研究課題/領域番号 |
21K11343
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
深見 英一郎 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (10351868)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 部員主体 / 選考基準 / 指導者 / 競技 / 教育 / 運動部活動 / 部員の主体性 / 指導者のリーダーシップ / チームスポーツ / 選手選考 / 高校野球 / 望ましい選手選考 / リーダーシップ / マネジメント |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、指導者と部員双方にとって望ましい選手選考の在り方を明らかにすることである。 それぞれのチームによって選考基準は異なり、指導者とすべての部員が納得できる選手選考を遂行するのは難しい。すぐれた指導者は、選手選考を重要な教育機会と捉え、高校野球が抱える教育の論理と競技の論理という2つの相矛盾する目的の達成を目指しているだろう。 指導者とすべての部員にとって望ましい選手選考ができれば選手たちの日々の練習に対する取り組み方がより主体的で挑戦的になり、チームの競技成績の向上にも繋げることができると考えられる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、高校野球において指導者と部員双方にとって望ましい選手選考の在り方を明らかにすることであった。選手選考に着目した理由は、大会に向けて指導者と部員双方が納得のいく選手選考が実現できれば、選手たちの日々の練習に対する取り組み方がより主体的で挑戦的になり、部員たちが持てる力を十分に発揮して、より望ましい成果を生み出すことができると考えたからである。一方で、もし登録外の部員が選考手続きに疑念を抱いたり選考結果に納得がいかなければ、チームの勝利に向けてチームは一つにまとまらず舵取りがうまく行かないであろう。 チーム毎に設定する目標が異なるため選考方法やその基準はそれぞれ異なるが、すぐれた指導者は、選手選考を重要な教育機会と捉え、部員たちの考えや意見を汲み取り、すべての部員が納得のいく選手選考を目指していると考えた。 実際に、以下の研究論文「部員主体の運動部活動の実現可能性: 高校野球における選手選考を事例にして(2022)」では、次のような結果が得られた。最も数多く確認された選考方法は、選考基準を明示した上で部員の考えや意見を聴き取り、それを踏まえて指導者が中心となって選手選考を行う方法であった。ここでは、指導者主導で選手選考を行いつつも、事前にすべての部員に対して選考基準(努力の方向性)を示し、部員全員にメンバー入りするチャンスを与えていた。また、野球の技能・実績だけで選ぶのではなく、必ず練習態度や学校での生活態度も考慮することで教育的側面を重視していた。これらの条件、手続きによりすべての部員が主体的に努力する機会が保障されていた。このように「競技」と「教育」を二者択一ではなく、どちらも同等に重視して、それらの価値観を指導者とすべての部員で共有していたのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動部活動の運営方法に関して指導者主導か/部員主導かという相反する2つの考え方から、選手選考にかかわる指導者/部員の主導性と部員の主体性の関係性を4つに分類し、現役の高校野球指導者を対象に、彼らのチームにおける実際の選手選考方法を調査した。 その結果、確認されたのは、部員の考えや意見に耳を傾けず指導者が独断で選手選考を行タイプA と、指導者が部員の考えや意見を聞き取り、それを踏まえて指導者が選手選考を行うタイプB という、どちらも指導者主導の選手選考方法で、部員主導の選手選考は確認されなかった。その背景には、学習指導要領において部活動が教育活動の一環として位置づけられている以上、多くの指導者が選手選考は決して部員に「丸投げ」にはできないと考えていたと推察された。また、実質2年半という限られた高校生活において、部員たちが競技活動におけるチーム及び個人の目標達成と組織運営や主体的な問題解決能力を経験・学修するためには、部員主導ではなく指導者主導で実施する方がより効果的であると考えられていた。 他方で、これまでの研究では、選ぶ側、主に指導者の視点のみで、選ばれる側(部員)の視点が欠落していた。同好の部員で組織され、彼らの自治が最大限発揮されるべき運動部活動において、チーム運営の根幹となる選手選考はできるだけ多くの部員から受け入れられる方法を採用するべきである。そこで、今後は従来の指導者が考える望ましい選手選考に、対象となる部員たちが希望する選手選考の視点を加えて、より望ましい選手選考のあり方を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、運動部活動の選手選考について指導者と部員に調査を行い、当初想定していた本研究の目的である、高校野球において指導者と部員双方にとって望ましい選手選考の在り方を明らかにする。具体的には、従来の指導者に対する聴き取り調査に加え、すべての部員に選考方法や選考基準に対する考えや意見を聴き取り、指導者と部員の両者にとって望ましい選手選考方法を明らかにする。部員に対する追加の質問内容は、以下の3つを考えている。あなたのチームでは、1)「誰が選手を選んでいるか/誰に選んでもらいたいか(選手の決定者)」、2)「どのような基準で選手を選んでいるか/選んでもらいたいか(選考基準とその割合)」、3)「部員に対して選考基準は示されているか/示してほしいか(選考基準の明示の有無)」、またそれらの回答理由について自由記述で回答を求める。 チーム内のレギュラー争いを勝ち抜いた登録選手のみが試合のグラウンドに立つことができる。選手選考は、人数の多い部活動に所属する部員たちにとって天地の差を生む残酷な通過儀礼なのである。そのため、すべての部員が納得できるように公正かつ慎重に選手選考を進めることが重要である。
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