研究課題/領域番号 |
21K11689
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
加藤 正樹 中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (60444808)
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研究分担者 |
末武 勲 中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (80304054)
田辺 賢一 中村学園大学, 栄養科学部, 准教授 (60585727)
小野 美咲 中村学園大学, 栄養科学部, 講師 (10441726)
安永 明日香 中村学園大学, 栄養科学部, 助手 (60846319)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / 脂肪肝 / 線維化 / 細胞老化 / フィトケミカル / フィセチン / スルフォラファン / クルクミン / 細胞死 / 抗線維化 / 肝線維化 / NASH |
研究開始時の研究の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では慢性炎症と線維化が進行し、最終的に肝硬変や肝がん発症に至る。NASHの一因として、変性肝細胞に細胞老化が生じて不死化し、炎症の起点となっている可能性がある。一部のフィトケミカルには、腫瘍細胞など変性した細胞に細胞死を誘導する活性があることが知られている。本研究では、細胞死誘導により細胞老化を抑制し、NASH肝を改善できるフィトケミカルを検索し、食事療法の有用性を高めていく。
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研究実績の概要 |
細胞レベルの実験では、フィセチン、クルクミン、スルフォラファンなどのフィトケミカルが優れた抗細胞老化活性を有していることが示された。これを基に、高脂肪食+フルクトース水によるマウスNASHモデルに、これらのフィトケミカルを混餌投与し、肝臓の代謝や炎症・線維化、細胞老化レベルを評価した。 フィトケミカル非添加(N)群、フィセチン0.02%添加(F)群、クルクミン0.3%添加(C)群、スルフォラファン0.015%添加(S)群のマウスを準備し、21~24週間飼育した。その後マウス肝よりmRNAを抽出し、脂質合成系(FAS, ACC1)、脂質酸化系(PPARα)、細胞死系(Bax)、炎症(TNFα)、線維化(TGFβ)、細胞老化(P16,IL-6)の発現をRT-PCRで評価した。この結果、N群と比較して、S群では炎症・線維化は32%・37%低下、脂質酸化は219%増大し、細胞老化は13%低下した。C群では、線維化は不変、脂質合成は48%低下、細胞死は9.1%増大、細胞老化は35%低下していた。F群では、線維化は不変、脂質合成は47%低下、細胞老化は80%低下、細胞死は12%低下していた。これらの結果から、スルフォラファンは脂質酸化の増強による脂質貯留の軽減を介した炎症・線維化抑制、クルクミンは脂質合成抑制と細胞老化抑制作用、フィセチンは脂質合成抑制と強い細胞老化抑制作用を有することが示された。 これらのフィトケミカルの肝組織における抗細胞老化活性を確認するため、細胞老化のマーカーである、p16、p21、Histon H2AX抗体により免疫染色を試みたが、再現性のある実験結果を得るには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
細胞老化の出現が、NASH肝における炎症・線維化進展の強力な誘因であることを証明するために、老化細胞と炎症細胞および活性化肝星細胞の肝小葉内の空間的・時間的分布の解析が有用である。マウス肝を用いて免疫染色を行なったところ、マクロファージ(F4/80抗体)および活性化星細胞(α平滑筋抗体)は検出できたが、老化細胞の検出は困難であった。p16、p21、Histon H2AX抗体による免疫染色はいずれもバックグランドが高く、NASH肝と非NASH肝で明瞭な差を検出できなかった。今後、抗原賦活化や抗体濃度、ブロッキング条件など検討するとともに、新たな細胞老化マーカー分子に注目して、免疫染色による老化細胞の検出を遂行したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
近年、DNA損傷修復蛋白質53BP1(p53結合蛋白質1)の検出が老化細胞で見いだされるという報告があることから、53BP1は老化細胞のマーカーとして利用できると考えられる。53BP1抗体を用いて蛍光免疫染色を行なったところ、NASH肝では核内に蛍光強度の強い凝集体を有する細胞を検出することができたが、対象である正常肝ではそのような凝集体を核内にもつ細胞数は明らかに少数であった。今後、DAB染色も含めて免疫染色の最適条件を確立するとともに、陽性細胞の定量化を目指し、各フィトケミカルの効果を比較・評価していく。 さらに、肝小葉内の門脈域(Zone 1)、中間域(Zone 2)、中心静脈域(Zone 3)への老化細胞の局在や、炎症・線維化細胞との相互関係、病理学的なNASHの特徴である風船様変性(バルーニング)した肝細胞との相互関係を解析する予定である。 これらの解析から、NASH進展機構における細胞老化の役割を明らかにすることができるとともに、抗老化活性を介したフィトケミカルによるNASH肝病態の制御方法が見いだされていくと考えている。
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