研究課題
基盤研究(C)
パーキンソン病(PD)に伴う姿勢異常の中でも、垂直姿勢保持困難の前屈姿勢はQOL低下に関わる重要な徴候である。垂直姿勢保持困難の原因は複数考えられるが、申請者は、固有受容感覚の統合異常による主観的垂直位の認識の不良が大きな原因であると考え、これまでに主観的垂直位の認識不良と垂直姿勢保持困難との関連を明らかにしてきた。本研究において、発症早期PD患者を対象に主観的垂直位測定法を導入し、定量的評価を経て病期の進行度との関係を明らかにし、早期的な評価手法を確立させるべきである。さらに、リハビリ治療における姿勢異常の進行を予防するためのモデルケースを提案する。
パーキンソン病(PD)は、振戦、寡動、姿勢反射障害、固縮を特徴とする慢性進行性の運動障害疾患である。その重症度評価指標としてMovement Disorder Society Unified Parkinson’s Disease Rating Scale (MDS-UPDRS)が用いられているが、非連続数値による段階的スケールであり、細かい運動機能変化を捉えられない。我々が開発した三次元動作解析装置はマーカーを装着せずに1台のカメラで全身の主要な関節ポイントを自動認識し、カメラを起点とした各ポイントの左右、上下、前後方向の絶対値をリアルタイムに記録し、身体動作を三次元的に定量評価可能なデジタルデバイスである。今回我々は、PD患者において三次元動作解析における評価指標としての有用性を検討した。48例における三次元解析装置で求めた測定値とMDS-UPDRS・H&Yとの相関解析では、頸部前傾角度平均値はMDS-UPDRS PartⅡ(日常生活で経験する運動症状の側面)、PartⅢ(運動症状)、合計点と強く相関した(r=0.619, 0.602, 0.635)。一方、体幹前傾角度最大値は中等度に相関した(r=0.431, 0.418, 0.439)。また、体幹側傾角度最大値は、すくみ・姿勢安定性と中等度に相関した(r=0.432, 0.408)。H&Yは、頸部前傾角度最大値と体幹前傾角度最大値が中程度に相関した(r=0.412, 0.439)。一方、Ankle R-Lと歩行速度は、MDS-UPDRS・H&Yいずれとも相関係数が低かった。以上より、三次元動作解析を用いた歩行動作時の頸部・体幹傾斜角度は、PD患者における定量的な重症度指標の候補となりうることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の2番目に予定した関節可動域・動作計測機器を用いた定量的評価手法の確立について、予定の症例数を達し三次元解析を用いた頸部および体幹傾斜角度の測定は、PD患者における定量的な重症度指標の候補となりうることが示唆できた。
PD患者に対する三次元解析は、早期診断や病期診断になるかの課題が残されるが、次年度は垂直保持困難を呈するPD患者の定量的評価に応用について検証を進めていく。
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