研究課題/領域番号 |
21K11607
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
高田 尊信 金沢医科大学, 総合医学研究所, 講師 (20515308)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 終末糖化産物 / 心筋細胞 / Heat shock protein 90 / オートファジー / LC3 / 心臓線維芽細胞 / 子宮頸癌細胞 / GFP / 毒性終末糖化産物 / 膵島β細胞 / LC-3 / p62 / 生活習慣病 / 心疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに、砂糖や果糖ブドウ糖液糖(HFCS)等の過剰摂取により、糖代謝中間体のグリセルアルデヒドと蛋白質の反応物である「毒性終末糖化産物(toxic AGEs, TAGE)」が、心筋細胞に生成・蓄積すると、オートファジー誘導蛋白質LC3-II/LC3-Iの比率が低下し、拍動低下と細胞死を引き起こすことを明らかにした。 本研究では、1)TAGEを分解するはずのオートファジー機構を、TAGEが阻害する可能性、2)TAGEを蓄積した細胞から逸脱/漏出した細胞外TAGEが、受容体を介して細胞障害を起こす可能性、3)動物実験により、HFCSの摂取による心臓・血中TAGE量の増加/心臓障害を解析する。
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研究実績の概要 |
ブドウ糖や果糖の代謝中間体である、グリセルアルデヒド(Glyceraldehyde, GA)から生成するGA由来終末糖化産物(GA-AGEs)のうち、特定の構造をもつものこそが、生活習慣病の発症、進展の原因となるという説に基づいて研究を進めた。 心筋細胞の拍動やオートファジーを制御するHeat shock protein 90(HSP90) beta (HSP90beta)を研究対象とした。ラット初代培養心筋細胞にGAを添加させ、細胞内タンパク質をウェスタンブロット(WB)解析したところ、細胞内に、分子量210 kDa前後のHSP90 betaが出現することが明らかとなった。通常HSP90 betaは細胞内で、非共有結合により2量体構造をしているが、SDS-PAGE法によるWB解析をすれば、その構造は破壊され、単量体である90kDaのタンパク質として検出される。したがって、今回検出された高分子化されたHSP90 betaは、GAを原因とする架橋構造を有すると考えられる。同時に、HSP90alphaとbetaの両方を認識できる抗体では、この高分子バンドが検出されなかった。このことは、高分子化HSP90betaの構造解析の糸口となる可能性がある。また、この条件において、HSP90が制御するオートファジータンパク質LC3-IIの産生低下が生じた。 ヒトの正常心臓線維芽細胞に、TAGEが生成すると細胞死が引き起こされるが、生理的濃度の20倍の細胞外TAGEは、細胞死を起こさなかった(Metabolites 12(7), 615, 2022)。 GFPを発現させたヒト子宮頸癌細胞(Hela)にGAを添加すると、細胞死が引き起こされるが、GFPの輝度が上昇(増感)された。これが、細胞死による自家蛍光に由来するものではないことは、コントロールとして通常のHela細胞を用いて証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グリセルアルデヒド(GA)に由来する終末糖化産物(GA-AGEs)のうち、特定のGA-AGEsだけが、強い細胞毒性をもち、生活習慣病の原因となるという(毒性終末糖化産物(Toxic AGEs, TAGE))原因説に基づいて、当該研究を進めている。 しかし、今回、GA添加実験により検出した「210 kDa前後のHSP90beta」がTAGEであることを証明できていない。 さらには、理論上は、GAを添加することにより、細胞内にTAGEのみしか生成しないわけではない。この予想を裏付けるように、他の研究者による、膵管上皮細胞株(PANC-1)へのGA添加実験において、TAGEとして分類していない3種類のGA-AGEs(MG-H1、Argpyrmidine、GLAP)により糖化されたタンパク質が生成することが報告されている。心筋細胞においても、これらのGA-AGEsが生成していることは予想される。ただし、本年度の研究で検出した「210 kDa付近のHSP90beta」のは架橋構造をもっていると予想される。上記の3種のGA-AGEsは架橋構造を生じないため、少なくとも、この種類のGA-AGEsではないと考えられる。 拍動低下やオートファジー関連タンパク質LC3-IIの産生低下に関与するAGEsが、TAGEであるか否かの検討を要する。
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今後の研究の推進方策 |
210 kDa前後のHSP90betaの架橋構造に焦点を当てる。現在、抗TAGE抗体はポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の2種類が存在する。しかし、TAGE構造(タンパク質に対する、糖代謝物由来の化合物の構造の部分)については、いまだ証明できていない。この構造決定を行うことは容易ではないので、そこにいたるまでのステップとして、架橋構造のHSP90betaを、抗HSP90beta抗体により免疫沈降して、SDS-PAGEで不純物や非特異的結合タンパク質と分離した上で、銀染色により「210 kDa前後の分子量のバンド」のみを特定し、これを切り出し、質量分析により解析する。この操作により、少なくとも、(1)210 kDaの分子を構成するタンパク質のひとつが、HSP90betaであること、(2)HSP90betaとTAGE構造を介して結合したタンパク質が何であるか? を知ることが出来る。具体的なタンパク質が同定されることにより、TAGEが生成した細胞において、拍動低下や細胞死を引き起こす機序が明らかとなり、同時に、オートファジーとの関連性も晃にすることが期待される。 同時に、HSP90betaに存在するであろう、TAGE以外のAGEs構造を質量分析により同定することを目指す。GA添加により生成するAGEsが、TAGEのみであると考えるよりも、他のAGEsと混在して存在すると考えるほうが合理的であるためである。SDS-PAGEにおいて、モノマーとして検出されるHSP90betaについて、質量分析による解析を行い、(1)分子内TAGE架橋構造を作る可能性、(2)TAGEではない、他のAGEs修飾を受けている可能性を追究する。
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