現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在臨床で使用されている抗がん剤の中で、本研究ではPARP阻害剤とDNA修復経路で働くリン酸化酵素(ATM, ATR, CHK1, CHK2, DNA-PK)の阻害剤など「DNA修復阻害剤」として働く薬剤、アルキル化剤(CYC)、代謝拮抗物質(5-FU, Gem, MTX, Ara-C)、トポイソメラーゼ阻害剤(CPT-11, ETP)、DNA結合作用剤(CDDP, MMC, ADM, BLM)など「DNA障害誘発剤」として働く薬剤を用いて解析を計画した。 現在、これら「DNA修復阻害剤」や「DNA障害誘発剤」を単剤(種々の濃度)で滑膜肉腫細胞に作用させ、効果的な癌細胞増殖阻害効果を示す薬剤を探索している。 昨年度、細胞増殖抑制効果は、6穴プレートに細胞を撒き、12時間後に培地交換時に薬剤を添加し、48時間後に細胞を回収し細胞数を計測する方法で行なっていた。しかし、DNA切断活性を示す薬剤による細胞増殖抑制効果は細胞分裂回数を数回経てから現れる場合も報告されている。そこで、本年度は、薬剤存在化で6日間培養後のコロニー形成数を計測する細胞増殖抑制効果の判定を行う方法で、滑膜肉腫細胞株の増殖抑制効果を示す薬剤の探索を行った。その結果、昨年度の解析方法では増殖抑制効果を示さなかった薬剤に関して、いくつかの薬剤は、効果を示すことが判明した。特に、2本鎖DNAを切断する薬剤に増殖抑制効果が高いことがわかった。しかし、2本鎖DNAを切断しない薬剤に関しては、増殖抑制効果が見られたものはなかった。 また、私達は、滑膜肉腫細胞は「2本鎖切断DNAの修復経路の活性低下」という特性を持つことを発見しているが、どのような作用機序で2本鎖切断DNAの修復経路(DNA相同組換え修復活性)が低下しているのか解析を行ったが、その原因に関しては不明のままである。
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