研究課題/領域番号 |
21K11256
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 大阪人間科学大学 |
研究代表者 |
杉生 真一 大阪人間科学大学, 保健医療学部, 教授 (90397688)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 三叉神経脊髄路核尾側亜核 / 眼窩下神経切断 / c-Fos / CGRP / ミクログリア / 吻側延髄腹内側部 / 神経障害性疼痛 / GABA / 三叉神経 / ERK / セロトニン / 口腔顔面領域 / 下行疼痛調節系 / 生理活性物質 |
研究開始時の研究の概要 |
口腔顔面領域から上位中枢への侵害情報伝達を調節する機構として、下行性疼痛調節系が知られており、吻側延髄腹内側部:Rostral ventromedial medulla(RVM)はその主要部をなす。以前、RVMと三叉神経脊髄路核中間亜核(Vi)と尾側亜核(Vc)との移行部(Vi/Vc)間に新しい相互連絡経路(RVM⇔Vi/Vc)を見いだした。しかし、RVM⇔Vi/Vcが、侵害情報受容後の経時的変化や、病態モデルなどの状況次第で、どのように疼痛制御を行っているのかは不明である。本研究では、口腔顔面領域における慢性疼痛下での、RVM⇔Vi/Vcが及ぼす疼痛制御のメカニズムの解明を行う。
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研究実績の概要 |
Rostral ventromedial medulla(RVM)に連絡するVi/VcのVc領域での役割を調べるために、三叉神経第2枝の上顎神経の枝である眼窩下神経(ION)を切断したモデル動物を作成した。本モデル動物群(ION Cut; Cut)と対照群(ION Sham; Sham)の侵害情報受容後の経時的変化をvon Freyテストにより、調べた結果、オトガイ部領域での機械的疼痛閾値(g)は、Sham(左側:25.7±2.9、右側:24.6±2.5)、Cut(左側:14.4±2.0、右側:21.9±2.5)を示し、Cut左側は、Sham左側に比べ有意な閾値の減少が認められ、Cutは神経障害性疼痛のモデルとして確立された。 これらの動物を使用し、三叉神経核尾側亜核(Vc)領域のFosとカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の発現数について調べた結果、VcのI/II層のFos発現は、Sham(左側:5.0±0.4、右側:4.0±0.7)、Cut(左側:21.8±1.3、右側:5.5±0.3)を示し、Cut左側のFosは、Sham左側に比べ有意に増加し、Cut左側はSham左側に比べ、Vcの二次侵害受容ニューロンの活動性が亢進していることが示された。 また、VcのCGRPの発現比率(%)は、Sham左側(48.4±0.7)、Cut左側(55.4±0.6)を示し、Cut左側はSham左側に比べCGRPの発現比率が有意に増加した。Vcのオトガイ部領域のFosとCGRPの発現分布について、Cut左側のVcのI/II層ではFosとCGRPの発現が近接していることが示され、CGRP発現の増加とFos発現の増加は関連する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IONを切断した神経障害性モデル動物の作成は順調に実施され、侵害情報受容後の疼痛制御を行う延髄の神経活動の状況を調べている。現在までにRVMへの上行路のVc領域での神経の活動性は、c-Fosを指標として特徴は捉えており、順次、関連する生理活性物質の変化を調べている。これまでに、5HT、GABA、CGRPの発現の変化を調べた。
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今後の研究の推進方策 |
現在使用中のモデル動物を使用し、更にSP の変化を調べる。また新規モデルとして、三叉神経第2枝の上顎神経の枝である眼窩下神経を絞扼したモデル(ION CCI)を作成し、新たな神経障害性モデルの確立と、そのモデルの侵害情報受容後の疼痛制御を調べる。口腔顔面領域の一次中継核であるVi/Vcの活動は深部組織からの影響を受けることから、咬筋の侵害情報がVi/Vcにどのような影響をもたらすかについて検討する。先行研究では、Vi/VcのFosの発現は顕著に認められており、ION CCIでのVi/Vcの活動性は絞扼していないモデルに比べ活動性の増加を示すと考えている。また本研究で使用したモデル動物との違いをVi/Vc領域とVc領域での生理活性物質の変化を調べることで、RVMに連絡する口腔顔面領域の慢性痛への役割の全貌の一端の解明に寄与できる。 次に、両モデルの機械的疼痛閾値の変化が顕著に認められた時期で、RVMへ逆行性トレーサー(FG)を注入し、通法に従い、Vi/VcのFGとFosおよび生理活性物質の三重染色を行い、RVMとVi/Vcの相互連絡路の侵害受容後の上記に記載した各種生理活性物質を含む投射ニューロンの割合を比較する。これにより、RVMとVi/Vcの相互連絡路の神経障害性疼痛時のニューロンの活動性と働きの全容が解明できる。 さらに、末梢神経損傷によりグリアの活性化が誘導され、活性化グリアが二次ニューロンの興奮性を変化させるため、RVMとVi/Vcでの、Fosとミクログリアの二重染色を行い、神経障害性疼痛時のグリアが及ぼすRVMとVi/Vcの相互連絡路への影響を検証する。RVMとVi/Vcの相互連絡路の状況に応じた侵害刺激に対する働きが解明できれば、慢性疼痛の解明の一助となり、口腔顔面領域における慢性疼痛の治療に迫ることが期待できる。
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