研究課題/領域番号 |
21K11665
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 人間環境大学 |
研究代表者 |
横家 将納 人間環境大学, 環境科学部, 教授 (30566419)
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研究分担者 |
樋口 行人 九州共立大学, スポーツ学部, 教授 (00369787)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 光周性 / 体格 / 地域差 / 日長時間 / エピジェネティクス / 地理的加重回帰 / GIS / 甲状腺ホルモン / 子供 / 日本人 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本列島レベルで起こっている子供の体格の南北グラジエント(勾配)の原因を探るために、①学校保健統計調査による都道府県ごとの子供の体格の平均値、②日本列島全体の平均的な気候状態を1kmメッシュ単位で表したメッシュ気候値、③人口の分布を1kmメッシュ単位で表した人口メッシュデータ などの地理データをGIS(地理情報システム)をはじめとする空間分析、可視化ツールにに取り込み、その関係性を分析するものである。 具体的には、体格の地域差と実効的日長時間(ある特定の照度の閾値を超える日長時間)の分布の関係が光周性生理機構から説明できるかどうかを試みるものである。
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研究実績の概要 |
学校保健統計調査による都道府県ごとの身長,体重の平均値と,実効的日長時間(照度を考慮した日長時間)との間で地理相関分析を行うと,次のような重回帰式が,前思春期で成り立つ。<身長=b1*体重-b2*実効的日長時間+b0>この式では身長の平均値は,実効的日長時間とネガティブに相関している(日長の短い北日本で伸長が高い)が,一方でこの式が成り立つためには(身長でコントロールされた)体重は,実効的日長時間とはポジティブに相関しなければならない。 研究代表者らは,この現象を甲状腺ホルモン様の作用によるものと考えた。すなわち,日長条件が甲状腺ホルモン活性とリンクしており,短日で甲状腺機能亢進,長日で甲状腺機能低下がもたらされることで,日長時間が身長とはネガティブ,体重とはポジティブに相関するものと予想した。そしてこれらの現象は光周性反応として説明できるのではないかと考えた。 現在までの分析で,日長時間と体格のこの関係性(重回帰式)は,昭和40年代以降,顕著になり,現在までの数十年間,時間的にも空間的にも定常的に出現し続けていることが判明した。すなわち最近数十年の,日本列島のどの時代の,どの地域を部分的に切り取って分析しても,この関係を見出すことができる。定常的であることから,この関係性は海外でも見られるのではないかと考えている。 一方,都道府県ごとの身長,体重の標準偏差の分布は場所によらずほぼ一様で,標準偏差の大きさに対し,都道府県平均値間の差は大きくない。各都道府県内の体格のバラつきが,第一義的には遺伝的要因で生じているとすると,都道府県ごとの平均値が連続的に分布している理由を遺伝的要因に求めることは困難であるように思える。日長時間と体格との関係が空間的にも定常的であるという事実は,これらの分布が遺伝的要因で生じているとする説を一層否定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の勤務先が移動となり,環境が大きく変化したことに加え,コロナ禍で様々な制約が加わったことなどにより,研究は進捗していない。 また,現在,研究代表者らは新たなデータセット,新たなモデルを加え分析を行っているが,これまでを上回るような新たな知見の発見には至っていない。このことが論文発表等に後れを生じざせている。
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今後の研究の推進方策 |
現在,我々が取り組んでいる地理相関分析は,それそのものが原因を特定できる分析法ではない。しかし,様々な分析を加えることでその確度を高めることができると考えている。 今回我々が注目している実効的日長時間と体格との関係性は,時間的にも空間的にも定常的であることがわかってきた。このことは,この関係性が日本以外の地域でも検出される可能性が高いことを示している。仮に海外においても同様の関係性が見つかれば,この現象が光周性反応であるとする仮説をサポートするエビデンスとなる。 さらに我々は,成長の季節性に関して,身長の伸びが速いのは長日期であると言われているのに,それとは反対に日長の短い地域で身長が高くなっているということも,光周性反応のエビデンスと考えている。すなわち,冬の短日に応じて夏に活発に成長するといった,季節性繁殖動物で起こっているような生理現象が思春期に達するまでのヒトにも起きているのではないかと考えている。 現在,季節性繁殖動物で起こっているような生理現象がヒトでも起きているという確固とした証拠はない。甲状腺ホルモンは,季節性繁殖動物の視床下部タニサイトにおいては局所的に活性化され,季節的変動することが知られているが,全身に及ぶような作用はない。つまり我々の仮説を支持するような生理学的解釈は現在も与えられていない。 一方で,いくつかの動物種について,その大きさの地域差の原因が光周性によるものだとする報告は年々増えている。これまで寒冷に対する適応としか説明されてこなかった現象の一部が,光周性反応として説明できることが増えてきている。今後は,日本以外の地域や,過去の日本の状況なども分析の対象に加え,共通の現象を発見することでその確度を高められると考えている。
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