研究課題/領域番号 |
21K11329
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
北越 大輔 東京工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (50378238)
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研究分担者 |
鈴木 健太郎 杏林大学, 保健学部, 講師 (40612578)
鈴木 雅人 東京工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (50290721)
山下 晃弘 東京工業高等専門学校, 情報工学科, 准教授 (80589838)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 包括的介護予防 / 認知訓練 / 見守り / 対話エージェント / 深層強化学習 / ヒューマンエージェントインタラクション / 介護予防 / 機械学習 / 地域包括ケア / 強化学習 |
研究開始時の研究の概要 |
ICT機器(スマホ,タブレット等)と自宅に設置したセンサを用い,高齢者が要支援・要介護状態となることを予防する取組を,家族や地域を巻き込み継続的に実現可能とする包括的介護予防システムの構築を目指す.これまで個別に開発してきた認知訓練部,見守り部,対話エージェントの各々に改善や拡張を加えながら統合を図る.各部,各機能の有効性や,統合後のシステム利用を通した長期的・相乗的な介護予防効果について評価する.
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研究実績の概要 |
本研究では高齢者を対象に,ICT機器とセンサを用い,習慣的な認知訓練,エージェントとの対話を通した見守り,高齢者同士の見守り合いの実現に加え,認知訓練や対話,見守りに関する履歴とAI技術を用いた疾病予測や健康増進アドバイスの提供を通じ,高齢者同士,および高齢者と家族が支え合う包括的な介護予防を実現する枠組の構築を目指す. 今年度は,(1) 近年認知機能を維持・向上させる効果が報告されている有酸素運動を組み込んだ新たなゲームを認知訓練システムに導入し,システムの使用感やゲーム実施に伴う運動量変化等について評価した.また,(2) 知的対話エージェントについては,(a) 利用者の嗜好をより詳細に把握すべく,エージェントの状態定義に,発話内容に含まれる感情情報を導入することに加え,(b) 利用者に対して新鮮な話題を提供すべく,過去の発話内容と異なる内容の話題を出力可能となるよう文章分散表現を導入した.また,利用者の嗜好学習の効率向上のため,発話内容を文章で提示し評価いただく実験を実施し,状態定義と話題提供法の拡張による使用感の変化,学習性能について評価した. 過去2年間,コロナ禍の影響で高齢者を対象とした実験を実施できなかったが,今年度,認知訓練システムと知的対話エージェント双方について,高齢者を対象とした実験を実施できた.実験の結果,認知訓練システムを通して,利用者は場所を選ばず気軽に運動できる一方,よりゲーム性を向上させ継続利用意欲を促進する必要があること,知的対話エージェントは利用者ごとの嗜好を一定程度学習可能であることが確認できた.一方,過去2年間での進捗の遅れにより,申請当初の計画と比べてデータの蓄積が不十分であり,高齢者の心身状態予測の実現可能性に関する検討やシステムの統合,および統合版システムの特性・介護予防効果を評価する実験計画の立案までには至っていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実績の概要に記載のとおり,助成研究期間冒頭の2年間,システム利用者である高齢者を対象とした実験を実施できなかったことが,進捗に遅れが生じた主要因である.昨年度は,認知訓練システムに導入した,運動とゲーミフィケーションの要素を組み込んだ新ゲームの使用感・運動負荷といった基本的特性に関する評価や,知的対話エージェントの発話内容調整機構の改良のため,センチメント分析を導入した状態定義の拡張,および,高齢者の嗜好に合った話題を継続的に提供するため,文章分散表現を活用した新鮮な話題を提供するための改良による効果を評価するため,老人会メンバを対象とした実験を行うことができた. 実験の結果,認知訓練システムに導入した新ゲームは,高齢者の継続的利用が期待できること,当該システムはタブレット端末上に構成されているため,出先等,様々な環境で実施可能であること,ゲームに導入された運動の負荷は健常高齢者にとって妥当であることを確認した一方,ゲームで実施される運動量は認知機能の維持・向上には不十分であることが示された.また,知的対話エージェントにおける状態定義の拡張によって,高齢者各々の嗜好をより詳細に把握することができ,それに伴い発話内容を高齢者の嗜好に合わせて調整可能となった一方,過去の発話内容とは異なる新鮮な発話の実現のためにはさらなる状態空間の拡張が必要であることを確認した.また,同一高齢者であっても時間の経過やエージェントから受け取る話題の内容・頻度によって嗜好が変化し得るため,短期間の,もしくは一時的な嗜好の変化にも適応可能となるような学習法の改善が必要なことも分かった. 上記の通り,今年度は高齢者を対象とした実験を実施できた一方,冒頭2年間の遅れの影響もあって十分な実験期間を確保できず,高齢者の心身状態とシステム利用状況との関連性を表すモデル構築のための考察は現時点で実施できていない.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度後半,過去2年間の助成研究期間では実施できなかった高齢者対象の実験を一部実施できたものの,これまでの開発遅延,およびそれに伴い評価・考察可能なシステム利用履歴や実験データが十分に収集できなかった影響もあり,研究進捗率は当初想定していたものの6割程度であると認識している. 来年度はまず,より詳細な行動データの獲得を目指して知的対話エージェントへ各種センサを導入するとともに,認知訓練システムと知的対話エージェントの統合に向けた準備として,より長期間の実験を実施する.各システムの利用に伴って得られたデータに基づき,高齢者の生活習慣の傾向や特徴を捉える生活習慣モデルの構築を図る. 構築された生活習慣モデルの妥当性評価のため,モデルの特徴やモデルを用いた予測結果の精度について確認するとともに,モデルを活用した健康増進アドバイスの適切さについて,高齢者およびその家族に評価していただく.評価の結果を踏まえて認知訓練システムと知的対話エージェントの統合方式について検討を進める.具体的には,各システムにおいて収集されるデータの必要性やデータの統合の可能性,構築される生活習慣モデルの妥当性や当該モデルを用いた予測精度向上への貢献が期待されるデータを新たに取得対象とすべきか検討し,必要に応じてハード面,ソフト面の双方についてシステムを拡張する.時間が許せば,学生を対象とした予備実験実施の後,高齢者を対象とした1-2ヶ月程度の実験を行い,試作版包括的介護予防システムの認知機能維持・向上効果,および高齢者同士,もしくは高齢者の家族による見守りの効果について,システム利用履歴,および高齢者とその家族からのヒアリング結果等をもとに評価を実施する予定である.長期間の実験が実施困難な場合でも,可能な限り,試作版包括的介護予防システムの妥当性を評価可能な実験実施に向け柔軟に実験計画を修正し対応する.
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