨格筋は収縮時に酸素供給が激増するが,酸素供給を支えるメカニズムとして筋毛細血管における酸素拡散および酸素勾配の増加が関与している.本研究では新たにECMOモデルラットを作製し,電気刺激による骨格筋収縮時の酸素拡散(課題1)および勾配(課題2)を正常ラットと比較することで,ECMO 中の筋収縮時の生体応答の解明に取り組む.
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研究実績の概要 |
体外式膜型人工肺(ECMO)は重度の呼吸循環不全に陥った患者にとって最後の砦である.長期のECMO管理を要する場合には,筋萎縮の予防を目的に骨格筋に対する電気刺激療法を行う場合がある.一方で,ECMOは全身の非生理的な呼吸循環動態を引き起こすことから,骨格筋に対して機能的変化を惹起する可能性がある.ECMOが骨格筋への酸素輸送および筋張力に及ぼす影響について検討するために,本研究では筋収縮時の骨格筋間質酸素分圧(PO2is)をリアルタイムで計測した.SDラットを対象に,頸静脈から脱血した血液を小動物用ECMOを用いて酸素化し動脈血へと送血した.このようなECMOモデルラットを対象に,後肢の露出された前脛骨筋に対して電気刺激による筋収縮を誘発した.PO2isの計測にはリン光クエンチング法を用いた.その結果,ECMOとコントロールラットいずれも筋収縮時にPO2isは減少した.筋収縮前の安静時,および収縮時のいずれもコントロールと比較してECMOで有意に低値を示した.電気刺激によって生じた筋張力をひずみゲージを用いて計測した結果,ECMOとコントロールの間に差を認めなかった.コントロールと比較して筋弛緩速度がECMOで有意に遅延していた.以上のことから,ECMOはラット骨格筋の安静時および収縮時の間質内の酸素分圧を低下させることが示された.また,ECMOは筋収縮能には影響しないが,弛緩速度を減少すると思われた.本研究はECMO管理中の骨格筋微小循環動態に関する初めての知見である.PO2isは微小血管からの酸素供給と筋細胞の酸素消費のバランスによって規定される.したがって,ECMOは微小血管の酸素供給能の低下を惹起していることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に小動物用ECMOを用いたECMOモデルラットの作成,電気刺激装置の導入を完了した.その後,予定していたECMOモデル動物の作成に対する酸素分圧の計測を進め,2022年度にECMOおよびコントロールラットについて計測を完了した.国際誌への投稿について進捗が遅れているため,現在論文化へ向けて進めている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては,まずは現時点の集積された酸素動態,張力に関するデータをまとめ,2023年のアメリカスポーツ医学会のポスターセッションにおいて発表を予定している.また,発表内容について国際誌へ論文化へ向けて準備を進めている.投稿先としては,Microcirculatory Societyの機関紙であるMicrocirculationへの投稿を検討している. 本研究は集中治療領域で用いられるECMOについて,骨格筋微小循環の視点から動物モデルを用いた基礎研究を進めた.本研究が臨床へと還元されるには,まずは臨床データの蓄積が必要と思われる.ECMO管理中のヒト骨格筋において,微小血管における酸素供給が減少しているのかどうかは現時点で不明である.ヒトで非侵襲的に骨格筋微小循環を計測することは容易ではないため,基礎から臨床へのtranslationにおける障壁となる.近赤外分光法は集中治療室でも計測可能な組織内酸素飽和度の計測方法と思われるため,申請者の所属する研究機関において基礎と臨床の共同研究を推進したいと考えている.また,収縮時の筋酸素飽和度の変動も近赤外分光法を用いることで可能である.近年集中治療領域においても神経筋電気刺激が用いられているため,刺激中の酸素動態について新たな知見が得られることを期待している.
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