研究課題/領域番号 |
21K11291
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 山形県立保健医療大学 |
研究代表者 |
加藤 浩 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (90368712)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 自然歩行 / 変形性股関節症 / 非対称性運動 / ASI / 非対称性 / 股関節疾患 / 跛行 / 理学療法 |
研究開始時の研究の概要 |
下肢運動器疾患患者のリハビリテーションにおいて,歩容の改善と効率的な歩行動作の獲得は極めて重要な課題である.特に歩容において左右非対称性の歩行は,治療対象とされてきた.しかし,エネルギー効率からみた場合,必ずしも完全対称性の歩行が良い歩行とは言えない.そこで,非対称性歩行を作り出すダブルベルトトレッドミルを用いて,健常者と様々な跛行パターンを呈する股関節疾患患者を対象に,左右歩行周期の非対称性からみた歩行動作の「効率性」について,下肢力学的エネルギー伝達と筋活動特性から検討し,ヒトの非対称性運動に対する適応能力と最適な効率的非対称性運動についてのメカニズムを解明する.
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研究実績の概要 |
本年度はデータの追加収集(健康高齢女性10名)を行い股関節疾患患者と比較検討した. 【対象】 65歳以上の健康な女性高齢者10名(対照群),及び左変形性股関節症の診断を受け,手術治療目的で入院した60~70歳代の女性10名(OA群)の計20名とした.計測課題は10m直線歩行路の自然歩行とした.計測にはモーションセンサーを5個使用し,センサー貼付位置は胸椎部(T7),腰椎部(L3),仙椎部(S2),左・右上腕外側上顆部とした.samplingは200 Hzとした.計測パラメータは3軸加速度・角速度の情報を使ってQuaternionを算出し,脊柱回旋角度と左・右腕振り角度を推定した.統計解析は対照群とOA群の各パラメータの平均値の差を検定した.また,両群内の腕振り角度とT7,L3,S2の回旋角度との関連性の検討にはPearsonの積率相関係数を算出し有意性を検定した. 【結果】 脊椎回旋角度はS2でOA群が対照群と比較し有意に低値を示した.腕振り角度はOA群が対照群と比較し左右共に有意に低値を示した.次に両群内でS2の回旋角度と腕振り角度の関連性を検討した結果OA群でのみ有意な正の相関を認めた. 【考察】 OA群は対照群と比較し左・右腕振り角度の有意な減少を認めた.腕振り動作に関する先行研究では能動的に生じるものか,体幹の回旋運動に伴い他動的に生じるものか議論がされているが一定の見解は得られていない.本年度の研究では,S2の回旋角度でのみOA群が対照群と比較し有意に低値を示した.腕振りが他動的に生じると仮定すれば,T7,L3の回旋角度は両群間で有意差を認めなかったことから,腕振り角度の大きさへの関与は低いと考えられる.次にS2と腕振り角度の関連性を検討した所,OA群でのみ有意な正の相関を認めた.以上からOA群の腕振り角度の減少はS2の回旋角度の減少が影響している可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はモーションセンサーを用いてQuaternion(四元数)を算出し,脊椎と四肢の歩行時姿勢情報を推定することを試みた.同時に予備実験として三次元動作解析装置を用いて角度情報の精度について検討した.その結果,角度情報の精度は,運動速度に影響を受ける可能性が出てきた.体幹の回旋角度に関しては運動速度が比較的遅いため,ある程度の精度は確認出来たが,上肢,下肢の振り出し速度に関しては,誤差が大きくなる可能性があり検討課題となった.そこで,本年度は,高速回転が可能なDCギアボックスモーター(100RPM)を使用し精度の検証を行った.その結果,高速回転運動におけるモーションセンサーから得られる推定角度情報は低速回転と同様に高い信頼性と妥当性を示した.以上から,当該モーションセンサーを使用した自然歩行時における上肢,下肢の角度情報の精度は高いことが確認できた. 次に非対称性指数(ASI)の指標に関しては,加速度,角速度,角度情報,歩幅などある.特に歩幅に関しては,市販ソフトを用いて予備実験を行っているが,三次元動作解析装置での計測値との差が大きく改善する必要性がある.現在,民間企業の協力を得て当該ソフトの改善を進めている.現時点では,概ね計画の大きな遅れはない.
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今後の研究の推進方策 |
本年度はsplit-belt treadmill(SBT)を用いた非対称性歩行の予備研究を本学で実施する予定である.また,新型コロナウイルス感染症の感染状況をみながら,医療施設の協力が得られれば,変形性股関節症患者(平均年齢60歳,全例女性)10名程度の計測を行う.股関節疾患患者は,健常高齢者の計測で算出した最適な変動的非対称性指数を用いたSBT上での歩行練習を5分実施し,前後で歩容の変化を評価し,非対称性トレーニングの有効性を検討する.その後,これまでに蓄積されたデータを整理,分析し学会等で発表する.また,当該年度は論文作成に重点を置きリハビリテーション,または,理学療法や動作分析を専門とする国際誌へ投稿する.
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