研究課題/領域番号 |
21K11227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
徐 明利 東京医科大学, 医学部, 客員講師 (80597964)
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研究分担者 |
曲 寧 東海大学, 医学部, 客員教授 (70527952)
隅山 香織 東海大学, 医学部, 准教授 (20433914)
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 脳梗塞 / 慢性期 / 炎症反応 / 漢方薬 / 脳血液関門タイトジャンクション / 炎症反応、 / リハビリテーション治療 / 脊髄損傷 / 脳卒中 |
研究開始時の研究の概要 |
脳梗塞の形成の機序として、脳内浸潤したマクロファージがTLR2/4依存的に活性化され誘導される炎症が深く関与している。最近、我々は、漢方薬の1つ牛車腎気丸(TJ107)が、抗癌剤投与したマウスの精巣内マクロファージの浸潤を抑制し、TLR2/4発現を低下させ精子形成障害を改善することを示した。またTJ107の末梢神経障害に対する臨床効果と血流増加因子の血液中濃度変化との関連も知られている。そこで、本研究では、後遺障害のリハビリテーション治療への応用を目指し、TJ107と他の漢方補剤薬による脳梗塞や脊髄損傷後の中枢神経系の炎症反応と麻痺による運動障害に対する改善効果とその作用機序を明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は、これまでの脳梗塞モデルマウスで得られた結果の再現性を確認し、さらにその作用機序を検討した。まず、これまでと同様に、8週齡C.B-17脳梗塞モデルマウス(慢性期における実験的処置の治療効果および副作用の評価が可能な左中大脳動脈皮質枝領域に限局した脳梗塞モデルマウス; CLEA-Japan. Inc.)を用いて、脳梗塞発症2週後にコントロール餌(通常飼料群)、牛車腎気丸(TJ107)を含有させた餌(TJ107飼料群:ヒト投薬量を体重換算して5倍のTJ107餌)を60日間自由摂取させた。そして、梗塞巣がある左脳の左中大脳動脈皮質枝領域の脳組織と、梗塞巣がない右脳の右中大脳動脈皮質枝領域の脳組織からRNAを抽出し、脳内のマクロファージマーカーのF4/80やCD163、炎症誘導に関与するTLR2/4, IL-23, IL-17, TNF-α, IL-1β等、ZO-1, Occludin, Claudin-1/3/5等の脳血液関門タイトジャンクション関連分子の発現変化についてRT-qPCRで調べた。さらに、脳組織の連続パラフィン切片を作製し、免疫組織化学的解析を行った。その結果、通常飼料群では、これまでと同様に、梗塞した左中大脳動脈皮質枝領域の脳組織のF4/80, TLR2, TLR4, IL-1β, TNF-αの上昇が見られ、牛車腎気丸含有飼料群では脳内炎症反応が抑制され、再現性が見られた。しかし、やはり、通常飼料群でも脳血液関門タイトジャンクション関連分子ZO-1、OccludinやClaudin-1/3/5の有意な変化が見られなかった。ところが、免疫組織学的解析の結果により、梗塞した左中大脳動脈皮質枝領域の脳組織のマクロファージF4/80とZO-1の上昇傾向が見られ、現在も検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々のこれまでの結果から、通常飼料群では、梗塞巣がある左脳の左中大脳動脈皮質枝領域の脳組織で、TLR2/4発現上昇や、その結果、脳内浸潤マクロファージが活性化され慢性期の炎症が促進されたが、牛車腎気丸の投与により、これらの脳内炎症反応が抑制された。つまり、牛車腎気丸投与による炎症抑制を介し、脳梗塞の改善に誘導している可能性が示唆された。ところが、脊髄損傷モデルでの検討が未だ進められておらず、進捗状況としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、当初予定していた脊髄損傷モデルマウスでの解析は、分担研究者の所属の異動により出遅れてしまったので、2024年度は、牛車腎気丸投与による脳梗塞の炎症緩和効果と、さらに、その作用機序の解析に絞って検討を行うことに変更する。 (1)漢方薬投与の脳虚血モデルマウスでの解析:昨年度までの解析により、牛車腎気丸投与による炎症抑制効果が見られているので、今年度は、さらに、脳の連続パラフィン切片を用いてHEやTTC染色などにより梗塞巣を定量し、コントロール餌投与と比較し、牛車腎気丸投与の脳梗塞壊死部位の緩和効果を明らかにする。さらに、昨年度の結果でははっきりしなかった脳組織の免疫組織学的解析をさらに進め、脳血液関門タイトジャンクションに関与する分子への影響を比較検討し、脳保護効果や機能改善効果を明らかにする。 (2)マイクログリア細胞株BV-2細胞またはマクロファージ細胞株RAW264.7細胞を用いた炎症緩和効果の作用機序の検討:マイクログリアまたはマクロファージの細胞培養系を用いて、牛車腎気丸の炎症抑制効果の作用機序について明らかにする。まず、これらの細胞をLPSで刺激する際に、牛車腎気丸を濃度を変えて加え、TLR2/4の発現やM1/M2分化への影響をそれぞれの分化マーカー(M1:iNOS、TNF-a、IL-1b、CD86他、M2:Arg-1、Ym1、IL-10、CD206他)の発現をRT-qPCR解析により調べ、牛車腎気丸によりM1型から炎症抑制や組織修復のM2型へ分化誘導していないか調べる。さらに、ウエスタンブロット解析により、NF-kBのシグナル伝達に関与する分子のリン酸化への影響を調べる。次に、牛車腎気丸を熱処理したものや、遠心式限外濾過フィルターを用いて分子量分画したものを用いて、上記と同様な検討を行い、牛車腎気丸の有効成分の同定も試みる。
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