研究課題/領域番号 |
21K11654
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
都筑 馨介 文教大学, 健康栄養学部, 教授 (60222139)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ストレプトゾシン / ストレプトゾトシン / 糖尿病モデルマウス / 高脂肪食 / ケトン食 / 肺癌 / 肝癌 / 子宮癌 / 糖尿病 / 発癌 / 高脂質食 / 中鎖脂肪酸 |
研究開始時の研究の概要 |
ストレプトゾシンにより激烈な糖尿病を発症したマウスは、多食、多尿、体重減少の著しい症状を示し、長期にわたって飼育して観察することは困難と言われてきた。私は、高脂質食により、この重症糖尿病マウスを長期飼育できることを見出した。だが、高脂質食を与えた糖尿病マウスはほとんどが癌を発生する。しかし食餌の組成を、中鎖脂肪酸や多価不飽和脂肪酸などを多く含むものに変えて解決できると考えている。この研究を通じて糖尿病による発がんリスク増加のメカニズムの一端を明らかにすることにより、癌の発生を防ぎ長期に健康に過ごせる食事の提供を目指す。
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研究実績の概要 |
膵β細胞選択的毒であるストレプトゾシン(STZ)を投与されたマウスは、多飲、多尿、大食、体重減少などの典型的な糖尿病の症状を示し、尿糖陽性となる。血糖値は、しばしば500mg/dLにもなる。そのため、長期にわたって飼育して観察することは困難と言われてきた。 しかし、私は長鎖脂肪酸主体の高脂質食(high fat diet, HFD)により、長期飼育できることを見出した。高脂質食を与えても、30週以上飼育していくと、死亡するマウスが増え、解剖して死因を探ったところ、非常に効率に癌を発生していた。癌種としては、肝癌、子宮癌、肺癌、尿路上皮癌を生じた。本研究では、糖尿病においても、癌の発生を防ぎ、長期に健康に過ごせる食事の検索を行う。2022年度においては、前年度までにストレプトゾトシンを投与したマウスを飼育し、糖尿病マウスであっても、長い生命寿命が得られるよう、丁寧に飼育を続けた。それに加え、1)どの餌が癌の発生リスクを下げるのかをはっきりさせるため、同一の餌を数百日以上持続して投与するようにした。2)糖尿病マウスでは多くの癌の発生がみられるが、糖尿病にしていないマウスと比べておこっているリスク増加、程度をみるため、糖尿病マウスに与えたのと同じ餌を与えて長期間の飼育を行った。マウスの寿命に近い2年間にエンドポイントを設定し飼育を行った。3)糖尿病を発症させるためにSTZを使っているが、STZが、癌発生の原因となっている可能性は否定できない。そこで、遺伝的に糖尿病となる2型糖尿病モデルマウスである、db/dbマウスを購入して飼育を始め、癌の発生を調べる準備を行った。すべての動物実験は文教大学動物実験委員会の承認を受けて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度において、本研究を申請した2020年時点から飼育しているマウスのうち、糖尿病を発症させたマウスは全て死亡したが、対照として用いたSTZを投与せず、糖尿病マウスに与えたのと同じ高脂肪食、高糖質食、食物繊維などを多く含む食事を与え続けたICRマウスは多くが生存していた。これら対照マウスを本研究で設定した最大2年(104週)まで飼育したところ、ヒトでいえば老年期にあたる80週齢以上のICRマウスでは19匹中9匹(47%)で癌が疑われる所見がみられた。これは想定外に効率であった。しかし、STZ糖尿病マウスでは80週まで生存する例はほぼなく、また糖尿病マウスでは30週齢から癌が多発するといった違いはあるが、糖尿病でないマウスでも癌の発症がみられるため丁寧な観察が必要である。使用するマウスの系統を一つとせず、癌の発生が少ない系統のマウスも調べる必要がある。飼育が長期間になることもあって、統計的にはっきりした結果を得るのに苦慮している。
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今後の研究の推進方策 |
C57BL6マウスは、自然発生腫瘍が少ないことが知られる。近交系マウスではよく使われているマウスであり、活発で行動研究などにもよく使われ、マウス全ゲノム配列の決定もなされているマウスである。一方、C57BL6はクローズドコロニーであるICRマウスに比べ、サイズが小さく俊敏である。動物費用もICRマウスより必要であるが、このマウスを使用した実験を行う予定である。また、C57BL6マウスは老化研究でも用いられ、104週齢までのマウスを購入できるというメリットもある。さらに、2022年度購入した2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスは遺伝背景がC57BL6であった。レプチン受容体シグナルに欠陥があり、レプチンによる食欲抑制効果の障害、すなわち過食、ならびに体熱産生の低下により、相対的なエネルギーの過剰をおこし糖尿病になると考えられるマウスである。系統を変えたマウスに糖尿病を発症させ、高脂肪食、高糖質食、食物繊維などを多く含む食事を与え続け、中途で死亡したマウスは解剖して死因を明らかにし、最大2年(104週)まで飼育して実験を行う。また、STZは自己免疫性に膵β細胞傷害を誘発すると考えられており、STZを投与しても発症しないケースもある。遺伝的糖尿病モデルマウスを観察することに加え、STZを投与しても糖尿病を発症しなかったマウスを観察することにより、STZ自体による発癌性を評価する。
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