研究課題/領域番号 |
21K11307
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
三木 啓資 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター, 研究員(移行) (50740388)
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研究分担者 |
福井 基成 公益財団法人田附興風会, 医学研究所, 副所長 (50342697)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / 呼気 / トレーニング / 息切れ / 中枢気道 / 呼気圧負荷トレーニング / 運動耐容能 / COPD / 声門 / 呼気筋力 / 心肺運動負荷試験 |
研究開始時の研究の概要 |
吹矢の如く呼息時に圧負荷をかける呼気圧負荷トレーニング(EPT) は、「息切れ」「睡眠時の無呼吸」「嚥下機能」を改善させる可能性がある。本研究では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を対象にEPTの有用性及び機序解明、更にはEPTと運動療法との併用効果を検証すべく多施設無作為化コントロール比較試験を行う。EPTは安価で、高齢者でも自宅で簡単に出来る利便性を有し、本研究の医学的、経済的、社会的意義は高い。
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研究実績の概要 |
1987年American Thoracic Society(ATS)ステートメント以降、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の換気制限は末梢気道閉塞によるとされてきた。2000年以降、末梢気道を標的とした吸入薬中心の治療がなされ、QOLレベルの機能的改善は得られたが、十分な運動耐容能の改善には至っていないのが現状である。 今回、申請者らは、1) COPDに対する呼気圧負荷トレーニング(EPT)の有効性とその機序解明のため「COPDに対するEPTの有効性とその適応-多施設無作為化コ ントロール比較試験」EPT-study及び、2)EPTと運動療法との併用効果を検討すべく「COPDへのEPTに対する運動療法の上乗せ効果-多施設無作為化コントロール 比較試験」EPT-ET studyを企画し、3) EPTの至適デバイスの開発も手掛けた。 EPT-studyは完遂し以下の結果が得られた。正規分布性に基づく解析の結果、コントロールに比してEPTは、1) GOLD I-II群(軽症・中等症:n=20)及び、III-IV群(重症・最重症:n=20例)の其々で、持続運動時間(I-II群: +11.7分、 p=0.0008; III-IV群: +6.5分、 p=0.0006)、最高酸素摂取量(I-II群: +2.1 ml/min/Kg、p=0.0086; III-IV群: +2.1 ml/min/Kg、p=0.0004)を改善させ、声門最大閉塞時の声門開大比(最大開大時に対する面積比)を高め(I-II群:+19%、p=0.0062; III-IV群: +28%、p=0.0001) 運動誘発性声門閉塞が改善した。上気道(声門)の閉塞が換気制限や息切れに影響していることが判明し、EPT後、声門開大とともに運動耐容能の著明な改善が得られ、COPDの疾患・治療概念を変える結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「COPDへの呼気圧負荷トレーニング(EPT)に対する運動療法の上乗せ効果-多施設無作為化コントロール比較試験-」EPT-ET studyの進捗が遅れている。呼吸リハビリテーションがコロナ禍で制限され、これ迄の参加症例数が14例と思わしくない。前述のEPT-study で、EPTを行った患者20名の内、EPT前では13名の運動中止理由が息切れであったが、EPT後は7名に減少した。一方で、下肢疲労の運動中止理由に占める割合が増したことを慮ると運動療法との相乗・相加作用に期待がかかり、EPT-ET studyの臨床的意義は高い。今後、症例集積に努めるとともに、より適したEPTと運動療法との併用療法の構築に向けたエビデンスの確立を目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
前述の呼気圧負荷トレーニング(EPT)-studyの結果の如く、中枢気道である声門閉塞が換気制限や息切れに影響していることが明らかとなり、更に、EPTにより瞬発力ある運動耐容能が得られたことはこれ迄のCOPDの疾患・治療概念を変えるものとなった。EPTに使用したデバイス: EMST150を扱う日本企業がないことから、今後、日本で使用するとしたら輸入しなければならず、また、EMST150はアスリート仕様であり細かな圧設定を行うには不向きで、少なくとも日本のCOPD患者への至適圧設定は困難であった。今回の結果を踏まえた至適圧設定幅を有する呼気圧負荷デバイスはCOPD患者にとって朗報となる筈で、その開発が望まれる。EPTは安価であり、高齢者でも自宅で簡単に出来ることから、医学的のみならず、本研究の経済的、社会的意義は高く、EPT療法の確立およびEPTデバイス開発、更にはその社会実装が急務な課題である。
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