研究課題/領域番号 |
21K11386
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
久保 純 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50638830)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 運動応答遺伝子 / 筋萎縮 / Atrogenes / 骨格筋 / サルコペニア / アデノ随伴ウイルス / MyoAAV / Foxo1/3/4遺伝子 / 運動 / 電気刺激 / 加齢 / 廃用性筋萎縮 / FoxO |
研究開始時の研究の概要 |
運動によって骨格筋内で引き起こされる変化を明らかにするために、培養骨格筋に対する電気刺激装置を作製し、周期的な筋収縮を負荷(運動模倣)する実験を行ったところ、運動によって活性化する転写制御因子を見出した。この転写制御因子は、FoxO転写因子を抑制するなどして、筋萎縮原因遺伝子群(Atrogenes)の発現を抑制しうることがわかっている。本研究では、ヒトの培養筋や遺伝子組換えマウスを用いて、この転写因子の運動に応答した機能の詳細を明らかする。さらに得られた成果に基づいて、化合物スクリーニングを行うことで、筋萎縮に対する予防効果を持つ薬剤等を見出すことを期待している。
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研究実績の概要 |
本研究では運動応答遺伝子に注目して研究を行っている。この運動応答遺伝子は筋萎縮に対して保護的に働いていると考えている。本年度はin vitroの実験系で蓄積した知見を生体での解析に発展させ、研究を行った。まずマウスの様々な筋萎縮モデルにおいて、この運動応答遺伝子の発現がどうなるか検討を行った。検討した筋萎縮モデルは加齢、絶食、坐骨神経切除、デキサメタゾン誘導性の筋萎縮である。いずれの筋萎縮モデルにおいてもAtrogin-1やMuRF1などの筋萎縮原因遺伝子群の発現が上昇することが確認された。前年度の解析から、この運動応答遺伝子は筋萎縮原因遺伝子群の発現誘導を抑制することを確認しているが、この運動応答遺伝子は確認した全ての筋萎縮モデルにおいて発現が減少していた。すなわち筋萎縮時にこの運動応答遺伝子の発現そのものが減少することが筋萎縮発症の一つの原因となるという仮説を立てた。そこで筋萎縮時に発現が減少するこの運動応答遺伝子を骨格筋において補ってやることで、筋萎縮を抑制できるかどうか検討を行った。マウスの骨格筋でこの運動応答遺伝子を効率的に発現させるために、骨格筋指向性のアデノ随伴ウイルス(MyoAAV.2A)を作製した。AkalucやeGFPをコードするMyoAAV.2Aアデノ随伴ウイルスを作製し、マウスの尾静脈から全身投与し、骨格筋および心筋において効率的にTransgeneが発現することを確認した。そこで、この運動応答遺伝子をコードするMyoAAV.2Aアデノ随伴ウイルスを作製し、尾静脈投与によりマウス骨格筋に発現させた。この運動応答遺伝子を骨格筋において発現させたマウスでは、筋重量の増加がみられた。また絶食やデキサメタゾン投与によって筋萎縮を誘導したところ、MyoAAV.2Aを投与したマウスの骨格筋では筋萎縮原因遺伝子群の発現誘導が抑制されていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年の一連の実験により、解析対象としている運動応答遺伝子が生体の骨格筋においても筋萎縮を抑制していることが確認できた。この運動応答遺伝子は確認した全ての筋萎縮の発症段階において発現が抑制されるため、筋萎縮の発症に深くかかわっている可能性が高い。実際、骨格筋指向性アデノ随伴ウイルス(MyoAAV.2A)を用いて、骨格筋においてこの遺伝子を補ってやることで、筋萎縮を抑制できることを明らかにした。さらにこの運動応答遺伝子を発現させておくと、骨格筋の肥大が起こることも確認できた。以上のことから、骨格筋萎縮の治療法開発において、この運動応答遺伝子に注目することの必要性を改めて確認することができた。現在、この運動応答遺伝子の活性を調整できる薬剤のスクリーニングを行う準備を行っている。加えて、この運動応答遺伝子の活性を調節している因子を同定するために、AirID法を用いた相互作用タンパク質の網羅的同定を進めている。また、これらの内容について、特許出願の準備をおこなった。(報告書執筆時点では既に特許出願済みである)
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究でこの運動応答遺伝子の活性を調節することが、筋萎縮の治療法や予防法につながることを確認できた。加齢によって引き起こされる筋萎縮、いわゆるサルコペニアに対しても効果があるかどうかを確認する。この目的のために、2年齢以上経過した老齢マウスに対して、この運動応答遺伝子をコードする骨格筋指向性アデノ随伴ウイルス(MyoAAV.2A)を投与し、全身の骨格筋でこの運動応答遺伝子を発現させることで、サルコペニアの発症を予防できるかどうかの検討を行う。経時的な筋力の測定、筋断面積の評価、筋委縮原因遺伝子群の発現量などを指標として検討する予定である。またこの運動応答遺伝子の活性を調節する薬剤のスクリーニングを行う。薬剤スクリーニングについては、スクリーニングを行うためのレポーター細胞の作製が終わっていることから、実際の薬剤スクリーニングを実施する予定である。候補薬剤が見つかり次第、in vitroでの筋管の実験系や筋萎縮を誘導したマウスの実験系で効果を確認していく予定である。
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