研究課題
基盤研究(C)
B12の欠乏は高齢になるにしたがって顕著に増加することが示唆されており、特に認知機能との関連性が指摘されるが、脳内におけるそれぞれの補酵素型の動態は明らかではない。そこで、本研究においては補酵素型を含めたB12の体内動態、特に脳内の動態を明らかにすることを目的にする。そのことはB12の関与する複数の病的症状の発症機構や生理機能を解明する基盤となると考える。そして認知症のリスクが増大するとされるB12不足や欠乏は、どのようなB12補酵素型の動態に影響するのかを明らかにし、ブラックボックスであった補酵素型B12の代謝と様々な疾患リスクが増加するメカニズムを解き明かしたい。
脳におけるビタミンB12の機能解明を試み，脳内B12の日内変動が存在すること，それはアデノシルB12（Ado-B12）の変動であることを明らかにした。また，培養細胞においてAdo-B12合成酵素RNAiを実施した結果，all-transレチノイン酸による神経様細胞への分化が有意に抑制されることを見出した。加えて，メタボリックプロファイリングから分化前後の代謝，特に有機酸とアミノ酸代謝への影響大きかった。
ビタミンB12が脳内における日内変動を示したことはB12が生理学的に重要な機能を有することが示唆される。また，補酵素型B12の減少が神経細胞の分化において重要な役割を果たしていることも明らかなった。これらの結果は脳機能，すなわち精神の健康の維持増進においてB12が担う重要な働きが存在することを示唆するものであり，栄養学的観点から重要な知見である。
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